男女のちがい
男性患者と女性患者の違いについて触れたい。
男性というのは、女性に比べて皮膚がしっかりと硬く、なおかつ脂肪が少なく、筋肉が多い、という身体をしている。だから、往々にして男性は重症化する方は少ないと思う。
しっかりした硬い皮膚というのは、自然の弾性着衣と同じである。筋肉がついている身体というのは、筋肉が無い方よりも筋ポンプ作用が強く、運動療法では高い効果を発揮する。そして、脂肪が少ないという点。
実は、脂肪というのはリンパ浮腫の大敵である。脂肪はリンパ液が大好きで引き寄せてくる。
食器洗いスポンジが脂肪で、中にどんどん水(リンパ液)をため込む、というイメージをしていただきたい。
その状態が長く続くと、合体して別のモノに変化し、硬くなる。そして改善が難しくなる。
肥満の患者さんがいらした場合、とりあえず体重を落としていただくのが改善の近道だ。
圧迫、リンパドレナージ(マッサージ)もしていただくが、まず脂肪を落とすことが一番である。
逆をいえば、スレンダーな患者さんというのは悪化しにくい。
むくみはあるにはあるが、リンパ液をため込む脂肪がないのでそれ以上むくみが進行しないというイメージを私は持っている。
リンパドレナージと市販の軽圧ストッキング(メディキュッ◯とか、スリム◯ォークである)着用でケアがおさまる方もおられる。
大多数の患者さんに比べればかなり楽なケアである。
若く肥満ではない男性というのも同様で、当初むくみがそれなりにあっても、包帯である程度改善させて状態が落ち着いてくるとリンパドレナージと弾性着衣着用でケアは事足りるパターンが多い。
(やはり、肥満の男性は別である。また、男性も高齢になると硬くしっかりしていた皮膚が薄くなっていくので、むくみはどうしても悪化する)
反対に女性の場合は皮膚は柔らかく、皮下脂肪がつき、筋肉がつきにくいという身体をしているものだから、むくみが悪化する条件が最初から揃っている。
しかし女性の中でも、男性並にしっかりした皮膚をお持ちの方や、過去に激しい運動をしていた、あるいは日頃から運動を良くしていて筋肉がしっかりとついているような方がおられる。
そういう方は例外で男性と同じパターンをたどることが多いと思う。
何年も前にリンパ浮腫が発症して、その間全く何もしてなかったのに、軽症の状態を保ち続けた女性患者さんがこのパターンだった。
運動して身体に筋肉をつけるのは大事なことだなあ、としみじみと思う。
さて、女性に比べるとリンパ浮腫の症状が軽くすみがちな男性であるが、やはり例外部分というのが身体に存在する。
陰部のむくみ、である。
男性の特に陰嚢はどんどんむくんで巨大化していく。
(江戸時代に、信じられないほど巨大な陰嚢をもった男性の患者の絵が描かれている。目黒寄生虫館にも、巨大な陰嚢の患者写真が展示されている)
一体何処まで大きくなるのか、と恐怖を抱かれる患者さんが多いと聞く。
陰部の皮膚というのは男女とも、とてもデリケートだ。
皮膚が柔らかいあの部分というのは、むくみが非常に変化しやすい。改善もしやすいが悪化もしやすい、というところである。
リンパドレナージ(マッサージ)の効果が目に見えてはっきりと分かる部位でもある。男性の陰嚢などはドレナージをしているとみるみるうちにサイズが変化していく。
(患者さんの精神的苦痛が大きい部分でもあるので、患者さん御自身によるセルフリンパドレナージが基本であるが、了承を得てセラピストが行う時もある)
女性の場合、陰部の圧迫法は男性と比べるとたやすい。ナプキン等を当てて弾性着衣を着用すると割と効果が出る。
しかし男性の場合、陰部というのは出っ張って立体的であるので圧迫は難しい。
いろいろな業者さんが考えて様々な圧迫着衣を作成していらっしゃるがなかなか上手くいかない場合が多い。
包帯を巻く方法もあるが、むくみが移動しやすい部分であるのですぐにスカスカにゆるくなってしまうことが多い。
難しい部分である。