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05 死の眷属 5

ナナシ達は夕方になり岩山の周りで一夜を過ごすことにする


「ドワーフさん達の集落は見つかりそうですか」


「判らん。しかし鉱脈の流れは太くなっている、この流れをたどって行けば必ず同族の集落はある」


「そこに行けば故郷に帰れるのですか」


「我らドワーフは大地と炎火があれば生きていける。すべての大地がドワーフの故郷だ。家は住い(すまい)ではなく工房だ、良い鍛冶が出来ればそこに住む。うまい酒を飲む為に人族と取引し魔道具を作る手伝いをしているに過ぎない」


「では家族や一族は、皆さんが居なくなって心配していないのですか」


リーダードワーフは何言っているのだとあきれ顔で答える


「一緒に鍛冶仕事をするのが家族だ、一族だ。だからここのいるのが俺の家族だし一族だ」


「もしバラバラになって離れ離れになったらどうするのです」


「新しい鍛冶の仲間を探し家族になるだろう」


リーダードワーフは当然のことのように話す


黒騎士さんにとって魔王さんや他の軍団長さん達はどんな存在だったのかなぁ


もっとブルートさんと話をすれば良かったかな


『何を言っておる。黒騎士の鎧を新魔王に献上すると言うような奴と話など出来るものか』


「お前さん、ドワーフにとってこの世で一番悲しい事は何か知っているか」


ナナシは首を振る


「自分の技術や素晴らしいと認める名工が誰にも引き継がれる事なく失われる事だ。だから俺たちは自分の命より技術を大事にする」


ブルーノさんも黒騎士さんの鎧が僕の元にあるより新魔王の元にある方が役立つと思ったのかなぁ


『そんなことは青鎧が決める事ではないわ。小僧は黒騎士が選んだ鎧の継承者なのだぞ』


神龍様おかんむりであった


黒龍王にとってナナシはたまたまルーンの大穴に飛び込んできた人族ではない、普通の人族はルーンの界壁で意識を保つこともできなければ、龍業を使い、神威を放つこともできないのだ。黒騎士とてその思いは同じ、偶然ナナシが龍剣を鞘から抜いた訳ではない。黒騎士は新魔王軍のマミューではなくナナシを選んだのだ



月明りさえ差し込まぬ森の中を多数のゾンビネズミが走り回っている


彼らはリッチに命じられるままに【玉】を求めて森の中を進んでいく


夜明けと共にナナシ達はドワーフの集落を目指して岩山の移動を再開する


護衛として周囲を警戒はしていても魔物や危険な動物が現れる気配は一切ない


『小僧、上だ』


ナナシ達を追うように上空に大蝙蝠が飛んでいる。しかし普通の蝙蝠はこんなに明るい時間に飛ぶことはない


ナナシは黒龍爪を大蝙蝠に放つ。それを見たドワーフたちが「おおぉ」とどよめく


黒龍爪によって両断された蝙蝠が黒い霧になって飛散する


『死の眷属か』


「なんですか。その眷属って」


『説明している時間はない。すぐにでも今の蝙蝠の仲間が多数襲ってくるぞ。近くに隠れる場所を探せ』


ドワーフたちがナナシの周りを取り囲む


「その剣は魔法剣なのか。もう一度じっくり見せろ」



骸骨の魔術師リッチが骨で出来た椅子からゆっくりと立ち上がる


骨椅子はクルクルと形を変え二メートルを超える細身の杖になりリッチの左手に収まる


リッチは朝日に照らされながら沈黙を続ける幾多の屍たちに号令をかける


『時は来た。我が眷属たちよ。これより冥界妃(クイーン)マミー様の大望を叶えんが為に進軍を開始する』


ごぉぉぉぉぉぉぉーーーーー


不気味な唸り声が響き渡る。生きとし生けるものは、その声を聴けば一刻も早くその場を逃げ出していくだろう。死の眷属達が今動き出す



ナナシ達はひたすら山を登っていた


周りには木はなく生い茂る草もない、ごつごつとした岩があるばかり、これでは隠れる場所さえない。おまけに足元はごろごろした石ばかりで踏ん張りが効かず、頑丈なドワーフたちでさえ流石に疲れの色が見えている


だが追っ手は疲れを知らぬアンデット達、着実にナナシたちに迫ってきている


最初の大蝙蝠が現れてから次々に翼をもった魔物たちが襲ってくる


それもすべてがゾンビ系だ


そして昼を過ぎ太陽が西に傾き始めた頃、それは現れた


山腹の三合目あたりで休憩を取っていたナナシ達


森の中から地面を覆いつくすほどの小動物の大群が現れる


彼らは一直線にナナシ達に向かって山を登り始める


『あれは先発隊に過ぎない。本体が後から現われるぞ』


ナナシは立ち上り、ドワーフさん達に告げる


「奴らは僕が防ぎます。ドワーフさん達は穴を掘って隠れていてください」


リーダードワーフは首を振る

「無理だ。奴らは瘴気をまき散らす。穴を掘っても助からない」


二人のドワーフが懐から【爆裂玉】を取り出す。山の爆破作業を繰り返す中でくすねていたのだろう


「いざとなれば、これを投げ落として魔物を吹き飛ばしてやる」


「できる限り上へ逃げてください」


ナナシは山下へ振り返り、空歩で走り出す。一直線に山を駆け降りず斜めから小動物の大群へ迫る


『インパクト系は山崩れの危険があるから使えないぞ。これだけの大群だ、ちまちまと処理していたら切りがない黒龍翼で一気に吹き飛ばせ』


「神龍様、奴ら向きをこちらに変えた。狙いは僕らだ」


ナナシが黒龍翼で竜巻を起こしゾンビネズミを空中に舞い上げていく


複数の竜巻が立ち上り、次々にゾンビネズミを舞い上げる


舞い上げられたゾンビネズミは一緒に舞い上げられた石にぶつかり、砕かれ潰され粉々になって行く


ナナシは自分を狙って死の眷属達が押し寄せてくるのなら、一気に森の中に踏み込んでゾンビたちを一掃しようと考えるが、相手が二手に別れドワーフたちを狙うなら彼らから遠く離れる訳にはいかない。空飛ぶ魔物もいるから油断はできない


ナナシは山の麓、大きな岩の上で死の眷属の後続を待ち構える事にする


いつでも【空渦】を放てるように構えを取る


「僕らを狙っているなら、奴ら何が目的でしょうか」


『マミューの敵討ちなんてことはなかろうし、親玉に聞くほかあるまいな』


「まさか新魔王軍の新たな軍団長でしょうか」


ナナシはブルートさんの話を思い出す


『なおさら我らを狙ってくる意味が判らぬ。北極の報復にしても大袈裟過ぎる』


森の中からゾンビ豹に乗った死人兵(グールライダー) が現れる


三十騎ほどがナナシのいる大岩を取り囲むだけで、ドワーフたちに向かう素振りは見せない。上空を骨王コウモリが十羽ほど飛び回っている


グールライダーが弓を射かけて来たり、骨王コウモリが急降下してきたりしてと、ちょっかいは出してくるが明らかに足止めだ


森の中から新手が現れる



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