邪竜教の司祭
今日あった出来事をハトリールに話してみた。まああれだ。司祭様らしいし、何かしら答えてくれないかと期待した。
「……そんな嫌そうな顔するなよ」
「いや、だってネ」
なんか見たことないレベルで嫌そうな顔してる。
「あいつらは厄介者なんだヨ。正確に言えば、私を含めたあいつらネ」
「ハトリールもか?」
「この年で司祭なんてよっぽどのことがなきゃならないからね。というか、問題抱えてないとなれない」
「問題抱えてたら普通なれないんじゃないか?」
と言いつつ、邪竜教だからなぁ、と思ってしまう面もある。邪竜教は決して好かれた団体じゃない。というか嫌われてる。もちろんかつての悪行も影響してるのだろうが、それ以上に教徒には変わり者が多い。
いや、違うか。端から文化が違いすぎるんだよな。
「……って待てよ。じゃあその言い方だとあの2人も司祭なのか」
「そうだヨ。マナとナシュ、7人の司祭の中でも飛びぬけた問題児」
「問題児……マナはともかく、ナシュはそんな感じしなかったけどな」
「隠すのがうまいんだヨ。……まあ、関わらないことをお勧めするヨ」
「今更なんだよなぁ」
頭を抱えざるを得ない。すでに関わってしまったし、何なら手を差し伸べてしまった。名前だって教えたぞ。
「最悪の場合は私に言ってネ。どうにかスル」
「それは助かるな。……で、マシロは?」
「借金返済に行ったヨ。仕方ないから私のお金も渡して、利子含めて全部返させタ」
「お前、人良すぎだろ」
「ましろんが甘え上手なんだヨ。私、今までああいうタイプとは関わってこなかったから。それに、私にとってお金はたいして価値のあるものじゃないしね」
「そうは言ってもだな」
甘やかしすぎるとろくなことにならない、と言おうとした瞬間、リビングの扉が開け放たれた。
「マシロ、完全復活です!」
などと意気揚々と現れたのは、鎧に合わせて盾と剣を携えた。マシロだった。噂をすれば、ってやつだろうか。
「お、ちゃんと返せたみたいだネ」
「はい! ハトちゃん、本当にありがとうございます! おかげで私の命よりも大切なものを取り返せました!」
「命をもっと大事にしろよ」
そんなもんを借金の担保にしてんじゃねぇ。
「失礼ですね。いつも手入れは欠かせてませんし毎日魔力だってこめてるんですよ?」
「こめれてないんだよ、ここしばらく」
「そ、それはそうですけど、ちょっと前までそうでしたし、これからもそうなんです!」
「はいはい、そういうことにしておけばいいのな」
「嘘じゃありませんよ! 実際、着れてるじゃないですか。この子は着る人を選びますからね。ちょっとやそっと離れ離れになったくらいじゃ私から離れたりしないんですよ!」
「怪しいなぁ」
「嘘じゃないんですってば!」
マシロの鎧は特別製だ。ハトリールに言わせてみればかなり格が高い魔道具らしい。もしかしたらミーアトリアの《死の斧》にも匹敵するほどとも言っていた。どうしてそんなものを、道端で助けただけの人から譲り受けたのかはマシロ本人含めて分かっていない。
「もういいです! 先輩は思い知ればいいんですよ! 本来の力を取り戻した私がどれだけすごいのかを! ハトちゃん、待っててくださいね。借りたお金、すぐに返しますから!」
「イヤ、別に私はいらな――」
「そうと決まれば明日から仕事です! 先輩、付き合ってもらいますからね!」
人の話を聞かず、人を頼ることもやめないマシロだった。




