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03 迷宮探索 2

短編で投稿した「始まりの森 モエナの災難」の続編になります


https://ncode.syosetu.com/n4919ie/

ナナシは余りに早く10階層についてしまった為に、手持ち無沙汰にセーフティゾーンで情報収集をしていた


みんな5人から6人のパーティで階層主(かいそうあるじ)戦の順番待ちをしながらの休息を取っていた

パーティに気楽に話しかける勇気はなかなかなく、チラチラのぞき見するくらいの事しかできないナナシではあるが明らかな実力者はナナシにも良く判る


まず装備が違う


次に立ち振る舞いが違う


そして(まと)っている雰囲気が全然違う


キースやアレンの戦いを間近で見てきたナナシにはそれがよく判った


逆に彼らにもナナシの実力が判った


たった三ヶ月足らずの逃避行での黒龍王との特訓は確実にナナシの実力を上げていた


梟との戦い以来ナナシの髪はいまだに白いままだ


ターネシア大陸では珍しいがいない訳ではないし、特に魔法力の強い人族ほど髪の毛が漂白される事が多い


結局ナナシが先に進むには誰かとパーティを組むか二つ星に上がるしかない


『面倒な強引に押し入ればよかろう

誰かも迷宮の奥で我らを待っている』


「そんなことしたら聖騎士が飛んで来て、梟が現れますよ

言われたではありませんか【神威】は当分使うなと」


『神威など使わなくてもできるだろう』


「あんた見ない顔だが新人さんかい」

ナナシは屋台の親父に笑顔で話しかけられる


「このまま1階層に【転移魔法陣】で戻るなら一稼ぎしないか

なあに難しい話じゃない不要になった食料を売ってほしいだけさ

迷宮入口の倍で買い取りたい」


屋台の親父が言うには最近20階層を超えて30階層へ挑むパーティが増えていて屋台食料の需要が増加している。定期的に組合に依頼をかけて食料を運んでもらっているが、それでも足りないらしい


10階層から帰還するのは、みんな一つ星ハンターなので、なかなかここまでくる新人はいないそうだ


ナナシは、なぜ一つ星ハンターが階層主戦に挑まないのか不思議に思いながら、自分が持っている食料の半分を屋台の親父に売り、残りは残しておく


「また来た時は声をかけてくれ。余分な食料があれば喜んで購入するぞ」


親父は満足顔で屋台に戻っていった


結局ナナシは10階層から引っ返した


本来は【転移魔法陣】で地上に帰還できるがナナシはあえて逆走してみた


結果は出るわ、出るわ、ウッドゴーレムや虫の魔物など森系魔物の大バーゲンセールとなった。それらを黒龍剣でことごとく切り伏せたが、やはり迷宮の意志は下層階への招待のようだ


ダンジョンを出た時には日が西に沈みかけていた


しかし本来は3日掛かる工程をナナシは1日で走破している


常人では考えられない事である


ナナシは回収した魔石の買取りと二つ星になる方法を聞きに、その足でハンター組合に向かう



ハンター組合は夕刻にも関わらず静まり返っていた


普段なら多くのハンターが今日の報酬を求めて組合のドアを開ける時間帯だが、中に入って原因はすぐに判った


ほとんどのハンター達は床に倒れている


受付の前には四人の人族


中央には120セチ程のまだ子供男子、推定年齢10歳


その左には多分キース様より縦横共に大きいマッチョ男


もしかしたら人族じゃないかもと思えるほどの大男が大盾を持って立っている


その右前にはこれも高身長の女性剣士


中肉中背、着ている服は神官服


ルーンの町で戦った武装神官だ


そして盾持ち大男の斜め後ろに三角帽子をかぶり短い杖を持った魔法使い男


明らかに彼らは戦闘モードだが、誰も武器は抜いていない


ナナシは彼らと目を合わせる事も話しかける事もなく、まっすぐ反対側の食堂へ歩く


既にナナシの後ろには別のハンターが数人立っていて引っ返すことができなかったし、四人に後ろを見せる事はナナシには危険に思えた


前衛の二人がナナシを目で追い、後衛の魔法使いが後から入ってくるハンターを警戒する


「なんだ、なんだ。喧嘩かぁ

俺たちのビッル樽は無事だろうなぁ」


ナナシの後ろから入って来たハンター達が騒ぐ


カウンターの受付も食堂のウェイトレスも誰も答えない


二階のドアが開き、廊下から男が二人降りてくる


一階フロアを見渡した小太りの男が溜息混じりに言う


「静かになって喧嘩は終わったと思ったら、第二ラウンドですか

受付の子がおびえていますよ。ここらで終わりにしませんか」


「俺たちは今入って来たばかりだ。組合長

喧嘩とは無関係だ」

ナナシの後から入って来たハンターは、無関係とさっさと組合から出ていく


組合長と呼ばれた小太りの男は階段を下りて来て、倒れているハンターを確認する


後衛の魔法使いが杖を小さく上下に振る


「皆さん眠っているようですね

説明してもらえますか。【サンシャイン】のみなさん」


神官戦士が半歩前へ出て


「私が説明するよ

でもその前に、そこに座っている坊やは誰だい」

ナナシを目で指し示す


「夕ご飯を食べに来た、一つ星ハンターです」


ナナシは突然話しかけられ、みんなの視線を浴びて緊張気味に答える


【サンシャイン】のメンバー全員が胡散臭そうにナナシを見る


「君は喧嘩とは無関係だろう」組合長が尋ねる


「はい、僕が入って来た時には今の状態でした」


「彼がどうかしたのかね」

組合長が神官戦士に尋ねる


「まぁいいさ。一つ星ねぇ

喧嘩の原因は単純さ

私たちが【迷いの森】の40階層に到達したと報告したからさ

こいつらが我々を大ほら吹きと笑ったんだ」


その後、組合長は受付の子に質問し、パーティの転送記録を確認し、神官戦士の話通りと認定される


「今夜は階層到達の新記録が出た記念すべき日だ

飲み食いは組合のおごりだと床に寝ている連中が起きたら伝えてやれ」


組合長は【サンシャイン】のメンバーを組合長室へ呼び、もっと詳しい話を求める


それに対してメンバーは疲れているからとやんわりお断りし、明日の朝、組合に顔を出すと約束する


「そのエビの尾頭付きもう一つもらっていいですか」


ナナシはおごりとなった食堂で他のハンターが起き出す前に腹いっぱい食事を済ませるのであった



宿へ向かう【サンシャイン】のメンバー


「どう思う。あのルーキー」

盾戦士が尋ねる


「少なくとも私の【スリープ】の魔法を弾いたのは確か

一つ星が、高価な耐魔法の魔道具持っているとは思えない」

魔法使いが答える


「でもあの腰にあった剣はすごいと思うよ

募集に乗ってくるかなぁ」」

女神官が答える


「・・・・眠い」

お子様はとっても眠かった

読んでいただきありがとうございます

ブックマークと評価をしていただいた読者様ありがとうございました

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