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22 それぞれの門出 2

魔法陣の外円部から光の柱が立ち上がり中からロクロンが現れる


「お帰りなさい。ロクロン

よく無事に帰って来てくれました」


サンターナが魔法陣から出てきたロクロンを笑顔で迎える

ここは外洋船サンターナ号の甲板


「これも和風月名(わふうげつめい)様のご加護とサンターナ様が【転送門】をお預けいただいた英断のおかげです」


ロクロンは右手の魔道具【転送門】をサンターナに返し、左手の刃は欠けてボロボロになり握りは折れたまさかりをサンターナに見せる


サンターナは静かにうなずき、聖域で【真実の大鏡】を通して見た映像の結果を尋ねる

「リンガーベルクを持っていた青い鎧の魔族と黒い鎧の騎士の戦いはどうなりましたか」


「実は・・・」


ロクロンはそれから北極での出来事を黒騎士が港町オスカーで出会ったナールであった事、リンガーベルグと魔道具【転送門】を交換したことをサンターナに話す


「それでリンガーベルクは生きているのですか」


「かろうじて生きていますが、鉞同様に魂さえ傷ついていますから、既に今の形を保つことさえ困難になっています」


「リンガーベルクと話をしたのですか。父の事は何か判りましたか」


ロクロンは首を振り

「最早話せる状態でもありません。このまま封印の帯を捲き魔封の箱に入れヒゴの国に持ち帰ります」


サンターナはロクロンの言葉に頷き

「わかりました。これでターネシアでの取引は手仕舞とします。ヒゴの国に帰還しましょう」



モエナは移動の馬車の窓から身を乗り出して、何時までも手を振り続けるザイレーンの民たちに手を振って答え続ける。もっと早く馬車よ走れと祈りながら


隣に座るマリリンはナナシに会ってからずいぶん無口になった


シスターココはお土産リストの確認と滞在費用の清算を総本山に着くまでに済ませてしまおうと書類とにらめっこしている


「ココさん、あまり根を詰めないでくださいね。それほどに急ぐ書類でもないですよ。ルーン総本山に戻って落ち着いてからでも十分ですよ」


別れの儀式から解放されたモエナが馬車の中に座り直してシスターココに話しかける


「モエナ様

ルーン総本山で落ち着けるとでも思っているのですか

いいえ、それどころかゴーラットで新年を迎えることになるかもしれませんよ」


「まさかぁ」


「モエナ様

モエナ様は多くの民から聖女認定されているのです。そのモエナ様がゴーラットに戻ったらルーン行政府初代長官になられたオロロン司祭様がモエナ様を手放す訳ないですよ」


モエナが溜息混じりにゴーラットでの生活を考える

それまで無言を貫いていたマリリンが突然二人に話しかける


「私はゴーラットに着いたら一人でもルーン総本山へ戻るよ。もう一度一から自分を鍛えなおす。私はルーンの騎士を目指すから」



ナナシは氷漬けの魔物から取り出した魔石を魔道具【転送門】へ吸収させるが魔石を入れても入れても魔道具を再使用できない


『まさか壊れたのではあるまいな』


使い方も良く判らないのに異空間からの脱出に使用した為に魔道具が破損・・・・先輩さんとの完全復活薬(オールリカバリー)の取引といい、荷物運びや船の護衛の報酬、魔石の換金とナナシはここ最近金運がない


そういえばルーン山から、嫌、嫌、神龍様と出会ってからルーン山、常闇の谷、霧の迷宮、狭間の空間と破壊ばかりしているなぁと更に落ち込むナナシ


しかし、神龍様の加護がなかったらとっくに死んでいたと思い返し、改めて感謝の気持ちになるナナシ。本人は気づいていないが、ナナシはいつの間にか黒龍王に対して父親や家族のような感情を抱いていた

そしてそれは黒騎士に対しても


左手に握っている魔物の卵、既に普通の卵より小さくなって今やブローチサイズ


そもそも魔族って卵から生まれるのか実はこれは卵ではないのかもしれない


最早何もかもが支離滅裂になっているナナシはひたすら魔道具【転送門】に魔石を吸収させていた



狭間の空間から脱出して二日


食糧の残りを考えれば魔道具【転送門】に魔石を吸収させて再使用を考えるなら今日の昼までがタイムリミットになる


それを過ぎれば空腹で第四灯台までたどり着かなければならない


ナナシは魔道具の再使用を一時諦め、自力で北限へ戻る選択をする


黒龍剣を背中の鞘から抜いて鎧を展開する、狙うは狭間の空間に繋がっていた洞窟、そして洞窟がある山そのものも破壊すると決める


『後々何が起こるか判らないからな消滅させておいた方がよいだろう』


両手で黒龍剣を握り、山の頂上を狙って飛び上がり勢いのままに全身全霊で剣を振り切る


一瞬の静寂 すべての音が消える


そして山が・・いやすべての物が山の頂上に向かって吸い込まれて行く。氷漬けの魔物も山の土も岩も雪も風も渦を巻いて消えていく


ナナシは吸い込まれない為に四枚二対の黒龍翼を使い必死で渦から逃げていた


「これは強力な武器なりますが下手打てば自分が消滅しますよ。木霊(こだま)はどうやって防いでいたのですかね」


『そんなことは神威を使えばどうにでもなる。今は神威を封印して戦わねばならないからな』


地上に降りたナナシが黒騎士の鎧を開放し盾に変える。すると【空渦】からの吸い込む力が大きく弱まる


「流石黒騎士さんの鎧です。望めばなんでも叶います」


ナナシはその時気が付いた、なぜ魔族の卵を捨てられないか。やはり黒騎士さんがいなくなって寂しいのだと。黒騎士さんは鎧と剣業を残してくれたのに


ほんの数か月でしたが一心同体でしたからね黒騎士さん


【空渦】が収まるのを待ってナナシは黒龍翼を使って雲の上を南へ飛ぶ


襲ってくる魔物はそのスピードについてこれない。飛火(トンビ)でさえ振り切って南へ飛ぶナナシ


やがて夜のみの世界に朝日が昇り始める。北極の大地を抜け北限の地へと帰ってきたのだ


ナナシは雲の下へゆっくりと降りる。下に何があるか判らい以上慎重に下降する


雲の下は北限の海だった。数隻の内陸船がシーマンの群れと戦っている。ナナシはちょっと迷ってから高高度からインパクトスラッシュを内陸船に当たらないように数発海に打ち込む。水面がへちゃげ十メートルを超える水柱があちこちで打ちあがる。シーマン達はそれに驚き海中に逃げ出す


ナナシは一目散に第七灯台を目指して北限の大地を飛ぶ。後ろは断崖絶壁、その先は荒れた海、前方は山も森さえも見えない、どこまでも黒い岩しか見えないごつごつとした大地が広がり、太陽が東の原野から登ってくる


目指すは精霊王が治める【聖域】の地


今回で第四章が終了しました

読んでいただきありがとうございました

次章「魔道都市ガラガラ攻防戦編」は11月11日から再開します

いよいよ新魔王軍の本格的な進行が始まるのか?

ガラガラッティとゲロゲロコンビ再登場はあるのか?

ナナシは聖域でどんな出会いと自身の真実に向き合うのか?

ご期待ください

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