ハンバーグ
屋敷に戻った俺たちを出迎えたのは、肉の焼けるいい匂い。どうやらもう食事の支度は終わっているらしい。
「ただいま帰りましたよ! さあ、マシロのご飯はどこですか⁉」
「ん、お帰リ。座っててヨ、すぐ持ってくるカラ」
「ただいま。ミーアトリアも」
キッチンの向こうに見えるミーアトリアの背中。一瞬振り返ってこちらを見てから、手元に視線を戻す。
「お帰りなさいませクソ主様。私たちを置いていった旅行はさぞ楽しかったんでしょうね」
「皮肉たっぷりだな……今度また連れてってやるよ。ハトも一緒に来るだろ?」
「場所次第カナ。私たちは嫌われ者だシ」
「もちろん、お前がいけそうなところを探すさ」
「そりゃ楽しみダ」
お皿を用意しながら、ハトリールは淡々と返す。
あれで本当に楽しみだなんて思っているんだろうか。あいつのまともに笑う顔、ほとんど見たことないんだよなぁ、なんだかんだ。
ぜひとも1度、満面の笑みを見てみたいところだ。
「あ、ご飯ですね! 待ってました! マシロはおなかペコペコですよ!」
「ハイハイ、ちょっと待ってナ。すぐ並べ……あ、コラ! 待てッテマシロ!」
「マシロ様、あまりはしゃぎすぎると困ります。黙っておとなしく座りやがれください」
「ひぃっ⁉ 包丁をそのまま向けるのはやめてください! 冗談じゃすまないので!」
こいつらは……いつだって元気そうで何よりだ。
と、そこでチャイムが鳴った。
「俺が出る」
「ソウ? 頼んだヨ」
こんな時間に誰だろう。クォンだろうか。正直この前の依頼で疲れたから、次の仕事をする気はまだ起きないんだよなぁ……。どう言い訳しようかと考えながら玄関の扉を開く。
「……って、イゼ?」
「にゃ。……夜ご飯?」
「そうだけど。珍しいな、玄関使ってくるなんて」
「窓が開いてなかったにゃ」
「あー……まあミーアトリアならしっかり戸締りするか。それで? 食ってくのか?」
「にゃ」
数日後無沙汰だったが、元気そうで何よりだ。わざわざ訪ねてきたってことは何か用事があってのことだろうし、ご飯を食べた後でゆっくり聞くことにしよう。
と言うか早く戻らないと俺の分のハンバーグが無くなりそう。
「めいめい、誰だった?」
「イゼだ。ミーアトリア、イゼの分も用意してもらっていいか?」
「余分に作っておいたので問題ないです。そうでもしておかないとどこかの誰かが人の分も食ってしまいやがりますので。これで足りるか足りないか、怪しくなりました」
「ど、どこの誰ですかねぇ……あ! このサラダもおいしそうです!」
むしゃむしゃ、とサラダをほおばりながらマシロは明後日の方向を向く。自覚があるならあるで余計なことをしなければ目立たないのに。
「はあ、ほら出来ましたよ。さっさと食いやがれください」
「やたー!」
我先にとマシロが食べ始め、数日ぶりの騒がしい夕食が始まった。




