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第十九話「研究活動⑦」

第十九話公開中!


オムライス専門店を出た俺は、崩壊した論理を無視し、ただ「解散」という時間効率の最適解を目指して歩いた。


「若宮。現在時刻は20時35分。この時間帯における電車の運行本数と最終時刻を鑑みると、これ以上の非効率な時間的コストを費やすことは、理に適わない」


俺は、無駄な会話を排除し、ただの移動機械になることで、感情の介入を防ごうとした。


「ふふ。最終時刻の心配なんて、春馬くん、優しいね」


「違う!これは個人の不利益を防ぐための公共の論理だ。優しさという非効率な感情とは無関係だ!」


蒼奈は、俺の焦燥感を、またしても「優しさ」という非論理的な感情のデータに変換した。


駅の改札前。ここで、論理的な関係は解消される。

「さて。本日の研究活動はすべて完了した。このデートは、俺の論理の非効率性を証明するという君の目的を、図らずも達成してしまった。つまり、俺の敗北だ」


俺は、潔く論理的な敗北を認めることで、感情の関与を排除し、この非効率な一日を終わらせようとした。


「これで、俺の『孤独の最適解』は、君という変数を排除し、再び最高の生存戦に戻る。では、解散だ」

俺は、頭を下げ、速やかに改札を通ろうとした。


その瞬間、背後から、蒼奈の純粋で穏やかな声が飛んできた。


「ねえ、研究者さん」


俺は、足を止める。


「今日の研究は、本当に楽しかったよ」


それは、感情のデータでも、論理的な分析でもなく、ただの蒼奈の主観的な感情だった。

俺は、振り返ることができなかった。


違う。俺の論理は――


「悲しみの回避=楽しさの排除」だ。今日、俺は非効率な『楽しさ』を経験した。そして今、俺は非効率な『悲しさ(寂しさ)』を経験している……


蒼奈の仮説が、俺の論理の核を、最後の最後に打ち砕いた。俺の『孤独の最適解』は、機能不全に陥った。


しかし、俺は、振り返ることはできなかったが、最後の論理的な抵抗として、論理的な評価を非論理的な大声に乗せて、背後の遠ざかる蒼奈に向けて放った。


「――若宮の服も、映画も、オムライスも、新鮮だった。以上だ。また学校でな」


それは、大声には満たないが、俺のいつもの声量を遥かに超えた、微かな感情の響きが乗った、論理的な評価だった。


蒼奈から返答はなかった。ただ、遠ざかる足音が、一瞬だけ止まった気がした。


俺は、改札を通った。


『孤独の最適解』は、完全に機能不全に陥った。俺の論理的な世界は、一人の女によって、完全な混沌へと突き落とされたのだ。


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