表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/82

ニバールという街

「あれ、メイにゃんにゃ」

「ん? イゼじゃないか。仕事か?」

「んにゃ、クォにゃんに用にゃ」


 クォンに構ってもらっていると、イゼがやって来た。

 相変わらず真っ白な毛並みは綺麗に整っており、ずぼらそうな性格の割に几帳面なのが分かる。


「私にですか? イゼさんの担当は私じゃないですよ?」

「だから仕事じゃないにゃ。まったく、ちゃんと話を聞いておくにゃ」

「す、すみません……?」

「仕事じゃないなら何の用だ? 他にイゼがここに来る用なんてないだろ?」


 イゼと言えば仕事とご飯以外は寝ているような生活を送っている。

 ドラゴン討伐による報酬が確約されている今、イゼと役所とは無縁のものかと思ったが。


「役所じゃなくて、クォにゃんに用だって言ってるにゃ。メイにゃん、借りて良いかにゃ?」

「えぇ? 俺のクォンなんだけど」

「メ、メイゲルさんのものになった覚えはないです!」

「ちょっとでいいから貸して欲しいにゃ。ちゃんと丁重に扱うにゃ」

「わ、私は物じゃないです!」

「まあそう言うことなら……ちゃんと洗って返せよ?」

「分かったにゃ」

「2人ともふざけないでください! ちょっといくらなんでも酷いですよ!?」


 クォンがいよいよ泣き出しそうなのでこのくらいにしておこう。


「というわけでクォにゃん、ちょっと顔かすにゃ」

「……嫌です」

「今度の受付人評価アンケートで最高評価――」

「行きます!」

「――んにゃ、行くにゃ」

「それでいいのかよ……」


 これって所謂買収ではないだろうか。公務員としてどうかと思う。


 あと、受付人評価アンケートってなんだ。そんなものがあったのか。


「というかまたひとりになっちまった。どうすっかなぁ」


 呟きながら、俺は役所を後にした。


 この街にいる、関わりのある人間は全員忙しくしてしまった。

 2年間住みながらも、俺はなんだかんだニバールのことをあまり知らない。知人が少なければ、どこにどんなお店がるのかも知らなかった。

 だからふと、散歩してみようと思った。


 ニバールは、この国メリウスと隣国ミクアとの境界に位置する都市で、かつては防衛都市としてミクアとの戦争の要になっていたらしい。ただのその戦争も300年以上も昔の話。今では駐屯戦力はいなくなり、戦争の際に狩りつくされてしまったからか魔物もあまり出ない、平和な街だ。

 住民のほとんどは商人と技術者で構成されていて、食料や材料を輸入しつつ、商品を作り出すことで生活を成り立たせている人がほとんどだ。そのため商業都市としての需要が高く、ミクアからの商人も少なくない。

 だから俺は、今まであまり街を出歩くことは無かった。ミクアでは、そこそこ顔も広まっていた。見つかって、変な噂のひとつでもばらまかれたら面倒なので避けていた。


「あら、ミーアトリアちゃんとこのひとだよね?」

「ん?」


 果実屋の前。通り過ぎようとしたら、人の好さそうな女性に声をかけられた。店主、だろうか。店の中から笑顔を向けてくる。


「いつもミーアトリアちゃんにはお世話になってるよ。この前なんて、私が重くて敵わなかったリンゴの箱を運んでくれちゃって」

「え? は、はぁ……」

「よかったらこれ、もっとっとくれ。いつものお礼だよ」

「いや、俺は別に何も」

「いいからいいから。普段は戦闘職としてこの辺を守ってくれとるんだろう? グリフォン、だっけ? 魔物は詳しくないけど、凄い倒したらしいじゃないかい」

「それは……まあ、ミーアトリアのおかげだけどな」


 女性は、リンゴをいくつか袋に詰めて、俺に押し付けるように手渡してくる。

 勢いに負け、苦笑いながらに受け取ると、女性は笑って言った。


「それでも、この街を守ってくれてありがとう。ここらのみんな、アンタラに感謝してるんだよ」

「そ、それはその……よかった」


 どこかむず痒くて答えに詰まる。

 こんなことを言われたのは、久しぶりだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