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12 カムイの凶兆 4

短編で投稿した「始まりの森 モエナの災難」の続編になります


https://ncode.syosetu.com/n4919ie/

アレンはダンジョンの左端で赤白玉が上がるのを確認する


救援要請か新人パーティを見つけたか


そう言えばあいつ等(サンタマリア)に【言霊の手鏡】を渡していたなとアレンは思い出した


石柱の台座に腰掛け、アレンは【言霊の手鏡】に向かって話しかける


「おい、聞こえるか 【サンタマリア】

新人たちは見つかったのか」


返事がない イラ


・・返事がない イライラ


・・・・返事がない イライライラ


「アレン殿か、聞こえるか。ダンダリアンだ

今どこにいる

我々槍騎士7名は今火炎玉が上がった右壁へ移動中だ」


「聞こえます。槍騎士長

僕は今神殿にいます

勇者を含む新人パーティは無事保護し、ダンジョンを脱出させました

もう一組は現在行方不明

黒鎧の魔物についても情報なしです」


「それは朗報だ

おそらく火炎玉は【サンタマリア】がもう一組の新人パーティと合流したのだろう

アレン殿は引き続き神殿で黒鎧の魔物を警戒してくれ

【サンタマリア】と合流したら、また連絡する」


アレンはなぜ【サンタマリア】に渡した【言霊の手鏡】を槍騎士長が持っているのか不思議に思い、もう一組の新人パーティが見つかった場所が予想と大きく違うことに懸念を憶える


