最高の始まりにリーダー不在?
戦闘開始の音が響いた直後、動いた影は5つ。龍馬を除く全員が動いたことになる。
「まずは、一番手馴れていそうな、五門さん……!」
月夜は右にいる恭兵にそう告げると正面から向ってきている五門を見た。
「ね、ねぇ月夜。あとの2人はどこに行ったのかな?」
「……確かに、見えないわね。でも、さっきまで居たところにいないとするならば、何かしらの動きを見せるはずよ。今は、準備期間。焦らずいきましょう。いざというときには、リーダーさんがなんとかしてくれるでしょうから」
月夜は嫌味多数の言葉を吐くと手を合わせた。
「これで捕らえられるとは思わないけど……。恭兵、準備は大丈夫?」
「……あぁ、任せろ」
恭兵の口調が、周りの空気とともに変化した。これまでの自信無さげな口調ではなく、何も恐れないといった口調である。
「台風の都!」
月夜はその言葉と共に合わせていた手を一瞬離してまた合わせた。その時に鳴った音と同時に月夜の左右に風の壁が出来上がった。
「行け!」
壁はその『命』に反応を示し、五門と月夜の左右に壁を延ばした。これにより、五門と月夜は一直線の関係に鳴った。
「本当は上にも壁を作りたいんだけど、位(クラス)が上がるのは面倒なので」
月夜は五門を諭すような口調で話した。
「良い判断だね。うん。位は無駄に上げるものじゃない。この位の術だと、Cってところかな?」
位とは、術を使うための負荷のことを表しており、A~Dまである。負荷とは術と術の間に生まれるインターバルを示す。Dなら1秒、Cは2秒と、位によって1秒ずつ変わっていく。つまり、位が高いものの連続攻撃は不可能となる。
「残念でしたね。Dよ」
「そっか。惜しかったなぁ。でも、この程度じゃぁ……捕らえきれないよ!」
五門はその言葉とほぼ同時に、手を天に上げた。
「ライトニング……」
稲妻。直訳の意味を悟った月夜はすぐに違う術を掛けようとした。が、もう時すでに遅く、晴天から落ちた雷は月夜の作った壁を砕いた。
「ちっ。恭兵!」
月夜はすぐに大声を張り上げた。爆風のせいで周りの視界は狭い。
「もっと上の位を掛けておけば……時間がないにしても今だったら十分あったろ」
どこからやって来たのか、恭兵は2人より上空に存在していた。
「『言葉の深さ』を知れ。空気よ、鉄槌に変われ」
恭兵は五門近くの『空気』に話し掛けると、月夜のそばに寄った。―ズン!―
「!!なんだよ、これ……」
五門を中心とした半径1メートル以内の空気が急激な重量変化をした。それは、巨大な鉄球をぶつけられるのと同じ威力で五門の体を地面押し付けた。
「痛いだろ?弱い奴が抵抗するのは良くない。この重さはお前の抵抗心によっては軽くなるぞ。俺等を見かけや年齢で判断した愚かさを憎めよ」
恭兵は抵抗の出来ない五門に向って冷酷な言葉を発した。
「……何時観ても凄いわね……。恭兵の『特殊術』は」
「凄くはない。正式なる戦士の場合は全員それなりの能力を持ち合わせている。凄いも凄くないもない。俺だって、アイツのような能力を使いたいと思っている」
恭兵は晴天の空を見つめた。
「それにしても、恭平のその『口調』何とかならないの?」
「……そればっかりはな。『特殊術』を使える術者は、多かれ少なかれ代償をはらう。使い勝手がいい分、制御される事があるんだ」
「まっ、とにかく……1人目は倒したことでっ」
「勝ち勝負……だな」
S=324チーム負傷者0名。S=165チーム負傷者1名。