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16 魔道都市カラカラ 06

だが評議会は緊張が続いていた。魔道具【電信】でウルウルとは連絡が取れているが四つ星ハンターを乗せた飛空艇は二日前にウルウルを出発しているにも関わらず、まだカラカラには到着していない


そんな中、ナナシは臨時防衛隊員として巡回警備を続けていた


「神龍様、メルル様は見つかりましたか」


『いや判らぬ。何かの結界に守られているかもしれないな。もっと近づくほかあるまい』


「そうなるとやっぱり中央区画ですか」


ナナシは、可能性は低くてもカラカラに自分の親族や一族がいるかもしれないと思えば、むざむざと魔王軍に街を蹂躙される事は受け入れられない


全ての命を守る事はできなくても手の届く命は守ろうと思っている


夕暮れ時カラカラ全体に緊急事態を告げる鐘が鳴り響く


ナナシは持ち場に戻る為に東外壁へ走る


魔王軍の幽霊船が南から砂漠の海を悠々と泳ぐようにカラカラへ進んでくる。それに従うように砂の中から多数の魔物が姿を現す。砂漠ムカデやサンドマンなどの砂漠の魔物たち


十数騎の戦闘飛空艇がカラカラの城壁から飛び立ち、魔物たちと戦いになる


幽霊船から城壁に向けて砲撃が始まる


「南のことは南の奴らに任せろ。俺たちは東外壁をしっかり守るぞ」


小隊長が大声で防衛隊員に呼び掛ける


アルフォンスは外街区画にある塔の最上階で戦いの様子を双眼鏡で見ていた


空飛ぶ魔物も多数いるがカラカラの結界に阻まれて街中に入る事はできない。外壁からの大弓や速射弓を受けて粉々になっている


大ミミズ(ビックサンドワーム)が姿を現したら【ヤヌスの槍】を使用する。一発勝負だ。十分引き付けてから打て

もうすぐ日が暮れる【聖者の鏡】は使えなくなるぞ。その場合は【太陽灯】や【太陽銃】で応戦する」


防衛総隊長は戦いが始まったら後は現場に任せるタイプで椅子に座ってじっと状況を見つめていた


「奴らは魔王軍と名乗るくらいの知恵は持っています。前回は幽霊船を囮にして大ミミズの奇襲だ。今回は正攻法で攻めてくる」


「狙いはやはり西外壁か」


「空からの攻撃が薄い、魔物ばかりで魔族がいない、魔法攻撃もない

どれも中途半端で本気でカラカラを抜くには物足りません」


防衛総隊長はしばらく考えて

「だからと言って穴に籠っている我々を誘っているようにも思えない。何とももどかしいですね」


幽霊船の帆先で魔軍参謀ダン・ガルーは上空から爆裂弾を落とす飛空艇を見上げながら、【神龍の三条件】の事を考えていた


前魔王と神龍族の長は百年前の人魔戦争で個人的ではあるが盟友関係を結んだ


神龍族のごたごたで神龍が直接戦いに参戦する事はなかったが魔王軍の大きな力になったのは確かだ。特に聖域の奴らは人族と距離を取り、亜人と言われる者たちは二つの勢力に分裂して戦った


今回も神龍族と同盟を結ぶべく魔王軍から使者を出したが色よい返事は返ってこなかった。その後ポゥ自らが皇龍王に会いに行き【三つの条件】を飲まされる


一つ、現魔王が【魔王の椅子】の試練を乗り越える事

二つ、神龍族は直接参戦しない事

三つ、黒龍王を探し出す事


その三つ条件を満たしたなら神龍族は魔王軍に力を貸すという


【魔王の椅子】がカラカラのダーククリスタルだと判明してから、まずは一つ目の条件を満たす為にカラカラ攻めを始めたが・・・


二つ目の条件はどういう意味だ。神龍族として魔王軍の側に立ってくれれば、戦いに参戦しなくても心強い存在にはなる。逆に介入され過ぎたら皇龍王の下に魔王様が立たされることになりかねない。魔王軍としては悪くない条件だ


三つ目の条件は居場所を見つけるだけでいいという。各地に魔王軍が進軍すれば自ずと判明する事だ。それほど難しい話ではない


「まぁ考え過ぎは良くないか。まずは【魔王の椅子】を手に入れることだ」


ダン・ガルーは西の空を見上げながら呟く


砂漠の砂の中から新たな魔物が現れ、カラカラの西外壁を目指して進軍を始める


それは砂男(サンドマン)岩男(ロックマン)


彼らが西外壁まで五十メートルほどに近づくと数体の砂男がさらさらと寄り集まり投降機の形に姿を変える。岩男が砂の投降機に爆弾岩をセットして打ち出す


打ち出された爆弾岩が次々と西外壁にぶつかり爆発を起こす


上空から真直ぐに骨鷲が急降下してきて爪に握られた火炎弾をカラカラの街に次々に落としていく。カラカラの外壁から魔投槍が多数投げられ外壁に取り付こうとする魔物たちを粉砕していく。日は西に沈み、夜が訪れ魔王軍の攻撃はますます激しさを増していく。



