第六話 危険な人物ではないと判断したらしい
「があっぷ」
幼女が大きく胃から空気を吐き出した。
はしたない。親の顔が見てみたい。
「すみませーん」
幼女は更に注文を追加すべく、
店員を呼びつける。
こいつ……。
「おい。さっきからめちゃ食ってっけど、
その飯代、自分で出せるんだろうな?」
後になって、「おかねください」なんて
やられるのはごめんだ。
「自分の食い分くらいだすわ!」
幼女が食べかすを飛ばして怒鳴る。
……お前の食い分くらいしかないんだけど。
「俺は出さないからな」
念を押しておく。
そろそろ警邏もいったかな?
外をうかがう。
もういなくなっている。
幼女を痛めつけ、拉致し、
自らの妹と称するがその子の食事代を
払おうとはしない俺を危険な人物ではない
と判断したらしい。
「お前よその世界の人間だろう」
いきなり指摘された。
「……お前……わかんのか……?」
幼女が自慢気に言う。
「わかるとも!」
「たまに誰かが連れてきたり、
ひょっこり入り込んだりするんだ。
この世界の連中とは匂いがちがうね」
「……他にも俺みたいな奴が?」
「どこかにはね。どこかはしらないけど」
そんな……俺以外にも居るのか……
そいつらはどうしてるんだろう……
出口を見つけて帰ったのか、
ここで暮らすことを選んだのか、
うーん。会ってみたいもんだ。
「みんなわかってるのか?俺の事……」
「わかるやつなんてそうはいないよ。
だからわたしはすごい」
「……」
「なんだその目はっ
ほんとうにわたしはすごいんだっ」
「聞いておどろけ!
なんかん試験をしじょう最年少で突破し、
国家してい退魔師として
現在かつやく中のスーパールーキー、
マリー・ローウィング様とは
わたしのことだぁ!!」
「知らない」
「はあっ!!?」
「俺がよそ者なのはお前も知ってるだろ。
この世界の常識とかは分かんないよ」
「あ、そっか」
「……」
「……」
「ほんとにすごいんだよ?」
「はいはい」
「ぐずっ……」
泣いた。
ガキだな。まぁ子どもは泣くもんだ。
いつ泣き止むのか頭の中で
数えていると、20秒数えたところで
新たな料理がやってきた。
幼女 (マリーだったか)は
それを見ると鼻をすすりながら
料理をかきこみ始めた。
すぐに涙は止まる。
なんとも都合がよい。
「名前はなんていうの?」
すっかり泣き止んだマリーが聞いてくる。
「三島」
「ミシマ?ミシマはいくつなの?」
「18」
「おないどしだねぇ」
「はぁ!?」
「うっそぉー。マリーちゃんは
12さいでぇーす。やーい」
このクソガキ。
「ミシマ」
マリーの声が引き締まる。
子どもなりに真面目になった声だ。
「ミシマは良くないモノに憑かれてるよ」
「闇の住人の匂いがする。
きっとそいつはミシマを破滅させる」
なにを言ってんだこの娘は。
「あたしが助けたげる」