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14 魔王の墓 1

「着いておいで

なぜ勇者を招いたか。正直私にもうまく説明できない

黒騎士、おんたも同じさ

なぜアッカバッカ様があんたを呼んだか私には判らない」


そう言うとレッドニアは霧の中へ歩き出す


「行きましょう。皆さん

僕たちはその為にここまでやって来たんです」


レッドニア、ナナシに【サンシャイン】のメンバーが用心深く続く


アンジェリーナがナナシに話しかける

「ナル君は魔王軍なの」


「違います。アンジェリーナさん

説明しにくいのですが、僕の心の中に黒騎士さんの意識があります

彼は前魔王の墓参りをしたいだけなのです」


【サンシャイン】の全メンバーが微妙な顔をする


墓参りをしたい魔物なんて聞いたことがない。怪しすぎる話だ


「なぜ20階層で姿を消したの」


「迷宮の深階層に呼ばれているのが僕だけと思っていたからです。自分が単独でパーティから抜ければ皆さんは普通に【転移魔法陣】で帰還できると思ったからです」


「それなら二人を気絶させて【転移魔法陣】に細工したのはなぜだ」


「そんなこと僕にはできません。僕が気が付いたら二人とも気絶していたんです」


そこでナナシは【サンシャイン】のメンバーが【転移魔法陣】で30階層の下層に飛ばされたことを聞かされる


『レッドニアが勇者を招いたとしても迷宮の【転移魔法陣】に細工など出来ん

今回の事はアッカバッカが小僧を、レッドニアが勇者を深階層に招こうとしたことから起こったことだが、それ以外の力も働いているかもしれないぞ』



レッドニアは霧の中をまっすぐに奥へ奥へと進んでいく。ナナシ達は彼女を見失わないように5メトル程後ろを歩く


徐々に森の木が少なくなり、地面に石畳が現れ、さらに先には石階段が霧の中に見え隠れしている


「この階段を上がった所が迷宮の深階層さ

その前にちょっと黒騎士と話をさせておくれ」


「黒騎士さんは僕の夢の中に現れるだけです。どうやって話をするのですか」


レッドニアはナナシに近づいて右手をナナシの頭に乗せる


するとスゥーとナナシの意識が薄くなる


それはいつも黒騎士がいる洞窟ではなく、雲の上にいるようなふわふわとした場所だった


そこに立っているのは赤いドレスを着た女性とスケルトン


女性はさっきまでナナシの前に立っていたレッドニアとは容姿が違う。20代のすらりと凛々しい雰囲気を持った女性、腰には細身の剣を指していた


一方のスケルトンも到底普通のスケルトンではない。全体に武骨な太く黒い骨をして2メトルを超える巨体をしている


「すまない。レッドニア

君につらい役目を押し付けてしまった」


「私が勝手に始めた事さ」


「本来は我の役目だ

そう思えばこそ我はここに呼ばれたのだ。アッカバッカ様は君が自由になる事を望まれておられる」


「あんたがそのつもりでここに来た事はすぐに察しが着いたよ

でもねぇ黒騎士、アッカバッカ様がそれを望まれているとあんたが考えているなら、それは大間違いだよ」


「・・・・・」


「いいかい黒騎士

この後何が起ころうと、それはあんたが背負い込む事じゃないんだ」


レッドニアの手がナナシの頭から離される。ナナシの意識が戻る。時間にしたら1ビウもないわずかな時間


「黒騎士さんは墓参りができたら成仏してもいいと言っていました」


レッドニアがくすりと初めて笑う

「ばかな奴だねぇ」



緩やかな石階段の左右には以前ここに建物が立っていたことを辛うじて感じさせる柱の残骸や倒れた壁が残っていた


階段を登り切った先は広い石畳の広場になっている


石畳は所々破損し周辺の建物も100年の歳月で風化し朽ち果てている


この場所こそが100年前勇者と魔王が最終決戦を行った魔王の間


天井は落ち、壁は倒れ、石畳はあちこち壊れているのが100年の風化の所為ではなく、勇者と魔王の激戦の後だと気づき、階段を上がり切り魔王の間の正面から目を逸らす事の出来ないナナシ達


霧がすべてを覆い隠すようにさらに濃くなったようにさえ思える


レッドニアは慣れた様子で魔王の間をまっすぐに進み、ナナシが後に続く


「罠や結界等はありません」

ハントンが言い、ロビンがうなずく


ハントンとゴットンを先頭にロビン、アラタ、ルックが中央にアンジェリーナが後方を警戒しながら【サンシャイン】も後に続く



魔王の間の最奥にそれはあった


最初ナナシはそれがただの大きな岩だと思った


岩塊を見た時、ハントンとロビンは只ならぬ胸騒ぎを憶え汗が噴き出した


ゴットンは岩塊のように見える表面が氷で覆われていることに気が付いた


アンジェリーナが氷塊から迷宮を覆っている霧が発生している事に気が付いて警戒感を強めた


ルックはそれが高度な氷結魔法と封印魔法の複合体と判り驚愕した


アラタはじっと氷塊を見つめていた


「これがここ【霧の迷宮】の迷宮主、魔王アッカバッカ様さ

そして私は【迷いの森】の迷宮主レッドニア」


「二つの迷宮だと」ロビンが驚いた声を上げる


「そんな話聞いたことがない」ハントンもロビンに同意する


「魔王城が迷宮化し始めた時、私はどうしてもそれを止めたかった

そうだろう。勇者に討伐され更に迷宮主としてハンター共に挑まれる

アッカバッカ様が望んだのは魔族が安らかに暮らせる場所を作る事だった

人族と戦い続ける事じゃない

だから私はアッカバッカ様を封印し、これ以上迷宮化しないようにして【霧の迷宮】の上に新たに【迷いの森】の迷宮を作ったのさ」


「お前が【迷いの森】の迷宮主だというのなら、迷宮攻略する為にはお前を倒さないといけないという事か」


ゴットンがレッドニアを睨みながら油断なく尋ねる


「普通はそうだろうね

でも【霧の迷宮】も【迷いの森】も特殊な迷宮さ

私を倒しても、新たな迷宮主として復活する事はないよ。

二つの迷宮の【迷宮核】はそれぞれ私とアッカバッカ様だ

その時は迷宮崩壊が起こるだろうね」


だとしたらこの迷宮は攻略できない。攻略してしまえば迷宮が崩壊する


ましてやこの氷塊をどう攻略すればいいのかゴットンには想像もできなかった


それでは地上へ帰還する道が閉ざされた事になる


「では、なぜあなたは我々をここに呼んだのです」

ルックがレッドニアに尋ねる


「あんた達が前回40階層に到着した時、100年ぶりにあいつが反応したからさ」


レッドニアがそう言って忌々しげに氷塊の中心当りを指で指し示す


アンジェリーナにもルックにも、そこに何があるのか見えなかった


『人族が魔王と一緒に氷漬けになっているな』


「本当ですか。神龍様

それじゃ勇者が」


「人が魔王と一緒に氷の中にいる。あれは勇者か?」アラタが告げる

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