表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/65

第三十話「共同作業②」

第三十話公開中!

三十という数字が節目になるかは分かりませんが個人的には㊗️です✌

アクセス解析を見た限り毎日約30人見てくれているということで感謝でしかないです!「俺は恋愛主人公じゃない、」を連載開始から読んでいるんだよね!と誇れるような作品になっていけるように描き続けます!


蒼奈の「鈍感」という容赦ない指摘に、論理的な観測者としてのプライドを傷つけられた春馬は、自己の観測能力の信頼回復を、この共同作業で証明しなければならなかった。


二人は、ショッピングモールの広いフロアを、互いに1.5メートルの距離を保ちながら歩いていた。これは、「俺たちはデートではない」という春馬の無言の主張であり、『物理的な接触リスクの最小化』という論理に基づいていた。

共同作業の最初の行動は、書店での進路に関する書籍の探索だった。これは、春馬にとって最も論理的で効率的な行動であり、唯一、自己の論理を維持できるフィールドだった。


「(警戒レベルを最大値に固定する。このショッピングモールは、裏切りリスクと衆目のノイズで満たされている。あらゆる負の変数を即座に排除する)」

春馬は、まるで戦場のスナイパーのように、頭上の監視カメラ、周囲のカップル、そして最も危険な「自分たちを知る人間」の存在を、高速でスキャンし続けた。彼の目には、蒼奈のポニーテールよりも、周囲の悪意の気配の方が高解像度で映っていた。


「ねぇ、春馬くん。進路って、文系と理系で分けるのが最初の一歩だよね?春馬くんは、理系科目、論理的に得意そうだな」


蒼奈は、楽しさというノイズを放出しながら、春馬の論理的な防御を揺さぶり続けた。


二人が書店のエスカレーターを降り、人通りの多い通路を歩き始めた、その時だった。

春馬の論理的な警報システムが、赤い点滅を始めた。通路の先、アパレルショップの前で立ち話をしている二人の女子生徒が、春馬の観測スコープに捕捉された。

(データ照合:学年、所属クラス、顔の識別98%。同学年の生徒、遭遇リスク:最大)

春馬の脳内では、即座に「裏切り回避の最適解=逃走」の命令が発せられた。彼は、蒼奈の背後に隠れようと、一瞬だけ身体を硬直させた。蒼奈の存在が、嘲笑のトリガーになることを、本能的に恐れたのだ。

しかし、回避は間に合わなかった。君我学園の複数の女子生徒が、非論理的な大声で蒼奈に声をかけた。


「あ!若宮さん!やっぱり若宮さんだ!」


女子生徒の視線は、瞬時に蒼奈から春馬へと向けられた。その視線は、驚き、困惑、そして明らかな悪意を含んでいた。


「え、嘘でしょ?若宮さん、本当に箕島君と一緒なの?!信じられない……」

女子生徒Aは、憐れみと軽蔑の混じった表情で春馬を見下ろした。


「若宮さん、優しすぎるよ!どういう罰ゲーム?って皆言ってたよ。まさか、本当に休日まで付き合ってあげてるなんて!」


「ねぇ、ありえない!若宮さん、そんなの(春馬)相手にしなくても、いくらでも人気者と出かけられるのに!若宮さんのイメージが下がっちゃうよ」


「私だったらこんな奴無理だよ。お金積まれても一緒にいたくない。デートならなおさら無理」


春馬の全身は、氷点下の温度に包まれたかのように硬直した。「優しすぎる」「罰ゲーム」「そんなの」という符号が、彼の幼トラウマの感情記憶と完全にリンクした。

「(観測された!彼女たちの悪意と嘲笑のデータが、予測値通りに発生した。次は排除だ。俺の排除の番だ。裏切りリスク:100%)」


彼は、この負の感情が裏切りへと発展するのを待つ、絶望的な静寂の中に立たされた。


しかし、その静寂を破ったのは、春馬の予想とは全く異なる、悪意のない光の変数だった。

蒼奈は、女子生徒たちの「優しすぎる」「罰ゲーム」という悪意の論理を、悪意のない笑顔で完全に無視した。彼女は春馬と女子生徒たちの間に、物理的に一歩踏み出し、笑顔を向けた。


「あ!ちょうど良かったよ!私たち、今から共同作業をするんだね!」


「え?きょ、共同作業?」


「うん!進路について論理的な計算をしてるんだよ!これは『他者との共同作業の最大利益』を検証するための、フィールドワークなの」

蒼奈は、春馬の論理を、周囲の人間にも理解できる『論理的な防壁』として、極めて自然に適用した。


「箕島くんの論理的な分析能力は、私が未来の最適解を出すために必要不可欠な変数なんだね。だから、私が必須の研究対象として、彼を指名したの!ほら、今から進路の本を探すんだよ」


蒼奈は、「デート」「罰ゲーム」という感情的で非効率な概念を、「研究」「論理的分析」「必須な変数」という論理的で無害なフレームで、瞬時に置き換えた。


女子生徒たちは、蒼奈の純粋すぎる熱意と、「研究」という真面目で高度なワードの前に、完全に言葉を失った。彼女たちの視線は、春馬の「不釣り合いな存在」から、「若宮さんが必須とする論理の装置」へと強制的に切り替えられた。


「あ、そ、そうなんだ……若宮さん、真面目だね……すごい……」


「ご、ごめんね、若宮さん……邪魔しちゃって。頑張ってね、研究……」

女子生徒たちは、嘲笑の言葉を完全に撤回し、困惑と畏敬の念だけを残して、通路を立ち去った。


「(論理崩壊)」


春馬は、全身の硬直を解くことができなかった。彼は、裏切りと嘲笑が来るのを待っていた。しかし、そこに現れたのは、蒼奈の『悪意のない論理』によって瞬時に無力化された、無害な状況だった。


「(俺の裏切り回避の最適解は、『逃走』と『視線遮断』だった。だが、若宮蒼奈の『悪意のない論理』という変数は、逃走よりも圧倒的に効率的にリスクをゼロに収束させた……)」


春馬は、「悪意のなさ」が、最も有効な「防御壁」として機能するという、彼の基幹論理では処理不可能な逆説を観測した。彼の孤独の最適解は、憎悪や論理ではなく、蒼奈の「純粋な論理の適用」によって、初めて絶対的な防御を獲得したのだ。


「ふぅ。よし、これで共同作業の変数が増えたね。さあ、春馬くん!進路の本を見に行こう!」

蒼奈は、事態の深刻さに全く気づかず、春馬を促した。春馬は、論理の再構築に追われながらも、「研究の続行」という論理的な命令に従わざるを得なかった。

箕「(若宮蒼奈。君は、俺の論理を破壊する変数であると同時に、俺の防御を最大化させる、計算外の『究極の防御システム』でもあるのか……)」


春馬は、蒼奈の背中を見つめながら、自身の『孤独の最適解』のシステムが、蒼奈という変数なしには機能不全に陥る可能性を、初めて論理的に悟り始めた。

そして、書店内のカフェスペースで、蒼奈は進路計算の核心に迫る問いを投げかける。


「ねぇ、春馬くん。じゃあ、この共同研究で最終的に目指す未来って、具体的にどんな状態のことなの?」

春馬の『悲しみの回避=楽しさの排除』という定義が、再び試される時が来た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