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面会

 アイナは従者を連れていた。ゴシックメイドの格好をした、肩口までの薄水色の髪に深い紫のような瞳と凛々しい顔つきを持つ少女。年は俺と同じくらいだろうか。背丈は俺の目線程度。俺が170を超えてるから、160後半はありそうだ。体つきも年相応の大人らしさ。

 

「好みだな」

「……???」


 俺がメイドさんを見つめながら言うと、メイドさんは目を渦巻かせ、混乱したように口を開いたまま動かなくなってしまった。


「ちょ、ちょっとメイゲルさん! 不敬ですよ!」

「ん? ああ、悪い。つい」

「ついじゃないですよ……申し訳ございません、アイナ様! ……って、アイナ様?」


 クォンが誠心誠意を込めて頭を下げたのだが、どうやらアイナはそれどころではないらしい。メイドさんに顔を近づけて、興味深そうに観察していた。


「なるほど、メイゲル様はメイラのような女性が好みなんですね。でしたらいっそメイラをお嫁にやって義理でもいいから家族に……い、いえ、それは駄目です。メイラは私たちの血族ではないので義兄弟関係は結べませんね」

「アイナ様、近いです」

「ああ、すみません。どうにか私もメイラの様になれないかと考えていて」

「それより、お客様がお待ちですよ?」


 おお、あれだけ近づかれても動じないのか。口数が少ないミステリアスな性格、普段騒がしい奴ばかり回りにいるから新鮮だな。


 なんて思っていると、アイナがこちらに顔を向けた。


「こほん。改めまして、お久しぶりですメイゲル様。本日は、お願いがあってまいりました」

「あ、今の感じで普通に行くんだな」

「はい。今回はギルドを経由して依頼を受けていただけたくて」

「何なら無視する感じなんだな」


 流石お貴族様の生まれ、心臓に毛が生えてやがる。俺が言えたことでもないが。


「まずは、ドラゴン討伐お疲れ様です。えっと、そちらの方は、事情を知っていられるのでしょうか」

「ん? クォンのことか」

 

 事情、と言えばすなわちあれのことだろう。


「クォン、俺の前職について知ってることは」

「個人情報保護の義務があるのでここでは口にできませんが、大方のことは。国立の施設で働く以上は、最低限調べさせていただいております。そのうえで、口外は一切しておりません」

「ってことだ」

「では、問題ありませんね。私はメイゲル様のご活躍を再びうかがえてうれしく思います。長らく尊敬していました、勇者メイゲル様」


 その名は捨てた、と言うには中途半端な終わりだったな。


「俺は王国を追放された身だ。もう勇者を名乗る資格はない」

「勇者とはもとより聖竜教会の定めるドラゴンへの切り札。王国の決めるところではありません」

「ナミエル様に、王女に推薦されてなった勇者だ」

「たとえそうだとしても。メイゲル様が勇者であることに違いはありません。ドラゴンを2匹も討伐したのですから」


 アイナも勇者はドラゴンを倒す存在として認識してたか。


「それに、特別な力をお持ちなのも本当ではありませんか。ギフト《魔除け》。相対する相手の力をそぐ力。これを前にすれば、ドラゴンと言えど赤子と同然、と!」

「あー……まあ、そうだな」


 そういや、そんな名前でごまかしてたんだったか。毒使いなんて物騒なギフト、国民は怖がるだろうってナミエル様に言われたっけ。


「と、世間話はこのくらいにしましょうか。今回メイゲル様に依頼したいのは、義賊の捕縛です」

「義賊って……どうしてまたそんな面倒そうなことを。騎士団員だろ。そっちじゃダメなのか?」

「無論私たちも動いています。ただ、調査に詰まってしまっている、というのが本音ですね。恥ずかしながら足取りを掴めていないのです」

「……待て。じゃあその義賊って、ここで活動してるのか?」

「はい? ええ、そうですよ。私を含めた様々な貴族の館を襲撃しているようです。私も1度被害にあってしまいまして……。それも不甲斐ないことに侵入に気づいたのは早朝、すでに事後だったのです」

「……なるほどなぁ」


 イゼが、伝手があるって言ってたよな、この前。確か久々にクエストを受けて帰ってきて、カレーを食った時。アイナの調査をする手伝いをしたいって言いだして……。


「分かった、その依頼受ける」

「本当ですか⁉ もちろん、報酬はご用意します! 私に出来ることでしたら、何でも!」


 なんでもって言ったな! と、いつもの俺なら飛びついてたかもしれないが。今回ばかりは俺側にも原因がある気がする。というか最悪、処罰の対象にされてしまう可能性も……。

 想像するのはやめにしよう。


「詳しいご相談はまた後日、ということで!」


 こいつ、さりげなくまた会う約束を結んできやがった。

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