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料理は、魔法!?  作者: ひのあきら
番外2 もしも……
10/19

ヒステリックだったら

番外2の1。

「此処どこよお!?」

 半狂乱になって泣き叫ぶ。

 仕方あるまい。彼女に非はない。

 彼女はいつも通り出勤しようとしていただけだ。

 いつもの様に道を曲がり、いつもの様に其の先のバス停に行こうとしていただけだ。

 なのに。

 眼前に広がったのは、森だった。

 広大な森だ。

 日が差すとは云え、奥に行く程薄暗い。

 彼女は思考を閉ざし、悄然と歩みを始める。

 通勤用とは云え、それなりの高さがあるヒールでは土の上を行くのは難儀だった。ああもうと苛立たしげに靴を脱ぎ、地面を蹴りつけ……其の拍子に、ヒールが折れた。

「なんなのよ!?」

 怒号と一緒に靴を脱ぎ、苛立ちの儘に靴を近場に在った木へ投げつけた。

 がっと乾いた音が響き――――――ざわり、と、木々が揺れた。

 だが彼女は気づく様子もなく、あてもなく……だが出口を探し、森を木々の間をさ迷い歩く。

 裸足になれば歩き易くはあったが、土の上、という現状がなんとも彼女にとっては不快だった。

 忌々しげに時折毒を吐き、彼女はひたすらに歩き回る。

 彼女が毒を吐く度に、木々がざわりと音をたてた。

「風?」

 あまりに頻繁に木の葉が揺れる音が聞こえる為、彼女は立ち止まって辺りを見回した。

 風は、吹いていない。

「もう……サイテー」

 荒々しく呟き、彼女は再び一歩、踏み出した。


 刹那。


 頭上から降り注いだ粘性の高い流動体に、彼女の体は包まれ、溶けて消える。


 一瞬の、出来事だった。

 声も、上がらなかった。

 そして、彼女は居なくなった。

 何処にも。

 ――――――何処にも。

 森は木漏れ日に満ち、静寂を取り戻す。

 其の正常な光を受けて、古木に寄生する透明なウツボカズラがてらてらと輝いていた。












結論。


 悪意は悪意を呼びます。害意は害意を招きます。そして、そう云う存在を好ましく見守る程、森は優しくありません。

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