表彰式
市役所に着いた俺たちは、人に案内されてホールの控室まで向かった。普段は受付のあるエントランスしか使わないので、何気に来るのは初めてだった。
「うぅ、結構緊張しますね」
「いや、何もしてないお前が緊張してもな……」
「そうでございます。何もしていない分際で緊張だなんて滑稽極まりないでございます」
「ま、肩の力を抜くといいんじゃないカナ。私たちはいいことをしたわけデ」
ホールの中からのざわめきは聞こえてきている。それなりの人が入っているらしい。子ドラゴンとはいえドラゴン。小さな役所からドラゴン討伐を果たした英雄が出れば、称えたくなる気持ちも分からないでもない。
聞けばニバールの領主やニバールに店舗を構える商人、その他多くの住人が参加しているらしい。100人くらいだろうか。
「そう言えば、レイアちゃんはどうしたんですか?」
「ん? そう言えば来てないな。連絡は行ってるはずだが……」
時間を間違えたのだろうか。レイアに限って遅刻はしないだろうし……あるとしたら集合時刻が間違って伝わっていたとかになると思う。それとも欠席か?
「イゼ様とアズリア様がご参加されないのは分かりきっていたことではございますが」
「だネ。……って、来たみたいだヨ」
ハトリールが言っているのは、向かってくる足音のことだろう。ドタドタと慌ただしい音が聞こえてくる。
「す、すみません! 遅れました……!」
やがて来たのは息を切らした様子のレイア。普段通りの装いで、特段変わった様子はないのだが、遅刻するのもそうだし、ここまで疲れた様子を見せるのは珍しい。
「どうしたんだよ、遅刻なんて珍しいな」
「す、すみません、メイゲルさん……ちょっと、準備に手間取ってしまって」
「準備って、何か必要なものがあったのか?」
「い、いえ、その……」
聞いてみてもレイアは苦笑いを浮かべて誤魔化すばかり。何か隠したいことでもあるのかと思っていると、マシロが得意げな笑みを浮かべて肩を叩いて来た。
「先輩は分かってませんねぇ。見たら分かるじゃないですか」
「見たらって……何か違うのか? 変わった様子は……」
「それを本気で言ってるなら先輩の観察眼はゴミですよ。ミジンコ以下です」
「ミジンコに失礼だろ」
「新たな角度の自虐ですね!?」
「別にミジンコはゴミより下じゃないだからな」
「ああそっちですか。それはそれでミジンコに対する熱い信頼は何なんですか?」
「さあ」
「さあって……」
マシロが呆れたような視線を向けてくるが、マシロと喋る時は頭の中を空っぽにすると決めているので俺も俺が何を言っているのか分からん。
「って、話を戻しますけど。レイアちゃんは髪をセットしてますし、薄っすらお化粧もしてます。公共の場に立つための支度をして来たんですね。慣れない感じが可愛いです!」
「ちょ、マ、マシロちゃん! 恥ずかしいから止めてよぉ……」
どうやらマシロの目はだたしかったようで、レイアは恥ずかしそうにもじもじしだした。
「ああ、そういうことか。まあレイアも女の子だもんな。それを言うならマシロこそちょっとは外見に気を使ったらどうなんだ?」
「私は素が美人ですからね。必要ないんですよ。それに、髪色と比べたら肌の色がどうしても地味になっちゃいますからね。ちょっと効果薄いんです」
「あの、僕女の子じゃ……」
「あー、まあマシロの髪色は独特だよな」
「聞いてもらえないぃ……」
レイアが落ち込んでいるように見える。もしかすると、俺が気付けてあげられなかったからかもしれない。今度からは些細な変化にも気付けるように気を配るようにしなくては。
「皆さん、そろそろお時間です。準備お願いします!」
「ん? ああ、了解。呼ばれたら出ればいいんだよな?」
「はい。まもなくですから、もう少々お待ちください」
なんて話をしていると出番らしい。係員が声をかけて来た。
目の前の幕の向こう側では、すでに演説のようなものが始まっている。俺たちの功績を説明してくれているのだろう。
一昔前ならよくあることと言えたが、今となっては分不相応な行事。
「さあ、気を引き締めていくとするか」




