リーダー来たる!
最初に書いときます。
今回の話で久しぶりに出てくる人が出ます。(まぁ、実際はそこまで久しぶりではないんですけど)
もしお忘れのようでしたら、3話に戻ってみてください。
では、お楽しみいただけたら幸いです。
S=165地区の負傷者が1人でた時点で、月夜は勝利を確認した。
――結局、高校生もたいしたことないわね。この調子なら、龍馬の出番はないかも……。
「月夜、来るぞ……!」
恭兵の一言で、月夜は我に返る。たとえ1人を倒したところで、今回は3人1組。1人を倒しても、残りの2人が強ければコチラが逆にやられてしまう。個人個人の力が弱くとも、恭兵と月夜のように協力プレイで個人の能力の何倍にも増幅させるチームもいる。油断大敵だ。
「この感じ、風ね」
風属性の能力を使う月夜にとって、己が変化させていない風の変化には敏感なのだろう。
「1人かしら?」
「だったら楽だけどな」
「龍馬はまだ行動しないっぽいし、私達でできるところまでは戦いましょう。いざとなったら――」
月夜の言葉を遮り、恭兵が口を開いた。
「俺等のリーダーが覚醒する!」
―ザン!―2人の会話が終了すると同時に、榎本が『空間』から現れた。
「ウソでしょ?いきなり現れるなんて……」
突然後ろから現れた榎本の存在に、月夜は1.69秒反応が遅れた。
「残念♪五門くんを倒したからどれくらいかと思ったスけど……こんなもんスか」
榎本はため息を吐くと1拍手した。
「まぁ、術の名前なんてホントはどーでもいいッスけど、カッコつけたいッスから。―突風―」
突風という術名を聞いた時点では、月夜に成す術は皆無に等しい。直線的な攻撃ならば風を槍と化した物体をぶつけ、広範囲を目的とした攻撃ならば自分を中心に台風を起こし周りを吹き飛ばす。
――どっち?榎本さんは、どっちを掛けてくる……!?
このときの月夜は『2択』だった。 しかし、榎本のそれは、
「やっぱ、中坊は、馬鹿ッスわ」
「ハッタリに決まってるだろ、俺様サマがキメるんだからよぉ!」
榎本の『動作』は何もしない引き金(トリガー)。それを引いて弾丸を打ち出すのは、
「俺様サマの術はてめぇを射る!」
武藤の左手は開いた状態、右手は握り締め、右手を左手にぶつける。
「『握り拳』!!」
ここまでのやり取りの中で、月夜は逃げることを止めた。自分の中の力を中心に溜め込み、武藤の術が自分に触れるコンマ3秒前に弾く。風属性の簡易的防御であった。月夜がその方法を選んだ理由は簡単。武藤の右拳が地面の土を集め、凝縮したものを付けていたことにある。右拳に集めたということは、接近戦を意味する。今回の月夜に迷いは無かった。
「墜ちろぉ!!」
武藤の強化された拳は、月夜の顔面を直で狙っていた。
――今だっ!
月夜は溜めた力を全て噴出した。これで、自分の安全を確認した。
「甘めぇ……」
武藤の拳は、風の岩壁を貫いて月夜を襲ってきた。
「てっめ!女性に手ぇ出してんじゃねーよ!」
―ブォン!!―火炎が、武藤の拳を覆った。業火と表すのが望ましい炎だった。
「ちっ!聯!後ろに下がれぇ」
「もう下がってるッスよぉ」
「何ィ!?」
武藤と榎本はその炎から引いた。それほど、その炎からは『殺気』を感じたのだろう。
「……龍馬」
「ば~か。最初っからB位使わせんなよ」
「今までノホホンとしてたんだからいいでしょ」
「俺の術には『準備期間』が必要なんだよ!富貴」
龍馬の言葉を受けて、月夜の表情は明るくなった。
「じゃぁ、今からは?」
こんな状況でも、中学生の好奇心は抑え切れなかった。分かっているのに問いてしまう。
「『戦闘時間』だっ!」
龍馬はニヤリと笑って右腕を前に出した。
「でも、何でここが分かったの?」
「ぼ、僕が呼んだんだよ」
月夜の声に恭兵が反応した。その口調は術を解いた状態なので『本人』に戻っていた。
「え?」
月夜の反応が遅れた1.69秒で、恭兵はその場から離れ、ある判断を出した。『龍馬を呼ぶべきだ』と。 恭兵は龍馬が力を溜め込んでいる体育館倉庫の裏に、自分の周りの空気を軽くして迅速に近づいた。
「龍馬……」
その場に着いたとき、恭兵は一瞬感情を無くしていた。そしてその次に出た感情は、『この人は負けない』という確信だった。龍馬は炎を身に纏っていた。
「分かってる。俺の『火』が騒いでいたから」
龍馬はそう言うと、纏っていた炎を消した。厳密に言えば『肉眼では見えない程度に濃度を薄めた』のだが。
「これでやっと、本当の戦闘になったな!まっ、どちらにせよ勝つのは俺様サマだけどなぁ!」
「馬鹿じゃねーの?高校生にもなって恥ずかしいのな。勝つのは『俺様サマ』とか言ってる雑魚じゃねー。『最強』の俺だっ!」
武藤と龍馬は互いに睨み合った。
感想待ってま~す。
ていうか元気ください。面白くないのは分かってますから……。少しでも面白いと思ってくれたら本当に嬉しいです。では!