改善法
リンパ浮腫の改善には『複合的治療』がスタンダードである。
次の四本柱からなる。
スキンケア
マッサージ(医療徒手リンパドレナージ)
圧迫
圧迫下での運動療法
※浮腫部位の高位保持が含まれることもある。……むくんでいる部分を高い位置に置くこと。
この中で別格で大事なのは一番最初にあげたスキンケアだ。
清潔でしっかりと保湿のされたうるおった肌というのは、バリア機能が強い。身体に侵入してこようとする細菌等をはねかえす力がある。
かかとが割れていたり、ささくれがあったり、カサカサと粉がふいているような肌状態というのは非常に細菌等が侵入しやすい。
先にあげた蜂窩織炎を防ぐ意味でも最重要である。
お風呂上りには保湿剤を塗っていただきたい。(ニベアでもなんでもよい)
乾燥する冬期などは、こまめにケアをしていただきたい。
次にあげたマッサージ(医療徒手リンパドレナージ)。
このマッサージとは皆さんが一般的に思い描かれるマッサージとは全く異なる。
町のマッサージ屋さん、整骨院、エステ等でうけるマッサージとは別物であるということをはっきりと申し上げる。上記の施設で受ける施術というのは主に筋肉にアプローチする手技だが、リンパドレナージというのは皮膚のすぐ下二ミリという皮下組織にアプローチする手技である。
皮膚に手を密着させ、皮膚を動かすというとても優しい手技がメインとなる。(美容エステでよく使われるようなオイル等は使わない。皮膚を動かすのが目的だからだ。オイルを使うと表面で滑ってしまう)
なので力は全く要らない。手技を行う施術者も、整骨院などの施術者と比べるとはるかに負担の少ないマッサージである。
マッサージを受けている側にとっては、とても心地いいマッサージである。
私自身も練習でスタッフ同士で行うと100%寝てしまう。主人や子供相手に行うと、やはり両者とも必ず寝る。
今までいろんなマッサージや指圧等を受けてきた私だが、このリンパドレナージが一番好きである。
それほど心地の良いマッサージなのだ。
浮腫状態がある程度重症化し、組織が硬くなった患者にはこれよりも力のいる、組織をほぐすような手技を加えて行う。
3つ目の圧迫。
浮腫部位に包帯を巻いたり、弾性着衣と呼ばれる医療装具のストッキング(脚のむくみの方)、スリーブ(腕のむくみの方)を着用したりする方法である。
詳しくは次の回でお話したいと思う。
4つ目の圧迫下での運動。
ここで注意していただきたいのは、圧迫下ということである。
圧迫しないで運動すると、むくみは悪化するだけである。
正しい療法とは、上記の包帯を巻いたり、弾性着衣を着用した状態で運動療法を行うことである。
とりたてて、激しい運動ではない。肘や膝の曲げ伸ばしをするだけで十分な運動になる。
脚のむくみの方なら、普通に散歩(ウォ―キング)していただければいい。足首を曲げ伸ばししたり、回したりするだけでも十分効果を発揮する。
これが、意外にハードである。
特に包帯を巻いた状態で行うと、けっこうキツイ。かなりのカロリーを使うと思う。
以上、あげた主に四つの療法であるが、特に効果的なのは3つ目の圧迫、4つ目の圧迫下での運動療法だ。
まずなにがなんでも、圧迫ありき、である。
2つ目のリンパドレナージというのは極軽症のむくみの方、あるいはむくみが進行し組織が硬くなってしまった方に有効である。むくんでいる部位の組織の硬さがまばらなのをほぐして均一にした状態で圧迫をすれば、圧が上手くかかり圧迫療法の効果をさらに増す。