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04 会議は踊る 2

短編で投稿した「始まりの森 モエナの災難」の続編になります


https://ncode.syosetu.com/n4919ie/

翌日の昼ナナシは、昨日できなかった魔石の換金と二つ星に上がる条件を確認する為にハンター組合に出直していた


朝から行かなかったのは【サンシャイン】のメンバーと顔を合わせたくなかったからだ


「なんか苦手なんだよなぁ」


『いきなり睡眠魔法で挑発してきたからか』


「なんですか。それ

全く気が付きませんでしたよ。神龍様」


『まあそれくらい鈍い方が良かろう』


昨夜と打って変わりハンター組合は喧騒に包まれていた


もちろん話題の中心は【サンシャイン】


みんな募集ボードの前と受付窓口でワイワイと騒いでいる


ナナシはその喧騒を避けて買取り窓口へ


迷宮の魔物は討伐するとダンジョンに吸収され魔石だけが残る


ハンターとしては牙や爪、貴重な部材は持って帰れないが大荷物にならない魔石が解体なしで手に入る。たまに宝箱が手に入ることも有る


「小僧

10階層まで行ったのか」

買取り窓口の親父が尋ねてくる


「判るのですか」


「儂も元ハンターだ。引退して何年買取り屋をやっていると思う。この魔石がどこで手に入るかくらい見ればすぐに判るぞ」


「それでは二つ星ハンターになるにはどうしたらいいか教えてもらえますか」


「なんだ

そんなことも知らずにハンターになったのか

いいか

一つ星は成り立て新人、二つ星で一人前、三つ星で一流

それ以上は、どれほどすごい魔道具を持って使いこなせるかだな」


「ということは二つ星になる方法は」


「そんなものはない

登録して1年、生きてハンターしていれば、勝手に二つ星に成れる。簡単だろう」

親父はにやりと笑う


黒騎士さんの墓参りをしたいナナシとしては、これから半年以上も待っていられない


「特例とかないのですか」


「あるぞ

大功を上げてルーンに認められることだ」


ナナシのままなら、もう二つ星に成っていた

ナルで登録し直したから、後半年以上待たなければならない


「駄目だぁ。失敗したぁ」


ナナシはこの時点で出直しを考える


このまま東海岸まで出て、どこかの港町で船乗り募集を探す


黒騎士さんの墓参りはその後で


100年前のお墓なら半年や一年遅れたからって化けて出たりしないよな



「お疲れさまです。ホムラ枢機卿」


一回目の会議を終えたホムラ枢機卿にオロロン司祭が労いの言葉を掛ける


ホムラ卿は枢機卿の証であるルーンの銀メダルをじっと見つめながら


「私は時に枢機卿の役目を投げ出したくなる時がある

そう今のように

そんな時はこのメダルを目の前の信者に笑顔で掛けてあげたくなる」


オロロン司祭はそぉーーと静かに後ろへ下がる


オロロンの後ろに控える文官達も「私は壁、私は壁」と消え入るような呪文を繰り返す


第1回目のズース城会議は終了した


今回は各代表が自分の言いたいことを言い合っただけだ。これから1週間をかけ、各代表の随行者たちが意見を集約し妥協点を探していく事になる



その夜


夕食を済ませたホムラ卿の元に首相カーマインが尋ねてくる


「早速裏取引ですかな、首相閣下」


「まさか

僕はまだバトン伯爵とはいい関係でいたいと思っているのですよ」


()()ですか」


「今夜ホムラ卿の元を尋ねたのはゴール領の帰属の話ではなく

もう一つのお約束の話です」


「もう一つの約束

ルーンと貴国の間に何ら条約はないと心得ますが」


「もちろんです

しかし条約より重いのが法王様のお言葉と存じております

我が国はルーン教会に対して、聖具の返還についての協議を願いいたします」


カーマインは深々と頭を下げる


100年前、魔王アッカバッカに率いられた魔物達が、北限より現れターネシア大陸に進行、瞬く間に人族の地を席巻した


黄金のゴルタン


銀のシルバーニャ


青のブルート