よくない前兆だよな



吐くな、吐くなマリア


乙女が年下男子の背中でゲロを吐くなんて


あってはならない大惨事だ


ハンター組合中の笑い者


お嫁に行けなくなるぞマリア


マリアはナナシの背に掴まりながら必死で自分と戦っていた


最早(もはや)絶頂する力もなく、ひたすら目を閉じ神殿に着くのを待っていた



ルーン教総本山【空中庭園】


【空中庭園】に留まり緊急事態に備えていた二人の枢機卿が安堵の息を吐く


アチコチ卿は勇者が無事帰還したとダンジョン出口の駐屯地から連絡を受け取り、給士にお茶のお代わりを頼む


ルーン山中腹の穴も崩落でふさがり、その後は小康状態


総本山は落ち着きを取り戻している


「ホムラ卿

ダンズウェルス卿がズース城に入り3日後にはゴーラットに着くとか、先ずは一段落ですな」


「気がかりなのはゴーランド帝国が上陸した北の中心都市マリーラットです。中々詳しい情報が上がってこない」


頭に新しい包帯を巻かれ、頬の腫れは【癒しの力】のおかげで良くなっていた


「この後、勇者はどう進むのです。やはり聖騎士ですか」


「今回救出された勇者はそうなりましょう。光の勇者は今パーティを組んで迷宮【迷いの森】を攻略すべく移動中です」


「新たな魔王軍を名乗る魔族が現れた以上、残りの勇者を探し出し一刻も早く【覚醒】を促さねばなりませんな。アチコチ卿」


アチコチ卿も大きくうなずきホムラ卿に同意する

五人の勇者の発見保護

それこそがマルル様の悲願であり、法王ルゥイ3世の切望でもある



槍騎士の到着を待ちながら、襲ってくる魔物を狩っていくサマンサ


おそらくあのママ蜘蛛は【変異種】


ルーンが管理している。こんな小さなダンジョンで【変異種】が生まれるなんて、いったい何が起こっているの


【変異種】が一匹だけとは限らない


もし別の【変異種】がこのダンジョンにいたら


サマンサの懸念は膨れるばかりである


それから3アワーほどして槍騎士がサマンサと合流する


サマンサの説明を聞いた槍騎士の何名かが氷漬けの新人パーティに【癒しの力】を試すが、牛蜘蛛の卵は活動が鈍くなるものの死滅はしない


槍騎士の中には【聖威の光】を使える者はいなかった


サマンサは謎の武装神官の事をあえてダンダリアンに説明せず、マリアが単独で聖騎士アレンの元に向かっていることにする


この時点でダンダリアンは決断する


聖騎士アレンの到着を待つ、しかし日没までに間に合わず牛蜘蛛が孵化する場合、三人を蛇尾(だび)に付す


もう太陽は西に傾いて残された時間は2アワーもなかった


ダンダリアンが【言霊の手鏡】でアレンに連絡を取ろうとした時、ダンジョン全体が小刻みに揺れ始める


思わず全員が神殿の方角を見た時、遠くの神殿が爆音とともに消し飛ぶ


サマンサはマリアの名を大声で叫ぶ



ナナシはマリアを背負い神殿の目の前まで来ていた


時間に余裕があれば、一度地上に降りて歩いて近付くのが聖騎士に対して無難なアプローチになるが今は時間がおしい


神殿の入り口に直接降りる


マリアを下ろしたら彼女はフラフラとその場に座り込んでしまう


周りに聖騎士はいないが、これはあれだな、あのパターンだなとナナシは思う


「マリアさん

お疲れのところ申し訳ありませんが、聖騎士様に呼び掛けてもらえますか

このままだといきなり戦いになりそうです」


「聖騎士さん、聖騎士さん

新人パーティが大変なのです。私たちの話を聞いて」


ナナシは黒龍剣ごと鞘を外し地面に投げる


石柱の陰からアレンが現れる


「その話を信じろと」


「僕は武装解除して聖騎士様の指示に従う

だからマリアさんの話を信じてほしい」


マリアは飛行酔いでクラクラフラフラしながらアレンに今までの出来事を説明する


話を聞き終えたアレンは、ナナシ達には無言のまま【言霊の手鏡】を取り出しダンダリアンに呼び掛ける


『小僧

黒龍剣を戻せ』


黒龍王が言い終わるより早く、黒龍剣はナナシの元へ飛び戻り、鞘は鎧となってナナシを包む


ナナシは座り込んだままで、びっくり顔のマリアを抱きかかえ飛び上がる


聖騎士アレンも黒龍剣が動いた瞬間距離を取り、聖具【破邪の双剣】を体現させる


「やっぱり騙し討ちかぁ。魔族野郎」


  ドドドォーーーーン


神殿が爆音とともに消し飛ぶ


爆風の中アレンは【破邪の双剣】を下段から上段に大きく振り上げる


アレンの前方に巨大な大竜巻が発生し神殿の瓦礫や爆風を捲き上げながらナナシに迫る


ナナシもマリアを抱えたまま片手で黒龍剣を上段から下段に大きく振り下ろす


巨大な三日月形の龍爪が縦に走り大竜巻を両断する


神殿の跡を挟んで両者が空中で向き合い、神殿の瓦礫が次々と落ちてくる


「神龍様

いったい何が起こったんです」


『先ほど空間が(ゆが)んだ

歪みの中から出てきた何者かが神殿を吹き飛ばした』


「マリアさん

やばい奴が近くにいる

あなたに何かあればサマンサさんに地獄送りにされる」


「馬鹿にしないで

私もCランクハンターよ

自分の身は自分で守るよ

ナナシ君は・・・うぉーーーゲロゲロ」


「・・・・・」


脱力したマリアを静かに地上に下すナナシ


「できる限り遠くへ

可能ならダンジョンから脱出してください」


と声をかけるがうつむいたマリアからの返事はない


アレンが左手の剣を上段に右手の剣を下段に構え、空中に戻ったナナシに迫る

【変異種】

突然変異の魔物

通常の魔物の2ランクアップの力

特殊能力を持つ


【ルーンの光】

癒しの力 疲労回復 傷や骨折、病気改善ただし万能ではない

聖威の光 癒しの力の上位版 魔物毒、呪いにも効果がある


聖威 ルーンに選ばれし者が持つ力 耐魔物効果大

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