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完全体のマシロ

「さあ、私の力を見るときですよ!」

「荷運びだが?」

「マシロの力なら荷運びだって余裕です!」


 役所に言って依頼を探すと、今日は魔物討伐などの依頼はなく、荷運びやその他の雑用しかなかった。この前あらかた討伐依頼を熟してしまったのでだいぶ減っているようだ。

 戦闘力を見せびらかす満々であっただろうマシロは一瞬肩を落としたのち、気合を入れなおして拳を握った。多分無理してる。


「じゃあ、今日はよろしくね」

「はい!」


 腰の曲がった爺さんにマシロは元気よく返事する。孫へ送るプレゼントを馬車まで運んで欲しいという依頼だった。それくらいならすぐに終わるな、と思った俺の予想は、すんなりと裏切られた。


「わし、この屋敷の物全部譲るから」

「……ぇ」


 マシロが見開いた眼で見上げたのは、ハトリールの家と同等のお屋敷。聞けばこの人、数年前までここで商会の会長をしていた人らしい。そんな人が隠居を決め、資産を息子に譲り渡すことを決めたそう。ちなみにプレゼントの大半は高価な工芸品。重たいうえに、扱いを1つ間違えれば俺たちの1年分の給料が飛ぶ。


「ま、任せて、ください……!」


 マシロ、無理しなくていいんだぞ。


 結局荷運びにはまる一日かかった。そんなに重かったのかと尋ねると、身体より心が疲れたと言っていた。まあ、流石のマシロでも借金の返済が終わったばかりでまた借金をする気はないらしい。正直おどおどしながら荷物を運ぶマシロを眺めるのは面白かった。

 

 翌日、俺たちが受けた依頼はとある貴族の護衛依頼だった。一泊かけて隣街のリオーンまで連れて行ってほしいとのこと。


「マシロに任せてください! どんな敵だってボコボコにします!」

「ははっ、頼もしいね。よろしく頼むよ」

「はい!」


 確かこの人はリオーンの領主だったはずだ。領主がどうして一般役所の戦闘職に? と思ってクォンに確認すると、お忍びできているからとのこと。なので馬車も豪華なことはなく、連れも俺たちを含めて十人未満。馬車2台の小さな集団となり、街道に沿って進んでいくことになる。


 その間、マシロは貴族さんのお話し相手になっていた。


「そうなのかい。マシロちゃんはその年で独り立ちを……私の息子も、早いうちから独り立ちしてねぇ。寂しかったけど、マシロちゃんみたいに立派にやっていたら嬉しいなぁ」

「会えていないんですか?」

「ああ。継いでくれる気もないみたいでね。一人息子なのだが……」

「マシロでよければ継ぎますよ! マシロ、おじさんのこと好きです!」

「ははっ、嬉しいねぇ」


 お菓子をたくさんもらい、おじいちゃんとお話しする孫の図だった。ちなみに多分マシロは本気で継ぐ気だと思う。領主になれば毎日遊び放題だと思っているに違いない。けど、言っておくがお前に領主は無理だ。3日で街が滅ぶ。


 一泊二日の隣街への旅は、何の問題もなく終了。マシロと貴族さん、最後はお互いに寂し気な顔をしながら、再開の約束をしてお別れをしていた。身分の差を超えて仲良くなれるのは尊敬に値するが、マシロ、お前はそれでいいのか?


 結局、帰りも何もなかったし。


「先輩! いい旅行でしたね!」

「……ああ、そうだな。お前がそれでいいならそれでいい」

「へ? どういうことです?」

「そんなことより、今日はミーアトリアがハンバーグを用意してくれてるらしいぞ」

「本当ですか⁉ 先輩何してるんです! 早くいきますよ!」

「お、おい! 手を引っ張るな!」

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