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04 死の眷属 4

ナナシは背中の黒龍剣を抜いてドワーフたちの奴隷の首輪を切ろうとするが、首が閉まって喋る事も息をすることもできないドワーフたちはそれでもナナシが近付くと逃げようとする


それをナナシは押さえつけ強引に首と首輪の間に黒龍剣の切っ先を押し込むと首輪は紙を切るように簡単に外れる


その様子を苦しみながら見ていたドワーフたちが驚嘆の目で黒龍剣を凝視する


ナナシは次々に意識朦朧のドワーフたちの【奴隷の首輪】を断ち切っていった



今ナナシは助けたドワーフたちから彼らが山の麓で何をしていたか話を聞いている


ドワーフ曰く


彼らはバレンシア王国の王都サウスに酒の買付と納品にやって来たドワーフのキャラバン隊だった


酒好きの彼らはサウスの酒場で小太りの商人風の男からしこたま酒をごちそうになり翌朝気が付いたら【奴隷の首輪】を付けられあの山の麓にいたそうだ


どうやってあそこに運ばれたのかも判らないし、ここがどこなのかも彼らは判っていなかった


山を爆破して埋まっている【爆弾石】を盗採掘する危険な仕事をさせられていたらしい


彼らの脱走計画では瘴気溜りに穴を開けて騒ぎを起こし、その騒ぎに乗じて【主の腕輪】を奪って逃走する手はずだったが白骨巨人鬼が現れて腕輪どころではなくなったらしい


「【爆弾石】ってなんです」


ドワーフのリーダーらしい男が答える


「黒や白の特殊な石だ。この石を砕いて一定の割合で混ぜると【爆裂玉】が造れる。山を吹き飛ばしていたのもそれだ」


他のドワーフたちが先ほどからうずうずしている。見つめる先はナナシが背負っている黒龍剣、一人の年長と思われるドワーフが我慢できずに「背中の剣を見せてくれ」とナナシに頼む。ナナシは鞘ごとドワーフたちに渡す


