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大斧

「お、俺が悪かったよ嬢ちゃん……その大きさじゃあ、確かにこの砥石なんかすぐに壊れちまう……」

「そうですか? それは残念です」


 さして残念でも無さそうな表情でそういうと、漆黒の大斧を右手で器用に一回転させてから握る動作一つで消し去った。


「し、しかしあんな大きな代物をどこに? アイテム袋も、持っている様子はないしな……」


 アイテム袋と言うと、色々な道具を手のひらサイズの袋に仕舞えるというあの代物か。勇者時代に見たことがあったが、俺は元より荷物は少なくする主義なので活用したことは無かった。

 しかしそれはそれとしてあの大斧が入るほどの要領があるのだろうか? ポーションやたいまつなんかの小物しか入らないと記憶しているのだが。そもそも口を通らない気がする。


 ミーアトリアは冷や汗をかく親父の疑問に触れることも無く、店内をくまなく見渡した。


「ここに、先程の斧を研げそうなものはありますか?」

「あるにはあるが、それこそアダマンタイトを使ったその砥石だろうな。ただ、それも決して大きくはないし……ああ、それならこれはどうだ?」


 ミーアトリアは一瞬、親父が指差した砥石に目を向けたが、すぐに店の奥へと向かった親父へと戻した。


「この魔道具なら、値は張るし使える場所も限られちまうが、どんな代物でもその切れ味を上げられるぞ」


 親父は手のひらにぎりぎり収まらない程度の大きさの紫色の瓶を手に取った。


「ん? おい親父、それってミクアでは使用禁止になった魔道具だぞ」

「そうなのか? こんなに便利なのに、それまたどうして」

「その魔道具はフォークから何まで人殺しを出来る凶器になるからって言って使用を禁止したんだよ。こっちではなってないのか?」

「いんや、聞いたことはないな。しっかしそうか、確かに言われて見ればそんな使い方も出来るわけだよな……じゃあ、これはいらないか?」


 そう聞いてくる親父に、少し間を開けた後でミーアトリアを見てみる。

 色々俺で考えるよりも、ミーアトリアが欲しいと思うものを買ってやったほうがいいだろうしな。


「いえ、遠慮しておきます。私は自分の手で研ぐ時間が好きなのです」

「ほぇ~、嬢ちゃん若いのに粋な趣味をしているねぇ。話が合いそうだ。そういうことならまた来てくれ、出来る限り大きいのを用意しておくよ」

「ありがとうございます。行きましょうか、主様」

「ああ、そうだな」


 今回は収穫が無かったが……アダマンタイトの砥石か。


 ちらっと見えた値札には、金貨百五十枚の文字。

 過去の俺なら決して手出しが出来ないような物でもないが、今となっては手の出し辛い高級品だ。


 ふと、隣を歩くミーアトリアの顔を見下ろす。少し悲しそうに、いつもより視線が下がっている。ほんの些細な変化だけれど、普段から作り物のように微動だにしないミーアトリアを見ていると、逆に顕著に見えてくる。


 そろそろ、ミーアトリアと出会って三年が経つ、か。


 誕生日も分からないミーアトリアだが、出会った日くらい、記念日にしてやってもいいよな。今まで特に何も祝ってやれてなかったが、落ち着いてきた今ならそれくらい。

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