05 迷宮探索 3
短編で投稿した「始まりの森 モエナの災難」の続編になります
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「はぁ
ハンター登録して1ヶ月、しかも10階層にも到達していない
俺たちは荷物運びが欲しいんだ。お荷物はいらねぇよ」
「ちょっとーあんた正気
魔法力も癒しの力もない
剣一本でどうやって10階層以下へ潜るのよ
私たちは迷宮で迷子探ししている暇ないのよ」
ナナシ、散々な言われようである
残念だったのは、ナナシを10階層で見たパーティがみんな【サンシャイン】に刺激されてダンジョン深くに籠ってしまっていた事だ
結局ナナシは組合では、どこのパーティにも加わることができなかった
組合の食堂で遅い朝食を取っている。目につくのは掲示板の前でたむろしている一つ星ハンター達
「聞いているか
【サンシャイン】の追加メンバーなかなか決まらないらしいぜ
俺も応募してみようかなぁ」
「馬鹿だなあ、お前
お前みたいな奴がたくさん応募してくるからなかなか決まらないんだよ」
「でも二つ星や三つ星の応募もあったんだろう」
「剣士や魔法使いを募集しているんじゃないぞ
個人で三つ星の荷物持ちなんているかよ」
「候補者何人かでダンジョンに潜ったらしいが、30階層にも到達できなかったらしいぞ」
そうか!
【サンシャイン】の新メンバー候補(荷物持ち)になって10階層を超えたら、一人迷子になればいいんだ
どうせ荷物持ち候補は何人もいるだろうから、自分一人がいなくなっても大丈夫だよな
後は単騎で深階層を目指す
ナナシは、すぐに【サンシャイン】の新メンバー申し込みを、組合の受付に提出する
選考は3日後、ハンター組合の練習施設とのことだった
組合長室
「なかなか【サンシャイン】の追加メンバーは決まりませんな。組合長」
「仕方ないさ。サシハ君
三つ星パーティについて行けるとなればアンラクの町のハンターでも数名だろう」
「ルーンからの初期の要請は後1ヶ月ほどですが、その後はどうなされます」
「滞在の延長をアンラクのルーン教会を通じて申し込んでいるが難しいだろう
今、組合を通じて他の町の三つ星兆候を依頼している
月末までに成果が出なければ、他の三つ星パーティとチームを組んで40階層以下に挑戦となろうな」
「即席ですね」
「詳しくは教えてくれないが、ルーンしては迷宮攻略が目的ではないらしい。何か他に目的があるのだろう」
「しかし我々としては迷宮攻略のまたとない機会です。最下層が判明すれば、すごい事ですが、先ずは行ける所まで潜ってほしいですね」
副組合長のサシハが期待を込めて進言する
ナナシは新人選考までの3日間、低層迷宮に潜って黒龍剣を振っていた。同時に訓練も兼ねて荷物を背負い移動もしてみた
しかし考えてみれば【空歩】ができ、黒騎士の鎧を着て戦えるナナシは荷重訓練など意味がない事が判る。最近は魔物が出なければ入口から遠ざかり、魔物が現れれば入口に近づいているという変なセオリーまでできていた
『聖騎士が使っていた竜巻の業はやはり無理か』
「できませんね
神威を使えば可能かもしれませんが、今は止めておきます
それよりインパクトスラッシュの連続打ちの方が使い勝手はいいですね」
聖騎士アレンが使っていた双連撃をインパクトスラッシュで使えないかと試した所、中々の威力が出ることが判明、嬉しい成果となる
もっとも5連撃など夢のまた夢で3連続がやっとである
その後10階層まで潜り、屋台の親父に食料を買取りしてもらい【転移魔法陣】で帰還する日々を過ごす
申し込みから3日後、ハンター組合の練習施設にナナシは来ていた
多くのハンターがいると思っていたが実際に集まったのは5人足らず、更に荷物運び候補はナナシ一人だった
荷物運び候補は今日までに全員選考から落ちて、もう誰も応募してこないそうだ
【サンシャイン】のメンバーの内、神官戦士と魔法使いが姿を現しテストが始まる
ナナシはテストとして大人一人分くらいの重さの荷物を担いで練習場を走ることになる。歩いて2週、走って2週できれば、次は迷宮内でテストを受ける
ナナシとしては一人しかいないというのは誤算だったが、なんとしても10階層の向こうに行きたい
荷物をもって練習場を歩き出す
ナナシが歩いている間、残りの兆候候補たちがテストを受ける
神官戦士相手に模擬戦を行うらしい
勝ち負けではなく候補者の動きを見ているようだ
その後、魔法使いが魔法でロックされた箱を出して一人一人に開錠を試みてもらう
すでに走り終わったナナシはその様子を練習場の片隅で見ていた
「なかなかやるわね
何処かのパーティに入っていたの。ナル君」
模擬戦を終えた女性神官戦士に話しかけられる
「いいえ
ハンターになる前は港町で荷下ろしの手伝いをしていたので、慣れているだけですよ」
「そうなの
ところでその腰の剣、よく見せてもらってもいい」
「それもテストですか」
「まさか
剣士としての興味よ」
「ならばお断りします
自分の武器は他人に触らせたくないので(見られるとやばいから)」
互いが無言で見つめ合う。ナナシの顔が赤くなる
神官戦士は何も言わずその場を離れていく
その後、明日朝ダンジョン入口に集合
最終テストを行うと告げられ、その日は解散となった
その夜、高級宿のレストランに【サンシャイン】のメンバーがそろう
「どうだった。例のルーキーは」
盾持ちの大男が尋ねる
「良く判らない
ただ重い荷物を担いで4周したのに汗をかいていなかった」
女神官戦士が答える
剣の事は個人的な興味だ
「兆候の方は二人使えると思います
一人は他の町からやって来た三つ星ハンター
もう一人はトラップを見破るのがうまい」
魔法使い男が補足する
少年は黙々とモグモグしていた
翌朝
【サンシャイン】のメンバー四人と新人候補三人がダンジョンの入り口に集まる
ここで初めてナナシは自己紹介される
「俺は【サンシャイン】のリーダー大盾のゴットン
こいつが神官戦士のアンジェリーナと剣士のアラタだ
そして魔法使いのルック」
それぞれが無言で頭を下げる
「僕は三つ星ハンターのロビン 兆候とナイフを使う
普段はエーシの街で活動しているが今回は組合の依頼でやってきた」
30代初めの男性、バランスの取れた体格をしている
「私はハントン
アンラクの町で二つ星ハンターをしています
普段は別のパーティに所属していますが、今回は臨時です
罠解除と短弓が得意です」
10代女性、背は剣士のアラタとあまり変わらない
皮鎧を着ている
「僕はナル
荷物運びです」
自己紹介には成れていないナナシである
「今日はお互いの連帯を確認したい
8階層までは戦いは避け、そこから戦いつつ10階層で休憩し
その後、問題がなければボス戦を行い【転移魔法陣】で帰還する
誰か質問はあるか」
「コンビネーションは」
ロビンが尋ねる
「戦闘は我々【サンシャイン】が引き受ける
兆候の二人とナルは周囲を警戒、何かあれば警告してくれ
移動時はロビンが先頭、後ろに【サンシャイン】とナル、最後尾はハントン
問題があれば都度修正する」
誰も何も言わない。ナナシは七名3日分の食料と備品をもって迷宮に入る
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