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恭兵、逝く?

 甲高い声が校庭中に響き、龍馬の緊張感は一気に本当のものとなった。

「……お前も『水』属性使えんのかよ……?」

「いや、これは土を液状化した術だ。水は入っていない。そしてここからが俺様サマの新境地!! この液状化した土は衝撃によって固まる! どうだ? いいだろぉ?」

自分の術を淡々と話す武藤。その間も、龍馬は勝つ方法を考えていた。

――この戦場は5平方メートルっつーとこだな。それにしても、恭ちゃんと月夜が援護してくんねぇのはキチィぜ……。

「……やっぱぁ、てめぇは粋がってるだけの、糞餓鬼だってことだなぁ!!!」

中々飛び出してこない龍馬に痺れを切らした武藤は龍馬に向って動いた。

「ちっ! そっちこそ、単細胞度半端じゃねーっしょ?」

龍馬は龍馬で、紙一重で武藤の『土鎧』の攻撃をかわす。正直なところ、今の龍馬に反撃する策は考え付かなかった。なにしろ、不適切条件が多い。『相手の作った戦場』『相手の術はまだ1つ』『周りは液状の土』『単細胞』。単細胞ほど恐ろしいものはない。何も考えていないということは、何も恐れていないこと。 今の龍馬にはかわすことしか出来なかった。

 

 榎本と対峙していた恭兵と月夜。月夜の溜め込んでいる力は限度ギリギリの状態だった。武藤と龍馬が戦闘を繰り起こしている横で、3人はただ時が流れるのを感じているだけだった。

――正直、そろそろ動き出さないといけないのは分かってる。でも。

ある悪感が月夜の体を束縛していた。

――属性が分からない。

榎本本人は『風』だと言い張ってはいるが、それが真実だとは限らない。

恭平は恭平で、月夜の動きを見計らっている。元々攻撃専用ではない恭兵の術は、援護をする目的がある。

「……そろそろ飽きんスけどね……」

榎本が声を出した。

「そっちさんの動き見てたんスけど、もう飽きたんで、俺っちから行って逝かせてあげますよっと♪」

 ―その言葉を恭兵と月夜が脳内で分析し終える前に、榎本の存在は空間に存在していた―

「また……!」

空間を支配する術。その疑念が月夜の脳裏を横切った。だが、『有り得ない』。

空間を支配ということは、『重力』『風』『酸素』『窒素』『二酸化炭素』『宇宙空間』『太陽』『月』そして『地球』そのものを支配できることと『=』でつながる。たとえ榎本が特殊属性の適応者だったとしても、特殊で使えるものは1つだけ。何種類も支配できるわけではない。

「どうゆうことだ?」

月夜の疑問の次に恭兵も疑問を抱いた。

「遅いッスよ?」

―ダン!―肉体的ダメージが恭平を襲った。空間から突如として現れた榎本は右足で地面に足が着く前に蹴り飛ばしたのだ。

「うっ……!」

「恭兵っ!」

「次は、貴方ッスよ? 身構えないと♪」

月夜は榎本の声に反応し、限界まで溜め込んだ力をはじき出した。巻き起こった『突風』は月夜を中心に広まり、すぐに消えた。

「ジョーダン♪嘘ッスよぉ」

風の届かない位置まで移動した榎本は手2回叩きながら馬鹿にするような口調で発言した。

――なぜ? なんであそこで攻撃を仕掛けてこない?私の風を恐れているようには見えないし……。何より、肉体的攻撃をする意味がわからない。

多数の疑問が月夜の頭に渦巻く。

「貴方の属性は何なの?」

「教えるわけないじゃないッスかぁ。だって、教えたら負けるもん」

「負けだけの対抗意識は強いんですね」

「当たり前。ツッキーだって勝ちたいから戦ってるんでしょ?」

「変なあだ名で呼ばないでください。……もちろん私は勝ちたいと思っています。けど、貴方は何かが違う気がするんです」

「ん~と。んなこと言われてもぉ、俺っちにも分からないことを他人に分かるわけが無いんで、教えないッス」

「でも―」

「な~んか、狙ってるッスよね?恭兵くぅ~ん」

そう言うとほぼ同時に体を半回転させて後ろを振り向く榎本の顔面を、空気の鉄槌が襲う―――――――――はずだった。

「なんで……これを防げる?」

「なぁ~んででしょーかぁ?」

 月夜は恭兵の動きに気がつき、榎本に会話を振った。恭兵が近づくまでの時間稼ぎ。それも、榎本には見破られていた。『言葉の深さ』は恭兵の術。何かに呟くことで呟かれたものは『行動』をしてしまう。その呟く相手が肉体を持ってようといまいと……。その点では、空間を支配する術に最も近い術だった。

「言っときますけど……俺っち、見た目ほど優しくないんスよ? 相手がまだ空間にいるんだったら、蹴りを入れますし♪」

榎本は困惑している恭兵の腹に向って蹴りを入れた。身動きのとれない恭兵は当然のように蹴り飛ばされた。

「そ・れ・に☆地面に叩きつけたりもするんすよぉ」

――まただ……。

榎本はその場からその存在を消して恭兵が飛んでくる位置に恭平よりも早く着いていた。

「しまっ」

恭兵の言葉が終わる前に、榎本の残酷な拳はまたしても腹に当たった。

「これで五分五分ッスかねぇ。いや、恭兵くんは言葉ッスからねぇ……。まっ、もう飽きたし、もういいッスかねぇ」

榎本の声はひどく冷たかった。

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