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第六十五話「緊急共同研究②」


駅直結の巨大なショッピングモール。華やかなショーウィンドウが並ぶ中、春馬はスマホのメモを取り出し、真剣な面持ちで麗華に向き直った。

「若宮さん、本格的な探索を開始する前に、まず『贈与品プレゼント』の定義と選定基準について合意を形成しておく必要があります」


「お、いいね。春馬くんの考える『最高のプレゼント』の基準は?」


春馬はまるで重要なプレゼンを行うかのようなトーンで、独自の「プレゼント論」を展開し始めた。


「俺の結論はこうです。『嬉しくても困っても邪魔にならず、最終的に消費して消滅するもの』。これが最適解ではないでしょうか?」


「……消費して消滅するもの、つまり『消えもの』ってこと?」


「その通りです。例えば高級な菓子類や、質の高い消耗品です。理由は三つ。

一つ、空間的リソースの占有を避ける。 物として残るものは、相手の居住空間を永久的に占有し続けるコストを強いる。

二つ、心理的負債の軽減。 食べればなくなるものであれば、万が一相手の好みに合わなくても、処分に対する罪悪感(論理的負荷)が最小限で済む。

三つ、関係性の固定回避。 形に残るものは、俺のような『ただのクラスメイト』という希薄な関係性において、不必要な意味(重み)を持ちすぎるリスクがある……。

どうですか? この『消費型贈与』こそが、最も合理的だと思いませんか?」


麗華は春馬の「完璧なリスク管理」を聞いて、感心したように、それでいて呆れたようにため息をついた。

「なるほどね。春馬くんは、自分の存在が蒼奈の邪魔になることを、そこまで徹底的に避けてるんだ。……でもね、春馬くん。それは『失敗しないための論理』であって、『喜ばせるための論理』じゃないよ」


「……どういう意味ですか。喜びは、相手の負担を減らすことからも得られるはずだ」


「女の子ってね……特に蒼奈みたいな子は、『自分のことを考えて選んでくれた、その迷いの形』が欲しいこともあるんだよ。消えてなくなるものもいいけど、ふとした時にそれを見て、『あ、あの時あいつがあんな必死に選んでくれたな』って思い出せるノイズこそが、本当のプレゼントだったりするの」


春馬は麗華の言葉に、喉の奥が詰まるような感覚を覚えた。

「(演算エラー:『迷いの形』……? 以前、蒼奈も言っていた、『非効率なプロセスそのものに価値がある』という理論の再来か。俺が『邪魔』だと思っていた残存物は、彼女たちにとっては『記憶のインデックス(索引)』として機能するというのか?)」


「ま、とりあえず、春馬くんの言う『消えもの』も置いてあるけど、形に残る雑貨も素敵なセレクトショップに行ってみようか。そこで蒼奈が何を喜ぶか、君のその高度な観察眼で分析してみてよ」


春馬は、自分の「消えもの理論」という強固な防壁が、麗華の「意味の追求」によってじわじわと侵食されていくのを感じながら、華やかな店内へと足を踏み入れるのだった。

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