「グォ」

王級吸血鬼が真っ黒な液体を口から吐き出す


「中々粘ったがここまでだな」


ロンがジャイアントの肉壁に王級吸血鬼を蹴り入れる

吸血鬼は肉壁から分泌される粘液に捕らえられて身動きが取れなくなる


「ばかな。この私が手も足もでないなぞ。ありえん、ありえないぞ」


「魔界では王級なんてゴロゴロしているからな。ましてアンデットの部類に入る吸血鬼が俺に敵う訳がない」


王級吸血鬼が肉壁の中に沈んでいく


ロンは両手をパンパンと叩き、手に着いた埃でも掃うように吸血鬼が吐いた毒液を落とす


「さてと、せっかくここまで来たんだ。大ミミズをぶっ倒す前に迷宮最奥を冒険していくか」


ロンがちらりと吸血鬼に生き血を吸われた人族の女を見る


その時肉壁の中できらりと光る物がロンの目に入る


ロンがそれに近づいて確認すると人族の男が剣を持ったままピクピクと痙攣(けいれん)している


ロンは腕を突っ込み強引に肉壁の中の人族の男を引き釣り出す。粘液でべとべとの男を手に持ったままロンは独り言を言う


「兄貴、これどうしようか」



「なんだ、お前さんはハンターじゃないのかい」


「はい、港町オスカーで船の護衛をしていました」


ナナシは顔見知りになった食堂のおばさんとお気軽話をしながら、臨時防衛隊の休憩時間を過ごしていた


ここにはナナシ達とは別に臨時招集されたハンター達も多数食事をしている。もちろん外壁の外では魔王軍の攻撃が終わることなく続いている


「この調子なら奴ら一晩中攻めてくるつもりだな」


「魔王軍って余程暴れ回りたいらしいな」


食堂のあちらこちらでハンター達も気軽に雑談をしている。西外街の壁は破壊されたが修復は進んでいるし、ここは魔道都市カラカラだ。この程度の攻撃ではカラカラの結界はビクともしない事を誰もが知っていた


魔王軍の攻撃は夜どうし続いたがカラカラの結界を抜くことはできなかった


日が昇ると共に魔物たちは砂の中へ消え、幽霊船はカラカラの南、二キロほどの砂山で動きを停める


アルフォンスは外街区画にある塔の最上階から双眼鏡で幽霊船を見ていた


「ここからでは【聖者の鏡】の光も幽霊船までは届かない。絶妙な距離を取るな」


「如何にも攻めてこいと誘っていますな」


総隊長がにやりと笑う


「おそらく砂の中は魔物で満員でしょうし、砂山の向こうにも何か隠れているかもしれませんね」


「やつらカラカラを、カラカラの魔道具をなめているのか」


アルフォンスが険しい顔で幽霊船をにらみつける


「打って出ますか。それともハンター共に任せますか」


「ここは魔動兵を使う。オルドバンに要請を出せ。ハンターはその後だ」


外街南地区から中形飛空艇が三隻、幽霊船に向かって飛び立つ


積み荷は魔動兵が各船に六体ずつ計十八体載せられている


外街東地区に百人ほどのハンターが集まってくる


全員が三つ星以上、中には四つ星パーティもいる


彼らは戦況によってはカラカラの外へいつでも飛び出せるようにここで待機するのだ


「本当に評議会の奴ら約束したのか」


「ああ、間違いねぇ。戦功一番のハンターには特級魔道具を与えるとよ」


「浮かれているんじゃねえぞ。それだけこの戦いは厳しいってぇことだ。死んじまったら意味がねぇぞ」


物資搬入に狩りだされたナナシ達はハンター達の会話を聞いて自分たちも手柄を立てて強力な魔道具を手に入れようと考える者が何人も現れる


「神龍様、カラカラの領主と取引できませんかね。大ミミズを倒す代わりに精霊王の妹さんを返してくれるようにと」


『カラカラには大ミミズを倒す手段があるのだろう。交渉にはそうそう応じないぞ。それに我々を魔族扱いされる可能性もある

もし取引の可能性があるとしたらカラカラが追い詰められた時だろうな』


中形飛空艇が幽霊船に五百メートルほどに近づくと次々に魔動兵を砂漠に落としていく


それは三メートルほどの特殊金属(アダマンタイト)製の丸い塊


魔動兵は落下と同時に回転を始め、砂の上を転がって思い思いに幽霊船に迫る


砂の中から砂漠ムカデが魔動兵に襲い掛かるが丸い塊からノコギリの刃のようなものが出て砂漠ムカデを切り刻む


幽霊船がゆっくりと移動を始め、魔動兵がそれを追いかける


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