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始まりを告げる音

『本日の放課後、以下の3人は校長室に来るように。3年2組富貴月夜(ふうきつきよ)、3年4組大本恭兵(おおもときょうへい)、3年5組朱堂龍馬』

5時間目の授業が始まって数分が経った頃、放送が流れた。反応を示したのは3人。その1人、龍馬は『相談室』で聞いていた。

「なぁ、いつまでいんの?」

カウンセラーを担当する住上静江(すみかみしずえ)にそんな質問をする龍馬。

「さぁね。というよりも、3年5組で唯一貴方だけ残されるのかも分からないわよ。叱られるわけでもないしさ」

よく問題行動を起こす龍馬にとって、住上は教師とは思えないのだろう。自然と言葉が出る。―♪―相談室備え付けの内線電話が鳴った。

「はい。……分かりました、すぐに向わせます」

住上はそう呟くと電話を切った。

「貴方だけ、校長室に向いなさい」

「……え?誰が呼んでるの?」

「校長先生よ」

「ふぅ~ん」

龍馬はそれだけ言うと相談室から出た。廊下にでると、窓が空いているためか、風が吹き抜けた。

 校長室。基本的に教師にのみ入ることが許され、生徒の中でも掃除をする生徒、推薦希望をする生徒等の若干名しか入れない場所である。入った者はその空気に圧倒され、言葉を選んで言葉を口にするという聖域である。

「で?何スか?」

そんな戯言は龍馬には関係のないことで。

「おいおい、一応校長先生なんだぞ」

劉間中学校校長、莉藤美祢(りとうみね)はどっぷりとした椅子に腰掛けている。

「いや、今は『管理人』と『正式なる戦士』でしょ?」

「全く、朱堂くんの図太さには圧倒されるよ。まぁ、その通りなのだが、それは3人が揃ってからということで……。今はだなぁ」

「窓割ったの俺じゃないッスよ」

龍馬は話題はもう知っているといった雰囲気で答えた。

「いや、その話といえばそうなのだがな。今回来たのは隣中の阻害された戦士だと言うことじゃないか」

「なんで知ってんだよ……」

――ヤベッ。

龍馬は隠していたテストを見つけられた子供のような心情だった。

「村木先生が事後報告のときに言っていたのだよ。もちろん、村木先生を始めとした半径2キロ以内の人間の記憶は私の術で消し解いたがな」

正式なる戦士はもちろん、管理人もいくつかの術を使える。術は大きく分けると6つの属性になる。『火』『水』『土』『風』『雷』『特殊』。5大属性ともう1つ。『特殊』。特殊は使う人間によって変わる。

「それはありがとうございました」

棒読み状態で龍馬は言った。

「何か誠意が籠ってない気が……」

「まぁ、きにしないでさっ」

龍馬は莉藤の肩を叩いた。

「……お茶でも飲むか?」

「おっ、いいねぇ。コーラも可?」

「馬鹿。今は学校で朱堂くんはその生徒だぞ」

2人は笑いあった。

 30分後。5時間目の授業、掃除、帰りのHRを終了させ、校長室にはS=324地区の正式なる戦士が揃っていた。

「……」

「……」

「……」

誰も話をすることはなかった。今回ばかりは龍馬も静かにしていた。

「さて。まずは腰掛けてもらおうか」

その沈黙を破ったのは『管理人』である利藤だった。莉藤はいつになく真剣な眼で言い放った。

「失礼します」

富貴月夜はハッキリとした口調で言い、座った。

「し、失礼します」

大本恭兵はそれに釣られるように座った。

「失礼しまーっす」

朱堂龍馬はいつもと同じだった。

「今日の事は知っているね?」

「はい。どこかの馬鹿が馬鹿に喧嘩を売って返り討ちにあったと」

月夜はため息をつきながら言った。

「おい!そりゃぁねぇよ。馬鹿って俺?俺は馬鹿じゃねぇ」

「うるさい」

月夜は龍馬に厳しい。信頼しているからこんな冗談を言い合えるのだ。

「まぁ、冗談はさておき。今回の事を起こしたのは私が排除した阻害された戦士だということだ」

「……」

月夜は何も言わなかった。莉藤は続ける。

「今日から本格的にSECOND WOPLDが開始される。支配者を選出する方法は管理人、この地区では私だが……管理人と管理人との交渉となっている。が、基本的には力と力のぶつけ合いになるだろう。今回の進化の目的は『力』なのだからね。重荷になるかも知れんがハッキリと言っておく。私は、キミ達を信用、信頼しているぞ」

優しく重い言葉。その重圧が、3人を襲った。

「はい……」

月夜はその言葉を重く感じ取り、

「はい……!」

恭兵は臆病者ながらに決意を表し、

「任せろって。俺は最強!コイツらは俺以外の奴よりは強い!そんな俺等が負けるとでも?」

龍馬はその言葉を馬鹿なりに理解した答えを出した。―♪―校長室の電話が鳴った。静かな室内にその音は不気味に響いた。

「もしもし……。あぁ、こんにちわ」

莉藤はそう言うと電話を全員に聞こえるようにした。

『こんにちわ。今日はsecond worldの開始日ですね。そちらはどうですか?正式なる戦士の調子は?』

「桐方さん。遠回しに言うのはよしませんか?交渉したいんでしょ?」

冷酷な声で莉藤は言った。その声は中年の女性の声ではなかった。自分の意見をハッキリ言う、政治家のような声だった。

『おやおや、怖い口調ですねぇ。まぁ、正解なのでそこは言いませんが。そうですよ。僕は貴女に交渉を持ちかけます。どうです?僕のエリート達に任せてみませんか?そちらの正式なる戦士はまだ中学生。こちらは高校生ですよ。力の差は歴然としています。ですから―』

「戦闘はさけた方がいい。とでも言いたいんですか?」

桐方と名乗る男に対して、莉藤は挑発するように言った。

『はい。どうしますか?こちらとしては、どちらでもいいのですが……』

「……」

相手側の誘いに、莉藤は少し間をおいた。『どうする?』声は発せず、口の動きだけで龍馬たちに伝える。

「もちろん!」

龍馬も声の音量を少し下げて答えた。

「戦りますよ。こちらは、強いですから。力も性格も……!」

『無謀ですよ……。まぁ、いいでしょう。戦場|(会場)は、そちらの校庭でよろしいですか?』

「大丈夫です」

『それでは……今から向います』

―バン!―町内に響いたその音は、龍馬、月夜、恭兵の1回戦の開始を告げた。

「全く、桐方はやることが派手だなぁ……。ストップ ピーポー!」

莉藤は小馬鹿にした笑い方で特殊魔法を使った。その瞬間、人々は動きを止めた。この2地区で動いているのは、8人と時計だけになった……。

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