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料理は、魔法!?  作者: ひのあきら
番外2 もしも……
14/19

出会った相手に縋ろうとしたら

番外2の5。

 彼女は、怯えた様子で怖々と森を歩いていた。

 ハイヒール、スカート。……服は会社の制服だった。

 彼女は、ちょっと飲み物を買いに出ただけだった。財布を持って、休憩所に在る自動販売機で飲み物を買おうと出ただけだった。

 なのに。

 彼女は涙目で周囲を見回し、声を上げる。

「だ、だれかあ……いませんかあ……!」

 薄暗い森に、声は響かず吸い込まれていった。

 うう、と彼女は己が身を抱きしめる様に体に腕をまわす。

 突然、森の中に放り出されたのだ。不条理にも。

 彼女は、恐る恐る……だが、しっかりと声を上げて呼んだ。

「だれかあ……だれかあ……」

 あまりに大きな声を上げると、獣が来るかもしれない。

 だが、一人で道を行くのはあまりにも恐ろしい。

 彼女は決して都会の人間ではないが、森や山が身近にあるような環境に育ってもいない。……平たく云えば、町の人間、なのだ。根っからの。

 よろよろと足を運び、彼女は恐怖を堪えながら森を行く。

 どれ程歩いたのだろう。

 彼女の前に、突然、少女が現れた。

 瑠璃の服は平安時代の女童を思い起こさせる。昔読んだ、源氏物語が題材の漫画を思い浮かべ、思わず凝視した彼女の目の前で、瑠璃の女童はついと滑る様に近寄ってきた。

「あ……」

 其処で。

 其処で、彼女は漸く現状を把握する。

 人だ。

 人が、現れたのだ。

 子供が一人でこんな処に居る筈が無い。

 で、あるのならば。

 傍に、大人達が居るに違いないのだ。

 そう思い、彼女が喜色を目に浮かべた刹那。

「―――――不可」

 女童は黒い瞳に何の感情も浮かべず、そう呟いた。

 響きを理解するより早く、彼女の視界が横にずれる。

「え?」

 呟いた時には、彼女の瞳に生気は無かった。

 胴を裂かれ、彼女は二つになって地面に伏せる。

「専科」

 呼びかけに、少女が振り向いた。

 其処に立つのは、鏡像の如き一対。

「主様の命を受けました百科が様子を見に来ました。相応しい玩具ではなかったのですか」

 地面に倒れ伏した残骸を見て問われ、瑠璃の片割れは是と頷いた。

「主様の御不興と主様の背の君様の御不興を買う」

「まあ」

 片割れは其の言葉に驚いたような声を上げ……だが、全く変わらない表情の儘、感情(いろ)の無い声音を紡ぐ。

「でしたら仕方がありません。主様を御不快にする存在は、抹消しなくてはなりませんから」

「是」

 なんともあっさりと言葉を交わし、瑠璃の一対は其の場から姿を消した。

 残るのは、残骸のみ。

 だが、其の残骸も、何時の間にやら土に紛れ土に呑まれ、其の存在を消してしまうのだった。















結論

安易に人に頼ろうとすると、死を招きます。

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