エピソードⅠ 俺、魔法少女にスカウトされる。その4
記憶にはないけど、俺は全身火傷で二日間、生死の境を彷徨っていたようだ。
しかし、迷宮図書館内にある医療設備のおかげで全身火傷は完全に完治!
一体、どんな医療設備があるのやら……気になるところだぜ。
ん、そういえば、あのオセって魔法少女はどうなったんだろう?
あいつも俺と一緒に天駆ける螺旋の女神の暴発に巻き込まれと思うんだが――。
「通路の壁まで本棚になっているのか、それにどこまでも背の高い本棚が並んでいる……広すぎじゃね?」
「主、天井を見てください」
「天井? おお、天井も本棚に……え、でも、本が落っこちてこないのは何故だ?」
「魔法の力ですよ、主」
「魔法ねぇ……」
「そんなことより、現実世界――アモンさんが本来いるべき世界へと門へ到着よ」
「お、おお、そうなのか……って、おい! 穴じゃないか! まさか、ここに飛び込めって言うんじゃないだろうな?」
「お、呑み込みが早い☆ この中に飛び込めば戻れるわよ、アモンさん」
「うわああ、やっぱりかーっ!」
「さてさて、右手の人差し指の指輪をなくさない限り、いつでも迷宮図書館へ戻ってくることができるので、それをお忘れなく。それじゃ、またお逢いしましょうね……えいっ!」
「ちょ、いつの間に右手に人差し指に指輪なんか……って、うわああああっ!」
迷宮図書館ってところは、どこもかしこも本棚だらけだ。
何せ、左右の壁、それに天井までもが本棚ってワケだしね。
うーむ、天井の本棚は魔法の力で落っこちないようになっているようだ。
魔法かぁ、なんだかんだと、兎天原って異世界の技術ってなんだろうなぁ……。
と、それはともかく、現実世界へと通じる門とやらは、俺の足許にある穴のようだ――う、何ィィ! そんな現実世界に通じるという穴の中に、俺はニコニコ微笑むウェスタによって突き落とされる!
げ、外道ォォォ~~~! 現実世界へと通じる門とはいえ、底なしの穴じゃないか! そこへ突き落とすなんてトンでもない女だ!
「主、現実世界へ戻るなら使い魔として共に参りましょう!」
「なんだか面白そうだな。よし、ヤス、俺達も行くぞ!」
「はいッス! んじゃ、穴の中に飛び込むッス!」
「私も行こう。暇潰しになりそうだしね」
ウサギウス、ハニエル、ヤス、それにアフロディーテも現実世界へと通じる門――いや、穴の中に飛び込むのだった。
お、おいおい、お前らは命知らずなのか⁉
とにかく、馬鹿だ、コイツは――。
「ちょ、どこまで落ちるんだ? 真っ暗闇で底が見えないぞ!」
「主、ご安心を。なんだかんだと、あの光の渦の中の向こう側が現実世界ですので――」
「お、おおお、なんだ……まるで星雲のような光の渦が見えてきたぞ!」
「す、吸い込まれる!」
「ま、まぶしいッスゥゥゥ!」
「す、凄い重力を感じるわ、キャアアアッ!」
現実世界へ通じる穴の底なんだろうか?
轟々と激しく渦巻く光の渦――星雲のようなモノが見受けられる!
うわぁ、幻想的な光景だなぁ――って、俺は何を言っているんだ!
ウサギウス曰く、あの光の渦の向こう側が現実世界らしいけど、本当か……本当なのか⁉
光の渦の中に落っこた途端、身体がバラバラに砕け散るとか、そんな嫌な想像しか思い浮かばないぞ!
「う、うわあああ、光の渦から手が……光の手が……うう、白い……真っ白な光が広がっていく!」
光の渦から〝光の手〟が飛び出してきたぞ――それと同時に何もかもが真っ白に染まり、俺やウサギウスらを包む込む!
「あの光る手の正体は恐らく……おっと、そろそろ到着ですよ、主」
「えええ、到着だって……ぐ、ぐわっ!」
も、もう現実世界へ戻ってくることが出来た?
そうか、それは嬉しい……こんな嬉しいことはない!
だけど、俺は頭から地面に衝突してしまったようだ。
「イタタァ……ん、ここはウェスタって女のタブレット型パソコンに映っていたクレーターか? でも、見覚えがある場所だ……う、うお、ここは俺の家の近所にある空き地じゃないか!」
ん、ここは、あのウェスタって女のタブレット型パソコンに映っていた隕石クレーター?
俺、ウサギウス、ハニエル、ヤス、アフロディーテは、そんな隕石クレーターにいるようだ。
うーむ、なんだかんだと、小規模な隕石クレーターだな。
だが、周辺の光景には見覚えがあるんだよなぁ……自宅の近所にある空き地に……。