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第5話 権力による統治が行われるのならば

「むぐっ、あたしはな、ぐっ、

闇の住人を、がつがつ、退っ、ごくっ」


「口のなかを空にしてから喋れ」


大通りに面した酒場(朝だというのに酒を

カッ食らっている連中がいる。クズめ)

のテーブル席に俺と幼女はいた。

幼女は自分で注文した料理をがつがつと

口に押し込んでいる。

金は自分で払えるんだろうな?

俺は出さんぞ。


なぜ初対面の人間と、しかも()()()とまで言われた相手と食卓を囲んでいるのかというと、こういうことがあった。




*********




「オマエから闇の住人の匂いがする」

ぱっつん幼女が杖の先で俺の顔をつつく。


「やめろ。ぶっ殺すぞ」

殺す気なんて更々ない。でも便利な言葉だよなぁ。


「はぁん?やってみろよぉー。できんのかぁ?」

笑われた。

本心を見抜かれたみたい。仕方ない。


がつんと幼女の脳天に手刀を食らわす。


「何をするっ!」

頭を押さえて幼女がこちらをみやる。


「やってみろと言っただろ」


「やる気かオメェーっ!」


身長差は40㎝ほど。

体重差は30㎏ほどだろう。

勿論どちらも俺の方が大きい。


俺は優しい男だ。


「やめとこう、勝てそうにない」


「ハハハ!臆したな?このロクデナシ!」


俺はもう一度手刀を繰り出した。

しかし今度は避けられる。

何!?


「二度も同じ手が通じるかぁーっ!

おっちねっ!このマヌケめがぁーっ!」


幼女が俺の脛をおもいきり蹴りあげた。


「いてっ」


「キャハハハ」


「このクソガキ!」


「きゃっ。いたい!やめて!」


「大人を怒らせるこうなるんだ」


「いやーっ」


軽く揉んでやった。

(胸部を手で掴んだという意味ではない。決して)


俺が小学校教員であれば、職を失い

お昼のワイドショーでしばらく特集が組まれたで

だろうが、あいにく俺は小学校教員ではない。


「きゃー!だれかー!助けてー!」


早朝とは言え大通りである。

どこからともなく人が集まり始めた。


「あのぅ、どうかされましたか……?」


紺色のぱりっとしたシャツとズボンの

若い男性が声をかけてきた。

腰に黒い警棒のようなものを提げている。

物騒な男だ。


でも俺の頭のどこかが警報を鳴らしている。

こんな人をよく見かけたことが……。

あっ、お巡りさんだぁ。


人が集まり、そこに社会が生まれ、

権力による統治が行われるのならば、

当然、警邏組織も構成される。

それは異世界でも同じのようだ。


血の気が引く。

なんとか乗り切らねば。


「……っ、よーこぉ!我が妹よ!

そのように駄々をこねて兄を困らせるもの

ではないよ?」


「……」

幼女が俺を睨んでいる。


ばか!ここは一芝居打つんだよ!

俺は目で言う。


「……でもお兄さま!

わたくしお腹が空きましたわ!

もう歩けません!何かを食べたいのです!」

なかなか良い演技だ。


「おお!そうだったのかい!

それはすまない。おや、あすこに食事を

取れる店があるじゃあないか」


俺は幼女をかつぎ上げて、

その店にむかう。テラス席があり、

一目でレストランの類いだとわかった。


「はは!お騒がせ致しました!」


即席兄妹は店のなかに姿を消した。



*********



店の中に入るやいなや、

この小娘は席につき、注文を始めた。


ウエイトレスが、こどもひとりでは

ダメだと言い、それを聞いた幼女は

再びぎゃんぎゃん騒ぎ始める。


他の客や店員の視線が俺に刺さる。

同席する義理はないので外に出ようとしたのだが

外では先程の衆と警邏の男がこちらを

いぶかしげに見ている。おやおや。


席に座る他なかった。

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