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僕はハヤブサ

友人のお子さんが、自分のきらびやかな名前を嫌がっていたのを見て、書きました。私も大変美人そうな本名がちょっと嫌だったので共感します。漢字にはいろんな意味があるので、好きな意味も見つかるといいなと思います。

「やだなぁ。雨ふらないかなぁ。」

うだるような暑さの中、隼人は、学校への道をとぼとぼと歩いていた。小学校2年生の彼がうかない顔をしている理由はたったひとつ。今週末にある運動会だ。彼は、運動が得意ではなく、特にかけっこはとても苦手。がんばって走ってもビリ。だから体育の時間は嫌いだった。

ちょっと小柄だけど明るい性格の隼人は、学校でもたくさん友達がいる。お調子者で、冗談ばかり言っている。だから、ちょっとくらいからかっても、笑い話になるだろうと、友達にからかわれることも、しょっちゅうだ。でも最近隼人には、どうしても許せないからかいがあった。

それは、名前をいじられること。

隼人の名前は、すごくはやく飛べる鳥、ハヤブサという漢字と、人という字でできている。

「ハヤブサのようにはやいひと!」

そう言って笑った友達のにやにやした笑顔を、隼人は思い出しては腹をたてていた。自分がつけた名前じゃないのに、笑われるなんて納得できない。

そう思って何か言い返してやろうとしたけど。

「じゃあ足がおそいから、おそとにしよう。」

なんて言われたらどうしよう。隼人は何も言えなかった。

両親と暮らす家から近いおじいちゃんの家に遊びに行っては、オレンジジュースをいれてもらっておじいちゃんと夕方のテレビを見る。それが隼人の日課だった。

「おじいちゃんは僕の名前なににしたかったの?」

「おじいちゃんのおとうさんの名前をもらって源次郎がいいって言ったんだよ。そしたら古臭いから絶対にダメだって言われてな。」

確かにクラスに源次郎なんて名前の子は一人もいない。いつの人間だなんてからかわれるのは嫌だと、隼人はほっとした。

「ハヤブサは、かっこいいから、ハヤブサに賛成したんだよ。ほら、勇猛果敢だ」

隼人がいじっていたスマホの画面をおじいちゃんがつんつんとつついて、検索してみなさいというようににやりと笑った。

隼人が出したページには、確かに勇猛、勇気があって、何事も恐れないと書いてある。

「知らなかった!」

足が遅くてからかわれるなんて、かっこ悪くておかあさんには言えない。おとうさんに言ったらからかわれそう。そう思って隼人は、今日までこのことを

だれにも言わなかった。

もやもやしていた気持ちが晴れる。ぱっと瞳をかがやかせた隼人は、自分の名前が急に好きになった気がした。おまえははやいだけじゃなくて勇気があるんだ。そう言われたようで、隼人は、みんなにこのことを話したくなった。足が急に速くはならないけど、勇気ならある。運動会で一生懸命走るんだ。


運動会当日、隼人は徒競走を精一杯走って、そして、おかあさんによく頑張ったねと褒めてもらった。1番にゴールしなくたって、僕はハヤブサみたいに勇気があるんだと、おとうさんに隼人が言うと、なんでそんなこと知ってるんだとびっくりされた。

完走祝いの折り紙のメダルを見て、隼人はにっこりと笑った。

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