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12 霧の中に浮かぶ家 2

ナナシは新たな岩ムカデに構うことなくダブルインパクトを広場の中央に叩き込む


轟音と共に岩の洞窟全体にひびが入り、ナナシが通ってきた洞窟が崩壊する


【空歩】で上空に上がったナナシが崩壊した洞窟跡を見下ろすと、岩がまるで渦を巻くように流れ出す。渦の中心から合体し更に巨大化した岩ムカデがゆっくりと立ち上がる。その長さ30メトルを超えていた。


【龍王翼】の強風が大地から中空に岩ムカデを引きはがす。中空に飛ばされた岩ムカデは体をうねらせて暴れるがどうする事も出来ない


ナナシは鎧を鞘の形に戻し、黒龍剣を鞘にしまう。【龍王尾】を足元でうねらせ、それを足場にして低く構える。【空歩】だと空中に立ち止まる事ができないが【龍王尾】を足場にすれば立ち止まる事ができる


『よいか。絶対に【神威】は使うな

黒騎士の言う通りなら何の問題もないはずだ』


ナナシが一歩前に踏み出すと共に黒龍剣を鞘から斜め上に高速で振り上げる


空中で、もがいていた岩ムカデが動きを止める


ゆっくりと二つに分かれ、岩が粉々になって落ちていく


岩ムカデの先にある森の木が同じように斜めに切られて倒れていく


『なるほどな

大地を砕き、海を割り、空さえも引き裂く剣か

まさに【次元刀】だな』


黒騎士は言う


「連撃など弱者の小手先に過ぎん

真の強者は一刀ですべてを切る

形のみを切っているから再生や回復ができるのだ

命さえも一刀に切れば再生などありえない」


「でも鎧を脱いで剣を納め、一呼吸を作らないといけません

使い所が難しいです。梟は一瞬で【次元刀】を放っていましたよ」


『それが【神威】を使うか使わないかの差よ

もはや梟を恐れる事はない。真に恐れるは本体の方よ

それよりも【龍王翼】で霧が吹き飛ばされた時、見えたか』


「はい、見えました。西側に塔があります」



【サンシャイン】臨時パーティが目を凝らして塔を探していた時、突然轟音が迷宮に響き渡る


「近くで戦っている者がいる」


全員がナルや黒騎士を思い浮かべた時、突風が起こり霧を吹き飛ばす


ハントンが南の遥か先を指さす


「あそこに塔が見えました。思っていた以上に遠いです」


ルックも塔を確認する


「馬鹿な

以前はあんなに離れていなかったはずだ」


「何かの錯覚や感覚異常をおこしているかもしれん

ロビン、どう思う」


「判りません

しかし、錯覚はともかく感覚異常はおこしていません」


【サンシャイン】臨時パーティは塔が見えた方向へ移動する事を決める


ナナシは霧の中に見えた塔へ真直ぐに【空歩】で近づいていた


魔物は襲ってこない


近づいてみて気づく


「これ塔じゃない

切り立った岩の上に家が立っている」


それは霧の中に浮かんでいるように見える小さな木造りの家


近づけば、ぼんやりと魔法ランプの灯りが灯っているのが判る


しかし、下から上の家に登ってくる道が見当たらない


ナナシは家の玄関手前に降り立つ


玄関ノッカーを見つめナナシは小さく深呼吸をする


たぶん中にいるのは旧魔王軍団長の一人、赤の魔女レッドニア


黒騎士が魔王の親衛隊長ならレッドニアは魔王の参謀長


常に魔王の傍に寄り添い彼に助言と献身を捧げて来た魔女


黒騎士さんから彼女へのメッセージは何度も練習させられた


何しろ彼女は魔王軍随一の規律にうるさい人だそうだ


ノッカーを鳴らし、反応を待つ・・・・・・


もう一度ノッカーを鳴らし、待つ・・・・・・・


ドアをそっと引っ張る・・・・・開かない


ドアをそっと押す・・・・・・・開かない


『何をやっている

蹴破るなり、切り刻むなり方法はいくらでもあろう』


「ちょっと過激すぎませんか。竜神様

中にいるのはおそらく黒騎士さんの元同僚ですよ

僕らはお墓参りに来ただけですから」


『相手は迷宮主かもしれんぞ

ドアの向こうにはどんな罠が待ち受けているかも知れん』


ドアが静かに横に開く


「入っておいで黒騎士

随分待たせたじゃないか」



【サンシャイン】臨時パーティが、塔が見えていたと思える場所に到着する


そこは霧で視界が悪い上に塔らしき建物も全く見えない


「見えませんね。ゴットン

やはり何らかの錯覚か感覚異常があるのでしょうか」


「ルック

風魔法で一時的でもいい。霧を流せないか」


ルックが杖をクルクル回して風魔法を吹かせる


霧が流れるだけであまり視界は良くならない


「おそらく霧も魔法で造られています。風の魔法と干渉して効果があまり出ませんね」


その時アンジェリーナが真上を指さしながら声を上げる


「警告‼頭上に何か見える」


戦闘態勢のままゴットンとルックがアンジェの指さした方向を凝視し、他の者たちが周囲を警戒する。彼らが見た物は宙に浮かぶ棒状の岩の塊


「何だ、あれは」

誰にともなくゴットンがつぶやく


ルックが折り紙を取り出し、鳩を折って空に飛ばす


「魔法力がうまく折り紙に伝わりません。コントロールが難しい」


折鳩はゆらゆらと上へ上へと飛んで行き、棒状の岩の上に家が建っているのを発見する


「俺たちが塔だと思っていたのは、この浮かぶ家か」


「でも、どうやって登って行けばいいの」


【サンシャイン】のメンバー達がどうしようかと岩塊を見上げながら思案していた時


「この岩塊動いていませんか」


ゴットンは、岩塊がゆっくり風に流されるように動いているのを確認し


「もう少し距離を取って岩塊の後を追うぞ

見失わないように注意しろ」



黒龍の鎧を着たままのナナシは、見た目普通のウッドハウスのテーブル席に腰掛けている


目の前に座っている真っ赤なドレスを着て、土色の肌をした女性がたぶんレッドニア


木でできた人型がお茶の用意をしている


レッドニアは、伸長1.5メイルくらい見た目60代のちょっと太った女性


彼女の目の前には果実酒と木のコップが置かれ、木人がお茶の用意をしている間に一人で3杯は飲んでいる


木人がナナシにハーブティを持ってくる。良い匂いがふわりと鼻に届く


「今更、自己紹介は必要ないだろ

何しに来たんだい黒騎士」

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