収穫
「よろしくお願いしますじゃ」
「うん、任せてくれていいヨ。私の魔法の腕は一線級だからネ」
「頼もしい限りじゃ」
農園の管理人さんに挨拶を済ませ、俺たちは一緒に農園へと踏み出した。
「先輩そっちに三匹行きました!」
「おう任せろ、って、マシロ後ろだ! 大きいのが行った!」
「わわっ!? ミーアトリアちゃん助けてください!」
「心底面倒ですが私も獲物を譲るつもりはありません」
「最後に狩るつもりですか!? マシロも一緒に屍になるんですか!?」
普段の鎧を無くしたマシロは、それでも剣一本で奮闘していた。ミーアトリアも慣れた様子で手斧を操っている。
さて、俺たちが農園で何を相手にしているかと言えば、収穫の時期には必ずと言っていいほど現れる農民の天敵、魔獣の狸狐族である。
「狸狐族は地元ではもっと細かく分けられていました! 狸、狐、イタチ、ハクビシン、アライグマなどなどです! けれど見分けが付かないし名前が可愛いので狸狐 《りこ》族って呼び方の方が好きです!」
「さてはお前余裕あるだろ!」
狸狐族は全長一メートルに届かない小型の魔獣で、その姿形はバラバラだが総じて毛が多く耳や尻尾がある。爪が鋭い固体、牙が鋭い固体など特徴は様々だが例年兎や鳥が丸のみにされるという事例も確認できるほど凶暴だ。
また、雑食であるためか収穫の時期になると決まって農園に現れ毎度毎度農民を困らせるのだ。
「クソッ、いつにも増して数が多いな!」
「今年は大根の出来がいいからのぉ。まだちと時期は早いがおでんにして食べたいのぉ」
「その前に生でかぶりつかれるからさっさと収穫を終わらせろ!」
「ふぉっふぉっふぉっ」
笑い事じゃねぇよ。
狸狐族は人間に対して牙を剥くことはあまりないが、こと食が絡むとその凶悪性を向けて来る。噛みつかれたり引っ掛かれたりしたら重症になりかねないし、農園を害獣から守る依頼、なんて名前に騙されて死に至る人も少なくない。
しかし、そんな狸狐族を相手にするのは基本的にほんの数日間だけ。しかも日中に限られる。
では、どうして狸狐族がわざわざこちらが準備した日の準備した時間に現れてくれるかと言えば、農園を覆う結界に理由がある。
「普段は結界で中に入れず、目の前に食べ物があるのにお預けにされているのは分かります! でも、だからってその鬱憤をマシロにぶつけないでください!」
この農園を覆う結界は、すべての動物の侵入を阻害する効果を持っている。
しかし、そのすべての動物には人間も含まれ、収穫する際には解かなければならないのだ。そして収穫の為に結界が解かれた瞬間狸狐族は群がって来るし、俺たちもそれを対処する必要が出てくるのだ。
「人間だけでも入れるような結界は作れないのかよ!」
「コスパを考えたら厳しいだろうネ。結界は条件付けをすればするほど形成が困難にナル。特に動物、なんて分類で括って侵入を阻害するだけでも大変なのに人間だけは入れるなんて条件を付けたしたら詰まるところお金がかかりすぎるんだヨ」
「世知辛い話だな!」
ハトリールの冷静な解説に躍起になりながら、そのどうしようもない怒りを狸狐族へとぶつけるのだった。
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