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01 会議は踊る 1

短編で投稿した「始まりの森 モエナの災難」の続編になります

https://ncode.syosetu.com/n4919ie/


いよいよ第3章を開始する事ができました

今回の物語の中でナナシの向かうべき道が徐々に明らかになってきます

もちろんすんなりたどり着けはしないのですが・・・

あの時、ゴーランド帝国はマリーラットの港を狙っていた。

その防衛の為と称してあの盗人は兵を集めていた

その裏で帝国と手を結び、我がバレンシアの土地を奪う密議を行っていたのだ

此度(こたび)の事は天罰よ

ゴール地方をバレンシア王国へ戻せというルーン神の慶事よ

だからこそルーンも我らに手を差し伸べた


バレンシア王はぶつぶつと独り言を呟きながらズース城の廊下を歩く

その後ろを彼の弟、ズース城城主バトン伯爵が着き従う

向かっているのは第一会議室【バラの庭園】

ここでゴール騒乱の事後処理が話し合われようとしていた



マリーラットの港に一隻の軍船が入港する

マストの先にはゴーランド帝国の銀獅子旗がはためく

船上で心地よい海風を受けながら20代の若者がマリーラットの港町を眺める

彼こそゴーランドの若獅子カーマイン首相である


「バチス司祭を通してこちらの望みはルーンへ上手く伝わっているといいのですが

さてさてルーンはどう出てくるか

次期法王候補ホムラ枢機卿のお手並み拝見という所ですか」


ゴール大公国全土が人面樹の出現で大混乱に陥った時、ゴーランド帝国はいち早くマリーラットの港町に軍船を派遣、兵士500人を上陸させる

現地を守護する選帝公オークスはルーン法王ルゥイ3世の要請を受けゴーランド帝国を受け入れる

その後のゴーランドの動きは早かった

ルーンからすれば人面樹の討伐よりも大公国占領を優先させるような侵攻であり、北の主要都市マリーラットを始め大公国北部すべてを占領してしまう

ネクロマンサーマミューが起こしたゴール騒乱から三ヶ月

カーマインは事後の旧ゴール大公国領の帰属を話し合う為にズース城へ向かう



バレンシア城からズース城へ向かう道を一台の大型馬車がゆっくりと進む

馬車を囲むように10騎ほどの槍騎士が馬を進め、馬車の後方には50人ほどの武装神官が徒歩で従う

この道は平原と丘が続き、のどかな風景が続く中での進軍は、物々しさは否めない

しかしルーンの紋章を付けた馬車とすれ違う人々は道をあけルーンの印を結んで馬車を見送る

まるでその馬車に出会ったことが幸運に巡り合ったような笑顔を浮かべながら


「まさかバレンシア王自らズース城に乗り込まれるとは」


「よほどお怒りなのでしょう。ゴーランド帝国の旧ゴール大公国北部占領に」

ホムラ枢機卿から、この度の交渉に副代表として指命されたオロロン司祭が答える


「ゴーランド帝国も聖騎士長キースが現れた時は肝を潰しただろう」


「あれがなければどこまで・・・

ゴーランドは止まらなかったかもしれませんな」


「流石はダンズウェルス枢機卿、年の功という所か」


この会議が荒れないと思う者は誰もいない

誰もバレンシア大国とゴーランド帝国の戦争など考えていなし望んでもいないが、不測の事態が起こる可能性は旧ゴール大公国内で日々高まっていた

特に旧ゴール大公国首都ゴーラットではバレンシア王国への帰属に抵抗を示す民が多数いる


1週間後

全ての代表者とその随行者がズース城第一会議室【バラの庭園】に集う

バレンシア王国国王ジョージス・バレンタインと王弟バトン伯爵

ゴーランド帝国から若き首相カーマイン

そしてルーン教ホムラ枢機卿


この会議室の天井一面には白いバラの絵が描かれ、壁際の隅に赤いバラが一つだけ飾られている

ここはゴール大公国独立戦争時、バレンシア王国とゴール大公国がルーンの仲介の元、停戦交渉を行った時バレンシア側に白いバラがゴール側に赤いバラが置かれていたことから、バレンシア王が白いバラが上位であり赤いバラは下位であることを示す為に停戦後改装させた会議室である

本来バレンシアの代表は王弟バトンであるが、バレンシア王は会議冒頭バレンシアの正統性を説きゴーランドの不徳と逆臣ゴール大公の大罰を力説すると会議場を早々に去っていった

ホムラもカーマインもあきれるばかり

バトン伯爵は「ふん」と鼻息荒く胸を張る


ホムラは大きく息を吸い気分を変える

「これより旧ゴール大公国の帰属について関係各国で協議し合意を求めたいと思います」


「意義あり

我がバレンシア王国はゴール大公国を今世において承認した覚えは毛頭ない

ホムラ枢機卿に置かれては【バレンシア王国ゴール地方の帰属】と言い直していただきたい」


ホムラはもう一度大きく息を吸う




ナナシは深い森の中を、薄日を頼りに一人進んでいた


「神龍様

もうそろそろですかね」


『100年も前の黒騎士の記憶だろう

当てにはならんぞ』


森を抜けると小さな滝が現れる

ナナシは迷うことなく滝つぼに飛び込む

2メトル程の滝つぼの奥に横穴があり奥へ奥へと泳いでいく

水中のトンネルを抜けると開けた地下洞窟に出る


「黒騎士さんの言う通り旧魔王軍の脱出通路は生きていましたね」

読んでいただきありがとうございます

ブックマークと評価をしていただいた読者様ありがとうございました


このままのペースで1ヶ月に1章を書き上げ、100話5章でこの物語を完結させる予定です


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