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最強の旅立ち

 そして翌朝。

 何事も迎えたことに安心しつつ、俺たちは準備を進める。


「よし、片付け完了。朝食も食った。あともう少しすればドラゴンは寝る時間だ。そうしたらレイアを先頭に洞窟の中に入る。後はハトリールの魔法で拘束して、各々の判断でボッコボコにするぞ!」

「適当過ぎない……?」


 アズリアが呆れ顔で何か言ってる。


「私だって教会の人間だからアンデット討伐とかに出向いたことがあるけど、そのときだってもっとちゃんと作戦練ってたわよ?」

「そういうのは何をすればいいか分からない素人のために組むんだよ。俺たちくらい慣れてる連中はある程度自由なほうが動きやすい。違うか?」

「いやまあ、あれやれこれやれって言われるのは癪だけどね? ……まあいいわ、取り合えず怪我をしたら私の所に来なさい。シスターハトリールの治癒魔法と違って、私の魔法に代償は必要ないから好きなだけ治せるわよ」

「それは嫌味カ? まあ、私たちの治癒魔法が不完全なのは認めるケド」

「別に嫌味ではないわよ。邪竜教の治癒魔法は代償が伴う代わりにどんな傷だって完全に治すことができる。でもその代償は、時には命すらも奪いかれない代物だからね。多用はできないでしょう?」

「乱用は避けるべきだナ」


 アズリアとハトリールは、以前であった時と比べると幾分穏やかな会話をしているようだった。まあ、ハトリールは普段通りなのでアズリアが譲歩してくれているという感じなのだろうか。

 実際、まだアズリアの表情はぎこちない。こいつらはどうしたら仲良くなれるんだろうか。


「ね、メイにゃん」

「ん? どうしたイゼ?」

「にゃーは何をすればいいにゃ?」

「いつも通り、敵を倒してくれればいい」

「分かったにゃ」


 相変わらずの童顔を無表情に仕立て上げ、しかしハトリールは違う繊細な美しさを持つイゼは寝ぼけ眼を擦りながら返事した。こいつ、ちゃんと起きてられるんだろうな?


「何はともあれ、そろそろ出発する。これからの戦いは長引くかもしれないし、きっと辛いものになる。最後に何か確認しておきたいことがあるやつはいるか?」


 周囲を見渡しながら聞いている。

 こういう時、真っ先に文句を言いそうなのはマシロなものだが、今回はだんまりだ……って、あいつよく見たら朝食の残り食ってやがる。この食い意地お化けめ。


 そんなことを考えていると、ゆっくりレイアの手が上がる。


「レイア? どうした?」

「いえ、その……僕、でいいんでしょうか」

「どういうことだ?」


 問い返され、少しだけ言い淀んだレイアは、弱気な表情のままで口にした。


「僕の力は中途半端で、ドラゴンの攻撃を完全に防げるようなものじゃありません。頼って欲しいとは、言いましたけど。僕なんかが皆の守る要で、いいのかなって……」


 ……もしかすると、まだこの前のことを引きずっているのかもしれない。だとすれば、その責任は取らないといけないな。

 数歩前に出て、俯くレイアの頭を見下ろす。


「メイゲルさん?」

「なあ、レイア」

「は、はい……っ!」

「レイアは俺のこと、好きか?」

「はい! ……え? ええっ!?」


 目を瞑って勢いよく返事をし、続いて頬を染めて目を見開いた。動揺を露にしてソワソワしだし、なんと言っていいのかも分からず口を開いたり閉じたり。そんな様子を微笑ましく思いながら、その独特な色の頭を撫でてやる。


「俺のことが好きなら、ちゃんと守ってくれよ。俺こう見えても頑丈じゃないからすぐに死んじまうかもしれないぞ」

「メイゲルさん……は、はい! 絶対、僕が守って見せます!」

「おう、頼んだぞ」


 言いながら撫でてやれば、レイアは嬉しそうに微笑んだ。


「ねえ、あの子って男なんでしょう?」

「そうだナ。でも、めいめいは女だと思ってるシ、レイレイも満更でもないと思うゾ」

「へー、世の中にはいろんな人がいるのね」

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