調査報告
「それで? イゼ、今日はどうした?」
「んにゃ?」
夕食後、ソファの上で丸くなっていたイゼを叩き起こした。
「忘れてたにゃ。めいにゃん、死ぬ」
「急に俺を殺すなよ⁉」
どうせ言葉足らずなだけだろうなとは思うが、いきなりのこと過ぎてさすがに驚いた。
「んにゃ、順を追って説明するにゃ」
「ああ……ん? 俺が死ぬのは確定なのか?」
「にゃ」
「ええ……」
改めて言われると今度は信じられないという気持ちが勝った。悪いが俺はだいぶしぶとい。自分で言うのもなんだが生存力だけは本当に勇者級だと思う。そんな俺が死ぬ? まさかドラゴンを相手にするわけでもなかろうに。
「ネナに任せてた件、進捗があったにゃ」
「ああ、アイナの調査な。どうだった?」
「まず、ニコラス家は完全な白だそうにゃ。今でもミクアで勇者メイゲルの名前を推し続けてる数少ない家ってことらしいにゃ。その裏付けも見つけたって言ってたにゃ」
「……あの家が? だって、俺はあいつの父親を守れなかったんだぞ? 恨まれこそしても、味方されることはないはずだ」
「むしろ逆にゃ。めいにゃんはほかの大勢を守った。そのことを感謝しているらしいにゃ。アイにゃんがめいにゃんに向ける尊敬も本物にゃ。恥ずかしげもなく、日記に書いてたらしいにゃ」
「冗談、じゃないんだよな?」
「んにゃ」
正直信じがたい。いや、確かにアイナの様子を嘘と言い切るのは難しいものがあったが。
でも、ネナの調査だもんな。国の機密情報だって盗んでたあいつなら、ある程度は信用できる、か。
「まあ、それは分かった。ネナには礼を伝えておいてくれ。で? それが俺が死ぬとのどう関連するんだ?」
「おみゃあが頼まれた依頼が問題にゃ」
「依頼って……ああ、アイナから受けたやつか。最近義賊だかなんだかが暴れてるっていう。そういやすっかり忘れてたな」
ネナが犯人だと目星をつけて、当てが外れたんだったか。そのあと色々あったせいで抜け落ちてた。
「その犯人を見つけたってことか?」
「焦るにゃ。まず、犯人は見つかってにゃいにゃ。でも、犯人がグループってことは分かったにゃ。それも、異国から来たテロリストにゃ」
「テロリストだと?」
どうしてこう、面倒ごとが舞い込んでくるのかね。勇者はとっくの昔に引退したんだ。出来ることなら関わり合いにはなりたくない。なりたくないが……イゼが言うには、俺はすでにだいぶ深くまで関わってしまっているようだ。
「その名も邪竜教。自称世界の滅亡を目標にする、とち狂った宗教集団にゃ」
「……は?」
思わず飛び出した思いもよらない名前に、俺は開いた口をしばらく閉じられないでいた。




