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ゴール騒乱 06

短編で投稿した「始まりの森 モエナの災難」の続編になります


自分はいったい何者なのか

記憶をなくし港町ユンに漂着した少年

彼はどこで生まれ、両親は、兄弟は・・・

自身の信名を求めて旅出す

王なるを望まず、英雄達(えいゆうた)らんとせず

ごくごく普通の人間でありたいと望みながら

周囲からは様々な忌み名を付けられ

人族と魔族の人魔戦争に巻き込まれていく

ゴール大公館は小高い丘を囲うように建てられている


城というには小さく優美さや美しさもないが幾多の戦を潜り抜けてきた重厚な砦の風格があった


正門を入って広い広場を抜け、赤石の壁でできた広い階段を、丘を回り込むように登った先に大公館はあった


「なかなか厄介な館だね

正門は押し破るのは難しくないが、入った広場で多くの兵士が待ち構えている上に

両側壁の階段をぐるりと回り込まないと館にたどり着けない

階段上から攻撃されたら防ぎようがない

館の中も色々仕掛けがあるんじゃないかな」


「なんだか戦士長様、まるでゴールと戦さするみたいですよ」


「シスターモエナ ルーンの槍騎士キャシュとしてはみんなを守るのがお役目だからね。いろいろ考えてしまうのさ

それと正門の結界に気が付いたかい」


「ええ、でも総本山にある結界とは何だか違うような」


「本山は特別だからね

普通は魔物除けの結界を張るんだけど

ここの物は鑑定結界だね」


「鑑定結界?それはなんですか

聞いたことがありませんな」


「オロロン司祭殿でも初耳ですか

結界に入った相手の魔法力や戦闘力を見極める結界です

もちろんどこまで確認できるかは結界のレベルによりますし

私やシスターモエナなら弾いてしまいますからね」


館の前で執事らしい男性が立っていた


彼が接待役なのだろうが、そろそろ結界の管理者が駆け付けてくるんじゃないかな


キャシュ(キース)は魔族が尻尾を出してくれれば良いと思った


やって来たのはコルパス宰相だった


彼は息を切らせながら玄関エントランスに現れ、オロロン司祭に挨拶し、シスターモエナやキャシュ(キース)を紹介され、何も気づかない風に自然な仕草で控室へ案内してくれた


「皆様しばらくこの部屋でおくつろぎください

ご用意ができましたらお呼びいたします

魔道具の選抜参加者は予めいくつかのグループに分け

ルーンの誓いを済ませた者から選抜を始めたいと思います

会場は表の広場と館裏の闘技場に分かれております

司祭様とシスターモエナ様は闘技場の方へご案内します」


そう言うとコルパス首相は早々に部屋を出ていった


「なるほどね。選抜参加者を振り分ける為の鑑定結界だったんですね」


「シスターモエナ それならわざわざ結界なんて張らなくてもいいんだよ

堂々と受付で鑑定すればいいんだから」


「ではキャシュ(キース)さんはなぜ鑑定結界が張られていると思うのですか」


「当然我々のような身分や能力を隠して入り込もうとする輩を見つける為さ」


いたずらが見つかった小僧の様な笑顔でキャシュ(キース)は答えた



コルパス宰相は大急ぎで大公へ面会を申し込んだ


闘技場の選抜会を観覧する予定の大公は執務室にいた


「何事だコルパス 選抜参加者にドラゴンでもいたか」


「仰せの通りドラゴンがおりました」


コルパスは大公の軽口にも大真面目で答える


「本日立ち合いをお願いしておりましたオロロン司祭の同行者にキース聖騎士長殿がおられます」


大公は最初宰相の話している意味が判らなかった


聖騎士と言えばルーンの最高戦力、一人で国家と戦える存在だ。ルーンの守護者として総本山を離れるなど法王様の巡幸でもなければあり得ない


「聖騎士長に間違いはないのか」


「直接お会いしたことはありませんが4年ほど前ルーンで行われた大祭にて、お顔を拝見しております。間違えようがございません

それに高位シスターの護衛として偽名で紹介されました」


「ダンズウェルス枢機卿絡みとは考えにくい、聖騎士長は大物過ぎる

となると・・・龍の魔道具か

ルーンが何ゆえに魔道具に関心を寄せる・・」


本来、聖威は神から与えられた力であり、魔法力は自然界にある力を具現化する力だ


たとえば魔法なら、自然界の力を火の力に変換して火魔法を放つ


より効率よく変換すれば、より大きな炎になる


しかし現実には誰もが魔法力を持っている訳でもなく、うまく扱える訳でもない

魔法力で飲み水を出す度に自分が溺れていては役に立たない


それを解決したのが魔道具である


魔法力を貯めた石(魔石)に制御用の魔法陣を組み合わせた道具が魔道具である


魔法力を持つ者は魔石に魔法力を込めれば何度でも繰り返し使用できる


魔法力のない者は魔石を買い替えればよい


それに対して聖威は神から与えられた奇跡の力である


より神から愛された人(聖騎士、使徒、高司祭など)はより大きな聖威を使える


聖威を火や水に変換するのが聖具である


聖具に魔石は必要ない


では聖威で魔道具を動かす行為は電気自動車にガソリンを給油するようなものである


もちろん逆もしかり


よってルーンは魔道具を必要とせず聖具のみを欲する


「いかがいたしますか

このまま知らん顔で通しますか、正式に聖騎士長として迎え入れましょうか」


大公は迷った。いつまでも知らん顔はできない


さりとて・・・左腹を擦りながら大公は答える


「今は様子を見よう。失礼がないようにな」


「かしこまりました。目を離さぬようにいたします」


コルパス宰相はいつになく緊張して答えた

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