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18 魔道都市カラカラ 08

確かにメルル様を精霊王の元へ連れ帰ればナナシの目的は遂げられる。だがその為にすべての物をなぎ倒してもいいのか


首都ザイレーンでモエナはナナシの事を「一緒に戦った仲間」と言った。黒騎士さんと別れ、ロンと出会った。すでにナナシにとっては神龍様もロンも「一緒に戦った仲間」だ


ではカラカラの防衛隊員はナナシの仲間なのか、ハンター達は、街の住民は、彼らはナナシにとって仲間ではない。


常闇の谷でナナシは神龍様に言った「僕は魔族じゃない」と、今カラカラを襲っている魔王軍のように目的の為にただ奪いたくはないのだ


考え事をしながら補給物資を東外壁の上へ運んでいたナナシはロンと同じくらいの年の子供と階段でぶつかる


「気を付けろよ」


鍛冶見習いなのだろうドワーフの男の子に睨まれながらすれ違う

ナナシはそうだな。あんな子供もカラカラにはいる


「神龍様、穏便に中央区画へ入る別の方法を考えます」



「あれはいったい何なのだ」


外街区画の司令塔内は西から迫る砂の波に動揺が広がっていた。最初それは大ミミズと思われていた。しかしそれがカラカラに近付くに連れ、横三キロにも及ぶ砂の波であることが判る。砂の波が今カラカラの二キロ程に迫っていた


アルフォンスが叫ぶ

「西に面したすべての区画に避難指示を出せ。避難できない者はできるだけ頑丈な建物の中へ避難しろ」


総隊長が【ヤヌスの槍】の使用を外壁防衛隊へ指示している


カラカラの街全体へ緊急事態の鐘が鳴り響く。西に面した地区からは【砂津波】が誰からもはっきりと見える

全ての人々が逃げる。防衛隊も鍛冶職人もハンターも男も女も大人も子供も少しでも【砂津波】の届かない高い所へ



ロンが魔法を放つ。それは無演唱、ノーアクション、複数同時発動


頭上から稲妻の槍が多数コッカトリスと蛇女キメラに突き刺さる。瞬時に感電した彼らに爆裂魔法が追撃する。コッカトリスと蛇女キメラが突然膨らみ体内から爆発して跡形もなく二体を吹き飛ばす


ロンがポゥの方に振り向いた時、彼は意識を失い倒れている人族の横に立っていた


「苦労して封印を解いた割にはあっさり敗北した吸血鬼君をこれでは馬鹿にできませんね」


ポゥは透明な腕を握ったり広げたりしながら意識のない人族を見下ろす


「・・・・・」


合成獣(キメラ)との戦いで上半身の服がボロボロになり、その姿をはっきりと確認されたロンに向かってポゥは興味なさげに忠告する


「今回は引かせてもらいますが・・・・魔族は人族の側には立てませんよ」


ポゥが右手をジャイアント(ビックサンドワーム)の最奥に向けると肉壁に外の風景が映し出される。それは地上へ出たジャイアントがオアシスの町ウルウルへ突っ込んでいく映像だった


「役目は果たさせてもらいます」


ポゥは影が消えるように徐々に透明になり姿を消していく


ロンは別に人族を助けたいと思っている訳ではない。飛空艇でもいろいろなものに興味を持ち、手を出しては船員や乗客に怒られた。大ミミズの中で囚われていた人族を興味本位で引き揚げたに過ぎない

しかし、ナナシとは大ミミズをぶっ飛ばすと話をしている


ロンは右腕を思いきり後ろに引いてから拳に【言霊】(ことだま)を乗せてポゥが立っていた魔法陣に叩きつける。それはナナシのメガインパクト(四連撃)に匹敵するほどの威力があった


一瞬で肉壁に十メートルほどの大穴が開き、更に穴が大きく広がっていく


「もういっぱぁーーーーつ」


今度はロンの左腕がジャイアントの肉壁に叩きつけられる


右に移動しながら続け様に右左の連続ラッシュで拳が打ち込まれる


体の真ん中辺りから二つに千切れたジャイアントはそれでも全く痛みを感じていないかのようにウルウルへ向かって進んでいく


ロンが人族の男を抱えて、開いた大穴からジャイアントの外へ飛び出す。その時ジャイアントはウルウルまで一キロほどの距離に迫っていた


人族の男を砂漠に放り投げ、ジャイアントの体の上を先頭へ向かって走るロン


大規模破壊魔法を使えばウルウルにも被害が及ぶ。ロンは両手をジャイアントに着けて強く推し込む。絶対凍結魔法【コキュートス】


ロンの手が触れた場所から急速にジャイアントが凍り付き始め、やがてジャイアントは動かなくなる。ロンは凍り付いたジャイアントに拳を叩きこむとジャイアントの体にひびが入り始めやがて粉々に砕けていく。千切れたジャイアントの体半分がうねうねと動き始め、地中へと姿を消す


ロンは砂漠に尻餅をつき、その様子を何するでもなく見ていた


「流石に疲れたなぁ」と空を見上げた。時刻は昼を過ぎて初冬の太陽は西へ西へと傾いて行く



ナナシは東側へ避難してくる住民の波に呑まれていた


小隊長からは高い所へ誘導するようにとの指示で避難民を各地区にある塔へ、高い建物へ、上へ上へと行くように誘導している


『見ろ、内壁の門が解放されている。避難民に紛れて中央区画まで行けるぞ』


内壁の門が開いているのを見て、慌てて避難民を内壁の中に誘導しながら自身も第三区画内へ移動する。このまま中央区画に近づけば神龍様がメルル様の居場所を探し当てられるかもしれない


第三区画の内壁上から二十メートルほどの長いランス状の槍が立ち上がる


握りには多様な魔文字が描かれ、穂先はオリハルコンで出来ている【ヤヌスの槍】と呼ばれるその魔槍は触れるものすべてを無に帰す


外壁の上から爆裂弾が多数発射されるが砂の中に呑まれて爆発さえしない


【聖者の鏡】の光も砂に当たるだけで効果は認められない


【ヤヌスの槍】が高く発射され【砂津波】に刺さる。【ヤヌスの槍】が刺さった場所を中心に砂の渦ができどんどん砂が吸い込まれていく


外壁の上から防衛隊の歓声が上がるが横幅三キロにも及ぶ【砂津波】すべてを一本の槍で吸い込むことなどできはしない。槍が刺さった場所のみ津波は消えたが他はカラカラの街半分を包み込むように外壁にぶつかる。外壁に当たる寸前津波は更に一段高くなり、外壁の高ささえも超える


ドドドド・・・ドド・・・ドドドドド・・・・・・・・


砂の中に大量の爆弾岩や岩石の塊が隠されている


外壁全体を覆う多重結界が【砂津波】を受けて大きく揺らぎ、やがて小さなひびが入り始める。人々はそれを見て更にパニックなって第二区画へ殺到する


「結界の魔力供給をもっと増やせ」とゴルドバンが叫び


「第二区画と第三区画の門は開放するな。住民はすべて東側へ誘導しろ」とオロスが魔道具【電信】に怒鳴る


「内壁の結界を強化しろ。ここで砂を停めろ」とオルドバンが指示を出す


とうとう多重結界が限界を迎え外壁の結界を乗り越えて砂が外街地区へ雪崩れ込む





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