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10 聖域への道 3

瘴気が薄まりつつある洞窟と盗掘者たちのテントが放置されたままの広場に三十を超えるワイバーンの群れが降り立つ


「第四部隊は引き続き上空に待機、第二部隊は瘴気の穴と盗掘跡を確認しろ」


アルバーナ王国の竜騎士長が大声で指示を出す

龍騎士長の傍に立つ連絡係の兵士が手旗信号で上空の部隊に伝達していく


「ゾロメ部隊長、魔物暴走の跡は確かに見受けられるが、奴らはいったい何処へ消えたのだ」

騎士長が地面に残る多数の魔物の足跡を見つめながらゾロメに尋ねる


「騎士長殿、今第三部隊が森の中を追跡中です。遠からず奴らの行く先は判明するものと思われます」


騎士長は難しい顔を更に厳しい顔にして

「願わくはアルバーナ王国以外を目指してほしいものだ」


その後、竜騎士団の広範囲な捜索にかかわらず、大規模な魔法戦の跡が発見されたのみでアンデット系の魔物の行方は確認できず、大量の【爆弾石】の箱が押収されるのみに終わる


捕らえた商人風の盗掘責任者もアルバーナの牢で不審死を遂げ、ゴーランド帝国の完全否定によって真相は迷宮入りしてしまう



何もない空間から白い魔法陣が浮き上がるように現れる。魔法陣の外円部から光の柱が立ち上がり中からナナシとロンが現れる


「ここが聖域の入り口」


二人が周囲を見渡すが草原が広がっているだけで遠くには山脈が見えているが街らしい建物も道さえも見えない


『あまり離れるなよ。空間偽装がされている。突然敵が目の前に・・』


突然大きな毛むくじゃらな腕が目の前に現れナナシとロンを横殴りにする


ロンの体が霧のようになり大きな腕がすり抜ける。ナナシは二十メートル以上吹き飛ばされるが殴り飛ばされる前に黒騎士の鎧を装着していたのでダメージはない


腕に続いて十メートルを超える巨大な白猿が現れ雄叫びを上げる


『聖獣だ。やはりここが【聖域】の入り口で間違いない』


ロンが空中に浮き上り白猿の聖獣に向かって魔法攻撃を・・・する前に突然現れた巨馬によって蹴り飛ばされる


その馬は炎をまとい二本の鹿のような角を生やし、顔には長い髭が生えていた


聖獣麒麟が空を走り吹き飛ばされたロンに迫る


ナナシは起き上がり聖獣麒麟に大声で話し掛ける


「戦いに来たのではない。話を聞いてくれ」


巨大な白猿が大地を駆け再びナナシに殴り掛かる


ガシーーーン


ナナシは二対四枚の黒龍翼を展開し右腕一本で巨猿のパンチを受け止める


黒龍尾が伸びて巨猿の顔を横殴りに掃う


『お返しだ。【聖域】に押し入るぞ』


「いやいや押し入りませんよ。神龍様」


ロンがナナシの元に戻ってくる


「兄貴、あの馬、家で飼ってもいいか」


駄目だぞ鬼っ子、第一お前家なんて持ってないだろう


ナナシはもう一度大声で空中の麒麟に呼び掛ける


「戦いに来たのではありません。【真実の大鏡】を使用する許可をいただきたくてお願いに来たのです」


麒麟が聞いたこともない声で鳴く


雲もないのに轟音と共に(いかずち)が複数ナナシ達に降り注ぐ


ロンの腕輪が雷を弾く。ロンが着けている封印輪(タリスマンリング)はロンの力を押さえる為のものではなく、敵の魔法攻撃を無効にする魔道具だった。冥界妃は何処までも親馬鹿である


黒騎士の鎧も雷を浴びても全く平気だった


『小僧、【次元刀】で聖域の結界を断ち切れ』


「そんなことしたら益々怒らしてしまいますよ」


『構わん、あの石頭(せいれいおう)はそれくらいせねば話もできぬ』


ナナシと黒龍王の会話が聞こえたのか、麒麟が地上に降りてくる。その後ろに巨猿が控える


『神龍族の爺がいるとはな、龍域を追い出されたと聞いていたが貴様の取り成しなど我はせぬぞ』


『誰が貴様などに頭を下げて願いなどするものか。願いがあるのはここにいる小僧だ』


『下賤な生き物の願いなどいちいち聞く気にはならぬわ。ましてや強欲で小狡い人族などの願いなぞ』


「あなたが精霊王様ですか。どうか【真実の大鏡】を使わせてください。お願いします」


『・・・・・』


『あれは精霊王ではない。聖獣麒麟の姿を借りて話しているだけだ。常闇の谷で遭遇した木霊(こだま)みたいな者よ』



長い沈黙の後、精霊王が唐突に話し始める


『我が一の姫マルルは不浄なる人族に騙され人魔戦争において人族側に加わったばかりか戦後も自らルーンに留まり、人族の行く末を見守るっている

おかげで魔王軍には我が妹を送り聖域が人族にも魔王にも肩入れしないことを示さねばならなかった』


「それはレッドニアさんですか」


『・・・・・』


『それは赤の魔女レッドニアか、確か精霊王の妹と言えば・・』


『彼女は魔王が求めたダークエルフに過ぎぬ。我が妹は精霊だ

そしてその妹も戦後長く行方知れずとなっていたが最近になって行方が判明した

あろうことか人族の街に囚われていたのだ。人族どもめ許せぬ。本来ならば我自ら鉄槌を下すところだが妹を見つけ出したマルルの願いは聞かねばならぬ

だがマルルが妹を取り戻すのをただ待つだけというのも面白くない

そこでだ神龍族の爺、貴様が我が妹メルルを人族から解放するなら、一度だけ【真実の大鏡】を使わせてやろう

さあ、どうする』


ナナシはその人族の街がルーンではないかと思い精霊王に尋ねる


「その街の名前と場所はどこなのですか」


『・・・・・』


精霊王はナナシとは一切話す気がないらしい


『貴様は百年経ってもめんどくさい奴だな。何処にあるその街は』


『【聖域】から真直ぐ南に下った砂漠の中にある。カラカラという街だ』



次回からカラカラでの話がスタートします

ちょうど今回が今章の中間地点になります

いよいよ魔王軍の本格的侵攻が始まります

新しい仲間ロンの戦いにご期待ください

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