第1話 マジにヤバいやつ
「私の声が聴こえますか?」
俺の頭の中に声が響く。
ああこれマジにヤバイやつだわ。
流石に5日連続の不眠不休ゲーム修行はやり過ぎか。
幻聴が聞こえてるよこれ。
俺はコントローラをおいて、
万年床に潜り込んだ。……でも眠くはないんだよなぁ。
「三島宗平くん
私の声が届いていますか?」
はは、なんだこれ?
ラノベの導入部分みてーだ。
俺、本ラノベしか読まねーからかなぁ。
幻聴の内容もテンプレって悲しくなるわ。
想像力なさすぎる。
「聞こえているなら返事をしてください」
女の子の声だな。
もうなんか逆に腹立つなこれ。
どんだけ俺は女の子に飢えてんだよ。
「てんめ、いいかげんにしろよコラァ!!
シカトこいてんじゃねえー!シメられてーのか!」
うお、ちょっとびっくりした。
なんだ。キレたのか。
幻聴のくせに生意気なやつだ。
所詮は俺の脳内で起こったバグにすぎんというのに。
「お、おほん。失礼。
私の声は幻聴などではありません。
本当にあなたに呼び掛けているのです」
おっと、今度ははそう来たか。
なかなか根性がある幻聴だ。
根比べなら俺も負けない。
意地でも幻聴に返事なんてしてたまるか。
「…………」
……………
「おいこらてめーこら。あん?なめてんのか?
この私様のことなめてやがるのか?あん?」
「もういーわ。てめーに頼ろうとした
私がバカだったわ。帰るわ。うん。おつでーす」
……………
「おんま、くっそぼけなすちんこの○○○○の×××
やろーっ!話だけでもきく良心とかねーのか!」
うっわ、こんなこと言う?普通。
口めっちゃ悪いぞこれ。
ていうか俺こんなの思い付かないよ。
「はいキレた。もうキレた。実力行使もできるから。
あーあー怒らせちゃったー。もーゆるさない」
幻聴ってこういうのなのか?
ふつー悪口とか笑い声が聞こえるって言うけど。
これはちょっと……というかかなり変だな。
「さーん、にぃーい、いーち、どーん!」
!? 電気消えた!
まじかよブレーカーおちた?
はぁー。ブレーカーは一階だったかな。
その前に懐中電灯がいるなぁ。
このまま寝てもいいけど、
やっぱゲームのつづきしてーわ。
俺は布団から抜け出して自分の部屋から
出ていこうとした。
そして部屋の床の異常に気が付いた。
石造りの床だ。
俺の部屋の床は安物のほこりっぽい絨毯だったはずだ。
つるつるしていて冷たい。俺は裸足だった。
更に異常に気付く。
真っ暗で分かりにくいけど、
ここまで歩いたら部屋のドアがあるはずなんだ。
でもない。
ドアがない。
手を伸ばしてみても何にも触ることができない。
少し歩く。10秒くらいで立ち止まる。
俺の部屋はこんなに広くない。
夢だ。全然寝てなかったから
シームレスに意識が夢に移転したんだ。
だから混乱してる。
ああそうだ。これは明晰夢というやつだ。
「夢ではありませんよ」
後ろから声が聞こえた。
振り向くと女の子がいた。
白くて長い髪の毛、そして真っ赤な瞳。
この暗闇のなかでうすく光っている。
「お前……つーかその声!」
あの幻聴の声!
「てめーさんざん無視してくれたなぁおい!
女だからってなめんじゃねーぞ!」
少女が口を大きく開けて笑う。
なにこれ。
どういうこと?
どうなっちゃうの?
誰も答えてはくれなかった。
隔日で投稿して行きます。
別の物語ですが、もうひとつ連載しているもの
もあります。
そちらは少し雰囲気が違いますが是非。
【追記】2017/08/28
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