赤い魔女レッドニア


そして黒騎士クゥ


五色の軍団長に率いられた魔物達によって瞬く間に2つの人族の国が消滅した。人族は大陸中央部ルーン教総本山を拠点に魔王軍と壮絶な戦いを続ける事2年


ついに魔王アッカバッカは勇者バーンとその仲間たちによって滅ぼされる。五色の軍団は瓦解し、軍団長たちもいずこかへと消えさる


その滅んだ国の一つが当時多くの聖具を所持していた。聖具はルーンに提供され人魔戦争における人族勝利に大いに貢献する


その後、亡国の地にゴーランド帝国が起こり、帝国は建国より一貫して聖具の正統所有者を名乗りルーンに返還を求めて来た



「法王様のお言葉は【此度(こたび)の貢献次第】とお伝えしたはず、まずは次回の会議において貴国の貢献を示されてはいかがでしょうか」


ホムラは淡々と答える



ナナシは【迷いの森】の8階層で淡々と剣の訓練をしていた


それ以上潜らないのは10階層に近づくと色々他人の目があるからだ


相変らず階層を降りていく分には魔物は現れない


『つまらんのう

全力で戦えねば訓練にならん

もし迷宮主が誘っているなら

そろそろしびれを切らして行動を起こす頃だ』


「たとえば」


『そうだな

小僧が深層に行きたくなる、行かざる得なくするだろうな』


「強引に引きずり込むなんてことは」


『それができるなら、もうとっくにやっておろう』


「確かにそうですね」


ナナシがダンジョンに潜っているのは東海岸まで行く為の旅費稼ぎだ。旅費が稼げたら黒騎士には申し訳ないがアンラクの町を離れようと思っている


ダンジョンを逆走しながら魔物を倒し入口へと戻ってきたナナシ


屋台の串肉が最近の定番だ


「おい、聞いているか

【サンシャイン】の追加メンバー募集」


先客の会話が自然とナナシの耳にも聞こえてくる


「もちろんだとも

お前は応募しないのか」


「荷持運びと斥候(せっこう)だろう

どっちも俺には無理だ」


「俺もそうだ

なんでも40階層は魔力を帯びた霧が立ち込めていて方向が判らなくなるそうだ

その上、手持ちの食料も無くなって引っ返して来たのだろう奴ら」


「そうだ、そうだ

なんでもそこには【真実の大鏡】があったって言うのだからビックリだ」


「どんな質問も真実で答えると言われている魔道具だよな

もしダンジョンの外へ持ち出せたら、とんでもないお宝だぜ」


【真実の大鏡】それを使えば自分の事が判る。真名も、どこで生まれて、家族がいるのかも、全てが判る


ナナシはこれからダンジョン深層へ向かおうと入口に振り替える


『待て!待て!早まるな

これは明らかに小僧を誘っておる

準備もなしに突っ込めば罠にかかるぞ

まずは正確な情報を集めろ

噂話では当てにできんぞ』


いつになく慎重な黒龍王といつになくイケイケなナナシ


その日は安宿に戻り、明日ハンター組合で掲示板や受付を確認する事にしたナナシ


眠ると早速黒騎士が待っていた


「やっと真面(まとも)に話が・・


「黒騎士さんは魔王城に【真実の大鏡】があるのを知っていたのですか」


「魔王城には多くの宝物が保管されていたな

特に魔王様のお気に入りは皇妃・・


「そこに【真実の大鏡】はあったのですか」


「尋ねれば何でも答えてくれる鏡は確かに魔王様の部屋にあったな

それでルーンの奴らの裏を何度も・・


「魔王城へ行きます」


「しかしあの鏡はなかなか扱いが難し・・


「魔王城へ絶対に行きます」



翌朝ナナシはハンター組合にやって来ていた


10階層のさらに奥に行くには二つ星ハンターになるか二つ星パーティに加わるか


今のナナシはパーティに加わるしか手段がない。幸いにも今はパーティに加わりやすい時期ではある


【サンシャイン】の追加メンバー募集で、既存のパーティからもメンバーが抜けている。そんなパーティは新たなメンバーを求めている

定期的に長く投稿しようと思いますので、ブックマークと☆、「いいね」で評価をしてもらえると嬉しいです

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