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詐欺

「そうですよ! 修理と言っても一日二日で終わるものじゃありません! それまでマシロたちにどこで寝泊まりしろって言うんですか!? それともなんですか、聖竜様の教えでは教徒でなければ教徒からの迫害を良しとしているんですか!?」

「そ、それは、その……っ!」


 マシロが、饒舌だった。


「しかもほら! 壁をぶち破った勢いでこっちの壁にまで穴が開いてしまったんですよ!? どうしてくれるんですか!? 建付けが悪いので大きな衝撃を与えると次またどこが崩れるのか分からないんです!」


 と、マシロはリビングと寝室を繋ぐ穴を指差しながらそう言った。

 って、おい。こいつさりげなく自分の罪も擦り付けようとしているぞ。


「へ? で、でも、玄関を壊したくらいでその壁が崩れるはずは……それに残骸は既に片付けられているみたいだし……」

「罪も認められないんですかそうですか!? それが聖竜様の教えなんですね!」

「いや、違っ……!」

「いえいえ、結構です。それが宗教上の方針だというのなら許してあげるのもマシロの器からこそです! マシロは多様性を尊重する人間ですので!」

「誤解よ! 聖竜様の教えは清く正しく、人々を正義に教え導く有り難いものなのよ! どうか思い直して!」


 涙目だった。最初は壁を壊してもなんともなさそうだったアズリアが、修道服着た女の子が泣きそうだった。傍から見れば、というより身内から見てもマシロは現在悪質なクレーマーでしかない。


「それでは、そうですね。私も理解の無い子どもではありません。お互いに損のない公平な解決策を模索しましょう。そうですね、シスターという立場上謝礼金と言うのは難しいでしょうし、実物交換でどうですか? こちらの提示するものを用意してもらえればそれでいいです!」

「あ、ありがとう、恩に着るわ! それで、何を用意すれば……?」

「えっと、確かあれが五グラムだから……金です! 純金です! 三十グラムください! そうすれば、ここにいる錬金術師のハトちゃんが壁を修復してくれます!」

「え、あっちも私の仕事ナノ?」


 聞いてないぞ、という顔を浮かべるハトリールの事情など気にすることなく、アズリアは希望を見出したような表情を浮かべていた。


「わ、分かったわ! 三十グラムでいいのね? すぐに用意するわ!」

「ゆっくりでも構いませんよ。そうですね、私たちが昼食を食べている間にお願いします」

「普通に無茶不利だろ、それ」

「いいえ、十分よ! 必ず戻って来るから! 司祭様にだけは言わないで!」


 それだけ言って登場と同様に慌ただしく去って行ったシスターを見送って、俺とハトは顔を見合わせた。


「なあハト、ちなみにこっちの壁を直すのなら金はどれくらい必要なんだ?」

「ん? そもそもあの小さい方の穴でも金を多めに見積もってたから、使っても十グラムじゃないカナ」

「今、金の相場っていくらくらいだ?」

「純金だと、一グラム一万ってところじゃナイ?」

「「……」」


 つまりマシロはその弁舌で壁を修復するだけでなく十五万円を獲得したってことか。あいつ、詐欺師に向いてるのではなうだろうか。

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