野生の妹
ウチの庭に猫がやってきては糞尿を撒き散らしていく。
流石に怒った両親が庭に罠を仕掛けた。
※ ※ ※
オレが高校から帰ると、罠の中に気配。
ついに捕らえたか。
様子を見に行くと、驚いた。
小学3年生の妹が罠にかかっていた。
話をきいてみると、どうしても罠の中のカニかまが食べたかったらしい。
※ ※ ※
しかしオレは日頃から両親が妹ばかりをひいきするのが気に入らなかった。
ので、罠にかかった妹をそのまま台車に乗せ、近所の山に捨てた。
その夜、両親には猫がかかったので山に捨ててきたと説明した。
※ ※ ※
それから10年後。オレは結婚することになった。
両親は行方不明の妹を式に呼べないのが心残りだと言った。
結婚式の前日、オレと嫁と両親は実家で準備に追われた。
やっと一段落した夜。オレは庭で月を見ていた。
その時、庭の茂みから声がした。
「覚えているか?」
聞き覚えのある声だった。ああ、そうだ10年ぶりに聞く妹の声だ。
「ああ、お前か久しぶりだな。生きていたのか」
「あれから、私は山で生き抜いた。必要ならば動物を狩り食った」
「そうか。そうだったのか」
「真冬の山の厳しさ、食物が取れない時の飢えの苦しさがお前にわかるか?」
「いや、見当もつかないよ。よく頑張ったな。そうだ、オレ結婚することになったよ」
「そうか、私のことなど皆見捨てたんだな」
「そんなことないさ。ずっと会いたかったんだ。あの時のことは許してくれ。オレも後悔している。さぁ隠れてないで出ておいで」
「ちょっと、あなた何してるの?」
嫁が心配そうに見ていた。
「いや、なんでもないよ。なんか野良猫が入って来てたみたい」
「・・・いいだろう」
妹の声が聞こえて、茂みから影が飛び出してきた。
振り返ったオレは首を掻っ切られた。