ドワーフたちは寄り集って黒龍剣を調べ始める


「一体どんな金属でできているのだ」


「これは金属ではないぞ。生物の骨を魔法処理している」


「ばかな、ナイフや小刀ならともかく剣でそんな事が出来るものか」


「鞘から剣が抜けぬ。封印されている」


「製作者の刻印もないぞ。どこのドワーフの作か判らぬ」


「名工三選ならともかく我らでは・・・」


ドワーフは山岳王の民と呼ばれ鉱石や金属の知識が豊富で、それが更に進んで鍛冶や金属加工技術を発展させた。今では魔道具製作に欠かせない民となっている


「この剣を鞘から抜いて見せてくれ」


「見せるのは構いませんが条件があります。この魔道具の使い方を教えてほしいのとこれが何か判りませんか」


ナナシはそう言うと魔道具【転送門】とブローチサイズに縮んだ魔物の卵をポケットから取り出す


リーダードワーフが魔道具【転送門】を確認し、他のドワーフたちが緑の縞模様のブローチ卵を難しい顔をして手に取って見ている


「転送の魔道具だが造られたのは外つ国だな」


「魔石をいくつも吸収させているのですが使用できないのです」


リーダードワーフは魔道具をひっくり返し、六角形の底蓋をクルリと捻る。すると底蓋が取れて中から魔石が出てくる


「もう魔石に魔法力が残っていない。魔石を交換しろ」


そう言うとリーダードワーフは魔道具をナナシに押し付け、さっさと剣を鞘から抜けと催促する


「これは鉱石ではないな。加工品でもないし魔道具でもない。我々では手に負えない。大きな街にある鍛冶師ギルドに持ち込むかハンター組合で鑑定を受ける事だな」


他のドワーフたちもブローチ卵をナナシに押し返す


ナナシは黒龍剣を鞘から抜いてドワーフたちに渡す


ドワーフたちは逃亡中であることなど忘れたかのように黒龍剣を嘗め回すように確認している


ドワーフたちは誰一人声を出すことなく黒龍剣を隅々まで調べている


さんざんドワーフたちは黒龍剣を眺めまわし、触りまくり、最後は諦める


未熟な自分たちには理解できないと結論付ける


「皆さんはこれからどうするのです」


ナナシが聞くとドワーフたちはみんなで集まって話し合いを始める


リーダードワーフがナナシに告げる


「お前さんを護衛として雇いたい」


ドワーフ曰く


ここがどこかは判らないが鉱脈の流れが地下に通っているからそれをたどれば近くのドワーフの集落にたどり着ける


それまでの間、護衛依頼したい。報酬は到着後魔石で支払う


「お前さんはその魔石で魔道具を使用できるようになるし、そのおかしなブローチの事も集落に行けば判るかもしれないぞ」


「支払いは後払いなら払われる保証はあるのですか」


「ない。ドワーフが大地に誓って支払うと言っているだけだ」


ナナシは、彼らは黒龍剣をもっと観察したいから護衛依頼を出したのかと思ったがドワーフたちの護衛依頼を受けることにする。【転送門】を使うには魔石がいるが、ここには魔物がいないし、先ほど現れた白骨巨人鬼はアンデット系で魔石を持っていない


ドワーフたちと共に鉱脈の流れに沿って森を抜け山へと入る



ゾロメの龍騎士隊は捕まえた小太りの商人と持てるだけの【爆弾石】をもって一旦アルバーナ王国へ帰還し、改めて残りは回収する事となった


一人を警備として残し二人がアルバーナへ飛び立とうとした時、異変は起きる


異様な唸り声が山々に木霊(こだま)し、濃厚な瘴気がキャンプ地に流れ込んでくる


飛び立った竜騎士は、白骨巨人鬼が這い出してきた瘴気溜まりから唸り声が聞こえ、十メートルほどの穴の中から続々と白骨の魔物たちが湧き出してくるのを確認する


魔物暴走(スタンビート)か」


待機の竜騎士に避難するように呼び掛け空中に避難させる


骨王コウモリが数十羽飛び出してきて竜騎士と空中戦になる


頭部を破壊されてバラバラになっていた白骨巨人鬼が瘴気を吸って復活し立ち上がる


多数の死人兵(グール)やスケルトンが現れる


そして瘴気溜まりから一際異様な魔物の一段が現れる


骨馬に乗った首のない騎士ディラハン


全身真っ黒なローブに包まれ二メートルは超える髑髏(どくろ)の魔導士リッチ


そして最後に四頭立ての骨馬に引かれた豪華な馬車が現れる


御者席にはゴブリンほどの体に同じ大きさの頭が乗っている白執事服の男とガリガリに痩せた黒メイド服の女が座り、馬車の中には骸骨の赤ん坊を抱いて深くレースの帽子で顔を隠している黒いドレス姿の冥界妃(クイーン)マミーが乗っていた


リッチが馬車に近づき膝を折って(うやうや)しく頭を下げる


『我が君、これより捜索を始めます。(ぎょく)が見つかるまで、ここでしばらくお待ちください』


馬車の中からは何も返事は聞こえてこない


リッチが立ち上がり骨の腕を大きく前へ振り上げるとどこから現れたか数千匹のネズミが森の中へ散らばっていく。このネズミはもともと森の中に住んでいたが瘴気によって息絶え、今はリッチに操られている


同じような森の小動物ウサギやリスも森の中へ消えていく


それを見ていた龍騎士たちはワイバーンの炎で骨王コウモリを遠ざけ一気に魔物の群れから距離を取る


「一刻も早く本国に戻り、この危機を伝えなければ」


竜騎士ゾロメは東へ飛ぶ


太陽は中天にあり昼を少し過ぎた頃、夜が訪れるにはまだまだ時間がある。こんな時間に闇のアンデット系の魔族や魔物が大量発生するなど普通ではありえない


ここは迷宮ではないのだから


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