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13 魔道都市カラカラ 03

中肉中背、見た目は五十代のナイスミドルに見える。ダボダボの海賊服を着て両手を上げて敵意がないとアピールしている


『こいつ影がないぞ。ゴースト系のアンデットだ』


ナナシが黒龍剣を抜く。ロンが拳を握り締める


「そんなに警戒しなくても大丈夫ですよ。魂寄こせなんて言いませんから」


「あなた、何者(だれ)ですか」


魔族の男は一瞬きょとんと「俺様を知らないのか」という顔をしてから


「ああ、自己紹介ですね。私は魔王軍のダン・ガルー。それであなた方はどちら様ですか。普通の人族には見えませんが」


ロンが「俺は魔界王ハ・・」ナナシに慌てて止められる。魔王軍の幹部クラスだ。下手な事を言ったら後々どんな禍になって帰ってくるか


「どうやら自己紹介はしてもらえないみたいですね。ならばこれから起こる事を黙って見ていてくださいね」


ダン・ガルーがそう言うと彼の立っている足元の砂が盛り上がり始める


ナナシとロンはいち早く空中へ飛び上がる


砂の中から一本の船のマストが現れ、二本になり三本になる。さらにその下からボロボロの木の船が姿を現す。ダン・ガルーは砂の中から現れた幽霊船の先端に立ち。最後部で舵を握るゾンビ船長に声をかける


「船長、では始めようか」


ボロボロの幽霊船は砂の海を悠々と走りながら右舷をカラカラに向けている


その側板が開かれ三門の大砲が顔を出すと、ダン・ガルーの合図でカラカラの城壁に向けて大砲が一斉射撃を始める


カラカラ城壁の兵士が慌てて警報を鳴らす


幽霊船から打ち出された大砲の球は城壁に当たって爆発するが大きな被害は与えられない


「予想通り何らかの結界か魔法障壁がなされているな。まあこちらは派手に動いて注意を引けばいいからな」


飛空艇が四隻、迎撃の為に城壁から飛び出してくる


「兄貴、今のうちに街に潜り混みましょう」


「空を飛んでか。返って目立つ、今は様子を見るぞ」


二人はカラカラから見つからないように地上に降りる


アルフォンスは代表者会議を終えて外街区画へ戻る為に内壁門を超えた所で鳴り響く警告音を耳にすると彼は全速力で外街区画の塔本部へ走り込み、状況把握を行うと同時に全区画へ警戒情報を流す


攻撃して来ているのが一隻のボロボロの魔道船のみで外壁に損害はなし、迎撃に四隻の戦闘用飛空艇を発進させている。魔族かどうかは不明


「どう思う。総隊長」


アルフォンスは塔本部から最前線の外壁まで駆け上がり防衛総隊長に尋ねる


「今の所は偵察、様子見と言ったところでしょうか。どこかの国とか犯罪組織ではなく魔族と思われます」


「どうしてだ」


隊長が無言で双眼鏡をアルフォンスに手渡す


アルフォンスが双眼鏡で幽霊船の甲板で船を操るアンデットを確認する


「なるほどなぁ。だとしたら魔族が偵察なんてするだろうか」


攻めて来た魔族の船は戦闘用飛空艇に追われてガラガラへの攻撃を止め、街の周囲を逃げ回っている。城壁からも投降機による攻撃が始まったが幽霊船がカラカラの外壁から距離を取った為に爆裂玉は船に当たる事はなく砂の上に落ちて爆発する


「船長、そろそろ潮時だ。カラカラの東側へ回り込んでくれ」


ダン・ガルーの言葉にゾンビ船長は無言で頷く


その時、幽霊船とは正反対側、ナナシ達が距離を取っているカラカラの西側外壁近くの砂の中から超巨大な大ミミズ(ビックサンドワーム)が姿を現わす


大ミミズの口の大きさは二十メートルを越え、何処までも何処までも真直ぐに真上に伸びていく。カラカラの住民も兵士も男も女も大人も子供も終わりがないほどに伸びる大ミミズの異様に棒立ちになって見上げている


やがて高さ五十メートルを越える塔のように伸び切った大ミミズがカラカラの西外壁へ倒れ始める


「さあ、ショータイムの始まりだ」


ダン・ガルーがゾンビ船長に船を西の外壁に回すように指示を出す


ナナシとロンはサンドワームが現れたのと同時にカラカラの外壁に向かって走り出していた


ズゥズズゥズゥーーーーズドォーーーーン


超巨大なサンドワームが西外壁へ倒れ込む。その圧倒的な重量は幾重にも張られた多重結界を打ち破り外壁を縦に半分ほど破壊して止まる


周辺に舞い上がった土煙が砂嵐のように吹き荒れる。外街区画の住民が凄まじい揺れに立っている事が出来ず、皆倒れ込む。破壊された瓦礫が頭上に降ってくる。多くの住民は恐慌状態になり第三区画へ避難しようと外街と第三区を隔てる壁門へ我先にと殺到する


サンドワームがうねうねと体をよじらせ周囲の建物や城壁を更に破壊する


状況を見ていたアルフォンスは呆然とする防衛隊長に住民避難を最優先とし、外街を焼き尽くしてでもサンドワームをカラカラの外へ押し返すことを命ずる


第三区画の内壁上から爆裂弾が投降されるが超巨大なサンドワームには効いていない


「早い、早いぞ。まだ住民避難が終わっていない」


アルフォンスがこぶしを握り締めて誰にでもなく第三区画の内壁を睨みながらつぶやく


ナナシとロンは舞い上がった砂煙に紛れて外壁を飛び越える

外門の中は逃げ惑う人々で大混乱している


「ロン、あの大ミミズを何とかするぞ」


「はい。ぶっ倒しましょう」


『デカ過ぎて【空渦】で吸い込むのは無理だ。【次元刀】を使ったら街ごと崩壊するぞ』


ナナシは巨大な黒龍爪を大ミミズに放つが、肉に食い込むだけで切断できない。傷口からは体液さえ噴き出さず見る見るふさがっていく


暴れる大ミミズに押しつぶされ、崩壊する建物の下敷きになり、多くの人々が犠牲になっていく

ナナシが【空渦】をビックサンドワームの頭部と思われる部分に放つ。胴体の一部が引きちぎられて吸い込まれていく。ロンが傷ついた胴体に稲妻の槍を連続で打ち込む

大ミミズは傷ついてはいるが苦しんでいるようには思えない


「なんて鈍感野郎なんだ」


大ミミズが大きく首を振りながら二十メートルを越える大口を開けると中から数百、数千の多種多様な魔物が吐き出され外街区画や第三区画の中へ落ちて散らばり、無差別に人々を襲い始める


カラカラの街の防衛隊が応戦しようとするが多くの避難民がいてうまく対応しきれない


第三区画の内壁から聖水が多数放水され始まる。聖水を浴びた魔物たちが途端に煙を出して苦しみ始める。外壁から大ミミズに光の線が伸びる。それまでどんな攻撃にも反応しなかった大ミミズが突然苦しみ始める


光の線は徐々に増えていき取り囲むようにカラカラの外へ大ミミズを誘導する


『小僧、奴の口の中へ飛び込め』


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