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プリースト

「突然のことで恐縮でございますが、どちら様でしょうか?」


 最初にその破天荒なシスターに声をかけたのは、こんな衝撃的な状況下でも表情を一切崩さなかったミーアトリアだった。


「ん? 私? 私はシスターアズリア。この街の聖竜教会で助祭として活動している者よ。あなたたちこそ、こんなところで何をしているの? ここは幽霊が出るって噂のある古小屋なの、今から調査をするところだから早く帰ったほうがいいわよ? 危ないし」


 あっけらかんと言い放ったこの女、アズリアとか言いやがったか。年としては俺より下っぽいな。十六、七くらいだろうか。あまりにその神聖な修道服が雰囲気に合っていない青短髪青目のそいつに、俺よりも先にマシロが声を上げた。


「あの! せっかく掃除したのに汚さないでくださいよ!? って言うか修復不可能ですよ、それは! 掃除云々じゃないじゃないですか!」

「掃除? ここの掃除をしていたの? それは素晴らしいわ。世のため人のためにと思ってやったことなのね。でも、ここは誰も使っていない古小屋よ? 夜な夜な声がするとか、そんな話も聞くくらいだし」

「そりゃ声だってしますよ! ここ人住んでますし! あと、掃除は私欲ですごめんなさい!」


 勢いよく言い切ったマシロは肩で息をしていた。マシロがこんなに声を張ったところを見たのは初めてだ。マシロは俺たち以外に対しては普段からおどおどしていたり他人に対して強くものを言うことが無いからな。

 それだけ苦労して掃除した家を汚されたことが許せなかったのだろうが、その情熱をもっと他の所に向けて欲しい。


「へ? 人が住んでるの? このぼろっぼろの家に?」

「悪かったな、住んでて。空き家だったみたいだし、一応役所に届け出は出してるんだが」

「それって本当? 嘘じゃない? いたずらじゃない、のよね?」

「嘘じゃない。何ならそのことについて書いて貰った紙を持ってくるか?」


 この古小屋は現在俺が正式に持ち主として役所に届け出が提出されており、承諾も貰っている。正真正銘の私有物で、決して俺たちが勝手に住み着いているわけではない。


 その事実を知ったアズリアはというと、先程までの能天気なアホずらはどこへやら。今度は顔を青くしてアホずらを浮かべていた。


「ってことは、もしかして私人様のお家の壁、ぶっ壊しちゃった?」

「ああ、そうなるな」

「えっと、ただで許してくれたりは……」

「出来るわけないだろ? 俺たちに毎晩クソ寒い中寝ろって言うのか?」


 身を縮めて怯えるように震え出したアズリアは、ますます旗色を悪くして後退った。


「ちなみに、ついさっき所属は確認したからお前がここで知らんぷりしても本部に問い合わせるからな」

「ひっ!? そ、それだけはご勘弁を! お、お金! は無いから……修理を手伝う! じゃなくて、手伝わせて、お願い!」

「いや、そんなことだけで許せと言われても、なあ?」


 涙目を浮かべながら頭を下げたアズリアに言いながらマシロの方へと視線を向けると、息を整えたらしいマシロが怪しい笑みを浮かべていた。

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