06 迷宮探索 4
短編で投稿した「始まりの森 モエナの災難」の続編になります
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「何かの罠か、それとも【魔物暴走】でも起こるのか」
「まさかそんな気配は全くありませんよ」
臨時パーティは8階層まで全く戦闘をすることなく、それどころか魔物に遭遇すらすることなく進んできていた
「まさか迷宮が休眠したとか」
「どこかのパーティが最下層の迷宮主を倒したってことか」
「気を抜かず10階層まで進もう。そこまで行けば何か情報があるはずだ」
10階層に到着した臨時パーティは小休止に入る
地元のハントンとパーティリーダーのゴットンが他のハンター達に聞き込みし、屋台にも声をかける
二人が戻ってきて打合せを始める
「先ほど到着したパーティはいつも通りの戦闘をしてここに着いている」
「階層主戦も通常通り、1アワー毎に復活している」
「それじゃ異常なのは俺たちだけって事になる」
それぞれお互いが、お互いの顔を見る
結局、臨時パーティは階層主に挑むことになった
まさか階層主が出てこない訳はないだろうという意見と、連帯が確認できていないのに階層主に挑んでも大丈夫かという意見がでたが、リーダーのゴットンが10階層の階層主程度で揺らいでいたら、この先へは進めないと結論付けた
その間、ナナシは無言を貫く
確かに数組の階層主に挑む先行組を観察すれば、どのパーティも攻略に失敗(全滅)することはなく11階層に降りていく
ここまで来られる実力があれば、それほど攻略は難しくないのだろう
7人全員で階層主部屋へ入る
「ドアが閉まれば階層主が現れる
主はゴブリンメイジだ。ゴブリンナイトを従えているから気を抜くな」
現れたのはオークが1匹
アンジェリーナに瞬殺される
階層主部屋を出る7人
セーフティエリアで待機している他のパーティが、余りに早い攻略にびっくり顔でこちらを見ている
7人は無言のまま【転移魔法陣】で地上に戻る
ナナシはちらりと11階層への入り口を見る
このままあの入口に突っ込んだら・・・
他の6人はどうするか、どうなるか
ナナシはアンジェリーナとルックの視線を感じ入口に突っ込むことを諦める
全員無言のままハンター組合の食堂まで戻ってくる
アラタが速攻で果汁牛乳を注文する
「俺の経験から言わせてもらえば、かなりやばい」
ロビンが口を開く
「明らかに誘われているな。深階層へ」
「誘いこんで一網打尽か」
「あからさま過ぎないか。気味が悪いくらいだ」
「これから組合の訓練場で今日と明日連携訓練を行う
状況を見ながら問題なければ1日休息日を入れて
3日後20階層を目指す。行動予定日数は7日だ」
ゴットンが取りまとめる
その後、訓練場で連携訓練を行い解散となった
その夜、高級宿のレストランに【サンシャイン】のメンバーがそろう
「どう思う。あの荷物持ちの動き」
盾持ちの大男ゴットンが尋ねる
「剣を抜いていないから、はっきりとは判らないけど
戦い慣れているのは確か」
女神官戦士アンジェリーナが答える
「兆候の二人は、今の所変な動きはないが、ナル君は確かに気になる。【鑑定】をしてみるかい」
魔法使い男ルックが補足する
「いや、以前のように【鑑定】も弾かれるかもしれない。敵対行動を取った訳じゃないが目は放さない方がいいだろう」
アラタ少年は肉団子のお代わりをお願いしていた
3日後早朝
ロビンとハントンを正式に臨時メンバーに加え、ナナシを荷物運びとして雇用し、改めて迷宮へ挑む
【サンシャイン】臨時パーティは迷宮11階層入口に再び来ていた
ここまでの工程は前回と全く同じ
魔物は一切現れず、階層主はアンジェリーナに瞬殺された
「行くしかありませんね」
ルックが沈んだ声で言う
「不審な事があったら些細な事でも伝えろ
途中であっても引き返す」
11階層でも魔物は現れず
そのまま11階層を過ぎ12階層へ
「流石に一度引き返しませんか。不審だらけですよ」
ロビンが周囲を警戒しながら提案する
周囲は深い森
11階層へ戻る入口は目の前にある
「一度10階層のセーフティエリアまで引き返す」
ゴットンが静かに告げ、ロビンが用心しながら11階層の階段を上がる
「ざっと数えて千匹くらいか」
ゴットンがため息混じりに告げる
「中央にオークキング
左右にオークゼネラル
ソルジャーやメイジも多数確認できます。戦争でもするつもりですかね」
アンジェリーナが呆れながら答える
「20階層のエリアボスですよ。数は1桁違いますが」
ルックが補足する
森の中を埋め尽くすようにオークの軍団がひしめいている
アラタが遠くを見ようとひょんひょん飛び跳ねる
ハントンが驚愕に振るえ、ロビンが短剣に手をやる
ナナシは黒龍の鎧を装着したら背負っている荷物はどうなるだろうと考える
「相手は何が何でも俺たちを深階層へ招待したいらしいな
もう一度12階層へ降りて作戦会議だ
まさか、そこにもお客さんが待っている事はないだろう」
12階層は静粛に包まれていた
オークキングを蹴散らして10階層から帰還するか、このまま深層へ潜るか、20階層の【転移魔法陣】が使えるかどうかも怪しい
「私たち以外に潜っているパーティはどうなったでしょうか」
「奴らに見つかれば飲み込まれて終わりだな」
「千匹近いオークですよ
災害レベルです。本来なら複数のハンター組合が対処する事案ですよ。迷宮攻略なんてレベルじゃありません」
「組合に報告したら10階層以下は進入禁止になるだろうな」
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