勇者誕生
俺が勇者と呼ばれるようになったきっかけの一つは、間違いなく王城内で行われた武闘大会だろう。
九つになってすぐのこと。王城内では毎年恒例の武闘大会が開かれた。そうは言っても貴族や騎士の生まれの者同士が行うお遊びのような物。巷で行われているような血みどろの決闘ではなく、神聖な御前試合と言った方が正しい内容だった。
王族が楽しめるようにより綺麗でいて華やかな武芸を披露した者が勝つ、そんな大会。
無論、俺にはそれまでまったくと言っていいほど縁が無かったものなのだが。
「ナミエル様が、俺にも出場しろとしつこくてな。俺は何度も辞退しようと試みたが、何時まで経っても参加者一覧から俺の名前が消えることは無かった」
「珍しい国家権力の横暴の仕方だナ」
「まあな。あんまり何を考えているのか分からないお方だった。自分の助けた騎士見習いが頑張ってくれれば、王族としての株も上がるってものだ、そんな感じだったのかもしれない。王城に住まわせてもらうための言い訳だった騎士見習い、の見習いの成果もあって最低限の武芸を獲得していた俺は、仕方なく参加することにした。数年の努力の発表会くらいの気分だったな」
「それで、優勝しちゃったわけダ」
「まあな」
俺のギフトが発現したのはどうやら九つの時からだったらしい。
「ギフトって言うのは人によって授かれる年齢がまばらだ。確か、ハトリールは生まれた時から持ってたんだよな?」
「そうだヨ。ミーアトリアは、二年前だったよネ?」
「ああ。だから十一歳ってことになるな。で、それは前触れもなければ知らせもない。授かったことに気付かなかった俺は、その大会でどうして自分が優勝できたのか、本当に意味が分からなかったよ」
毒使い。俺のギフトは後にそう呼ばれるようになっていた。
「対戦相手がいつの間にか苦しみに悶え始め、挙句の果てにはめいめいに恐怖して降参する、ネ。まるでめいめいが化け物かのような反応だよネ」
「ああ。当時はナミエル様のお気に入りあるところの俺に気を使ってくれているのかとかも考えていたが、様子がおかしくてな。どうにも演技には見えなかったんだよ」
「それで後で調べてみたところ、めいめいのギフトだったことが分かったわけダ」
「そうなるな」
ギフトってのは自分の意思で発動させることも出来るが、それとは別に無意識で発動してしまう場合も少なくない。
ミーアトリアの持つギフト《安全体質》は代表的な無意識で発動するギフトだ。ハトリールの持つギフト《崇高邪眼》は任意で発動するものだったはずだ。
「で、そのギフトの能力を買われた俺は正式に騎士団に所属することになり、野党討伐に参加した際運よく活躍し、それを買われて更なる昇格。王女近衛騎士の一員に。そして王女が十歳の時のパーティーで起こった大規模テロを防いだことを受けて、俺は勇者に指名された。聖竜教会から直々にな」
「それは流石に知ってるヨ。勇者は代々、あそこが決めることになってるからネ。確か、めいめい以前、最後に国内で勇者が出たのはは二百年以上も昔だったかナ。当時は結構騒ぎになってたよ」
ハトリールはおもむろに立ち上がり、魔道具コレクションの棚へと向かった。
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