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11 カムイの凶兆 3

短編で投稿した「始まりの森 モエナの災難」の続編になります


https://ncode.syosetu.com/n4919ie/

「丸い玉の中に人らしき影が五つあります」


「神官

あんた透視眼持ちかい

なら、こっちへ向かって来ている魔物の群れが見えるかい」


ナナシが目を凝らす

「見えません」


「役に立たないねぇ」


『鎧も龍の業も禁止じゃ

今度は剣の業のみで戦ってみよ』


「きつくないですか

凄い数ですよ」


『数は女ハンターに任せろ

大物だけを狙え

どうせ連帯など出来はせん』


「大きいの(魔法)をお願いします

その後僕が(魔物に)突っ込みます」


「判ったよ

大きいの(魔物)は任せな

後(後方)は任せていいんだね」


「判りました

大きいの(魔法)を打ったら

糸玉の守りは任せて」


やがて森の中から牛蜘蛛の大群が現れる


マリアが【大炎球】を放つ


そこは長年パーティを組むサマンサ


躊躇(ちゅうちょ)することなく【大炎球】で出来た炎の道を走り出す


出遅れたナナシが少し遅れてサマンサの後を追う


マリアは【炎壁】でこれ以上牛蜘蛛が近付けないようにすると壁の内側で糸玉の解体作業を再開する


サマンサとナナシは一直線にママ蜘蛛に走る


頭上から降ってくる牛蜘蛛はサマンサの氷鞭で叩き、後方から来る牛蜘蛛はナナシの【龍爪】が切る


期せずして三人の連帯ができていた


サマンサはちらりと後ろのナナシを見て、後方の警戒を緩める


順調に牛蜘蛛を討伐しながら前進する二人に頭上から糸槍が降り注ぐ


「上かぁ」


ナナシが糸槍をなぎ払いながら頭上に駆け上がる


木の上には巨大な蜘蛛の巣とその中心に胴体だけで5メイルは超え、足の長さも入れれば20メトルはある大蜘蛛がいた


ママ蜘蛛が糸を短く槍状にして噴き出す


ナナシは黒龍剣で糸槍を難なく捌いていく


空中を蹴ってママ蜘蛛の後ろに回り込むが、後ろ脚を大きく伸ばしナナシを牽制する


後ろ脚を避けて切り付けようとするママ蜘蛛の背中に乗っている牛蜘蛛がナナシに飛び掛かる


「なに二人だけで盛り上がっているのよ。私も一枚咬むわよ」


サマンサが氷柱を伸ばしながら現れる


氷のブロックを空中に作りそれを足場にしてママ蜘蛛に迫る


ママ蜘蛛の前足がサマンサに伸びる


怪獣大戦争のような戦いも最後はサマンサの氷剣がママ蜘蛛の頭を落として決着がつく。牛蜘蛛は森の中に逃げていく


「やるじゃないか

あんたただの武装神官じゃないね」


「とんでもないです

お姉さんがいなかったら、僕一人では倒せなかったです

ところで何か食べる物持っていませんか

乾パンとか干し肉とか干し魚でもいいです」


サマンサとナナシがマリアに合流した時

ナナシはサマンサからもらった干し芋を、涙を流しながら食べていた


「こいつは絶対魔族じゃないね」

サマンサは心の中でつぶやく


ナナシが示した糸玉の中には新人パーティのメンバーと盾神官が捕らえられていた


既に死亡している少年が二人


意識がない少女と少年が一人ずつと盾神官の三人


「生きてはいるが・・・」


「他の糸玉といっしょに燃やしてしまいましょう」


生きている三人の背中にはいくつもの水膨れができている


そしてその水膨れがプルプルと揺れる


牛蜘蛛の卵


「・・・・・」


三人には彼らを助ける手段がない


【聖威の光】があれば


しかし、ここにモエナはいない


「神殿にいる聖騎士かルーンの槍騎士だけど・・・」


聖騎士とは連絡手段がない


「火炎玉を打ち上げて、槍騎士を呼び寄せるしか方法はないわ」


「神殿に聖騎士を呼びに行く方法は

連絡さえ取れれば、彼なら空を飛んでここに来られる」


「三人にはそんな時間は残っていないわ

もって日暮れまでよ

夜になれば牛蜘蛛の卵が(かえ)

そうなったら体内から食い千切られるわ」


マリアが赤白の火炎玉を打ち上げる


玉は30メトルほど赤と白の煙を出しながら飛んで爆発した


後は槍騎士がいつ合流してくれるか、彼らの中に【聖威の光】が使える者がいる事を祈るしかない


ナナシの心に、闘技場で人面樹となった民を救う為にゴール大公の元へ走ったモエナの後ろ姿が蘇る


「サマンサさん、僕にマリアさんを貸してください

僕がマリアさんを(かか)えて神殿まで飛びます

それなら日暮れまでに十分間に合う」


「マリアが行かないと聖騎士は動かないってことかい」


サマンサが鋭くナナシに問う


要はナナシでは聖騎士を説得できない


「聖騎士に討伐されるのか」とサマンサはナナシに尋ねたのだ


「はい お願いします」

ナナシは迷うことなく答える


サマンサが新人パーティと盾神官に近づくと、その背中に両手を着ける


みるみる三人が氷におおわれて行く


これで卵が孵化(ふか)するまでの時間が少しは稼げる


「受けた依頼は【新人パーティの捜索・保護】だ

マリア行ってくれるかい」


黒鎧の魔物の発見・報告はこの際後回しだ


【サンタマリア】の二人にコン先生の祈るような顔が浮かぶ



「ぎゃぁぁーーぁーーーーー」


マリアの絶叫が空に響き渡る


ナナシはマリアを背負って空中を駆けていた


「絶対手を放さないでくださいね

魔物を避けながら走るのは難しいんです」


すでにお日様は中天を過ぎ西に傾きつつある


ナナシには聖騎士様をどう説得すれば良いか自信がない


今はひたすら急ぐしかない


早くもっと早く


ナナシは神殿に向かって中空を駆ける

読んでいただきありがとうございます

ブックマークと評価をしていただいた読者様ありがとうございました


何だか「走れメロス」のような展開になってしまいましたが、何とか最終コーナーまでやってきました。残り4話ラストスパートして書き上げます。

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