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魔法少女×七十二。  作者: はすた
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エピソードⅠ 俺、魔法少女にスカウトされる。 その1

 頭のおかしい奴は、突然、現れるんだよ。


 ある日、唐突に――。


「おお、同胞の魔法少女発見!」


「は、はあ? 俺は男なんだけど……」


 何言ってんの、コイツ……馬鹿じゃねぇぇぇの?


 俺はマジでそう思ったんだが眼前にいる赤い派手な服を着た狐耳の変な女に対し――。


「いんだよ、細けぇことは! とにかく、お前はあたしと同じ魔法少女なのです! さあ、お覚悟を――ッ!」


「ば、馬鹿か、お前ぇぇぇ~~~! こ、こんなところに一秒たりともいられるか!」


 うう、とにかく、逃げよう。


 俺は心の底から思うのだった。


「ふ、ふう、頭のおかしい奴に遭遇しちまったなぁ……災難だぜ」


 とりあえず、自宅の近所にある空き地まで逃げてきたけど、追いかけて来ないぞ、あの変な女……。


 まったく、ああいうのをキ○ガイっていうんだろうな。


 ああ、なんだかんだと名乗っていなかったな。


 俺の名前は池田健太。


 学力、そして運動能力も軒並み普通のどこにでもいる二十歳のフリーター男子だ。


 オマケに彼女いない歴も二十年……童貞だ……。


「さ、バイトにでも行くか……ん、兎?」


「問おう、アナタが私の主人(マスター)か?」


「う、うおおお、兎が喋ったァァァ~~~!」


 な、なんだよ、さっきから――。


 今度は喋る兎と遭遇しちまった……そ、そうか、俺はもうじき死ぬんだ!


 だから、こんな奇妙なことが次から次へと起きるんだろう。


「私の名前はウサギウス。アモン様、アナタの使い魔でこざいます」


「ア、アモン様ぁ? 俺の名前は池田健太なんだが……」


「いえ、アナタはアモン様でございます。七十二人いる魔法少女のおひとりなのです」


「お、おいおい、俺には何がなんだかわからん……さっぱりな!」


 喋る兎はウサギウスと名乗る。


 つーか、俺はアモンって名前じゃねぇ!


 池田健太! 七十二人いるらしい魔法少女のひとりなワケがないだろう!


「見つけましたよ、アモン! このオセちゃんから逃げられると思ったら大間違いです!」


「アモン様、早速、他の魔法少女と遭遇したみたいですね!」


「あ、ああ、そのようだ……って、状況が読めないんですけどっ!」


「ありていに言いましょう。あのオセと名乗る魔法少女は、アナタの御命を狙っているのです!」


「な、なんだってー!」


 うお、さっきの変な女が現れた!


 お、俺のことを探していたの……ったく、なんだよ、状況が理解できないぜ!


 だが、あの女は俺の命を……俺を殺害しようと目論んでいるっぽいことだけはわかったかも――。


「変身しないんですか? じゃあ、遠慮なく殺せますね☆」


「う、うおおお、手品か? とにかく、空中に浮かぶ七本のゴルフクラブが変な女の周りに突然、出現したぞ!」


「手品? ニャハハ、これは本物ですよ☆」


「うくっ……お、大声を張りあげるしかねぇ! 絶対に誰か来るぜ。オマケに近場には交番もある!」


「残念、アモンさんとそこのネズ公は、すでにあたしの固有結界の中にいるのです。故に、大声を張りあげようが無駄……無駄無駄無駄ァァァ~~~!」


「こ、固有結界⁉ なんだ、そりゃ?」


「異界です、異界をつくったんですよ、アイツ! ほら、某特撮ヒーローの敵キャラが、自分の力を何倍にも向上させる異次元空間にヒーローを誘い込むって感じの――」


「う、嘘だろ、おい……」


 うう、さらにワケがわからなくなってきた。


 頭が痛ぇ……つーか、俺は夢を見ているのか⁉


「ご主人、危ない!」


「わ、わああ、危ねぇ……く、現実だ! あの手品女が操る空中に浮かぶゴルフクラブの一方が飛んできた土管を粉々に砕きやがった!」


 ウ、ウサギウス、助かった!


 お前が声をかけてくれなかったら、俺の身体は、今いる空き地に置いてある土管と同じく粉々に砕け散っていたかも……。


「ご主人、アナタも武器を……武器には武器で対抗です!」


「そ、そうは言うけど、武器なんて……わ、危ねぇ! うう、このままじゃマジでヤバい! ええい、やぶれかぶれだ……俺専用の武器……来やがれぇ!」


 く、武器には武器で対抗だってウサギウスは言うけど、俺はオセと名乗る無数の空飛ぶゴルフクラブを操る手品女と違って素手だ――ん、だが、俺は本当に魔法少女なら召喚できる筈だ、専用武器ってモノを!


「う、うおお、右手が熱いッ……の、のわぁぁぁ! お、俺の右手が光る……光るドリルにィィ!」


 ちょ、これが俺の専用武器⁉


 グルグル――と、螺旋を描くドリルに変化したぞ!


「ド、ドリル……そ、それは天駆ける螺旋の女神! ドドド、ドリル女ァァァ~~~!」


「お、おい、コラ! 何を言う……うわああ、まぶしいッ! ばばば、爆発するゥゥゥ~~~!」


 ドリル女⁉


 オセが妙なことを――う、ドリルに変化した俺の右手から赤々と燃え盛る炎が噴き出す……ば、爆発する……爆発するゥゥゥ~~~!

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