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10 カムイの凶兆 2

短編で投稿した「始まりの森 モエナの災難」の続編になります


https://ncode.syosetu.com/n4919ie/

ナナシはダンジョンの右壁で魔物相手に戦っていた


死人兵一体より強く、十体より弱い魔物たち


『剣で切るのは禁止だ

【龍翼】や【龍爪】で魔物を倒せ

【龍激】は絶対使うな

ダンジョンが壊れる』


「ルーンの人たちに見つかりませんか

神龍様」


『そう思うのなら魔物以外を攻撃するな

さっきから何本の木をなぎ倒している』


ナナシは鎧を着たままで死人兵を圧倒した速さが出せないか何度も試していた


あの双剣の騎士の速さに対抗するには・・・


『速さに速さで対抗しても【絶対力】は得られんぞ

更なる速さに圧倒されるだけだ』


「ではどうすればいいんです」


『自分で考えろと言いたい所だが今は非常事態だ

時間がない

答えは自分の得意な武力で相手を圧倒すればいいだけだ』


今少し理解できないナナシに黒龍王は話を続ける


『たとえば双剣の騎士がどんなに早く剣を振るっても黒龍の鎧の防御は破れん

ゆえに速さで上回る必要など全くないのだ

相手に届く武力さえあれば、後は打込むタイミングだけの事よ』


結局、神龍師匠の話は難しく、ナナシには今一理解できなかった



遠くで悲鳴が聞こえる。助けを求める声が森に響く


森の木々を抜けて、ナナシが声の元に駆け付けると顔以外白い糸にぐるぐる巻きにされた少女が一人、10メトル程の木の上に吊るされている


いや木の上には白い糸で巻かれた丸い玉が無数に吊るされている


ナナシは少女を怯えさせない為に鎧を鞘に戻し剣を納める


空を蹴って少女の傍に駆け上がる


「大丈夫か 何があった」


少女が白目で口をパクパクと動かす


ナナシなど目に入っていないかのように大声で助けを求めて叫ぶ


その時少女の黒髪がウネウネと動き出しナナシに飛び掛かってくる


それは髪の毛ではなかった


黒いクモの擬態(ぎたい)


クモの頭には鋭い二本の角が生えている


思わず後ずさり剣を抜こうと身構えるナナシだが、体が思うように動かない


不可視の糸がナナシを幾重にも捕らえていた


糸を伝って人族の頭ほどの大きさの黒クモが無数に集まってくる


『用心が足りんわ

この程度の罠にかかりおって』

相変らず黒龍王は呆れている


「腹が減っているのです」

ナナシは言い訳しながら軽く足で(くう)を蹴る


不可視の糸を引きちぎりながらナナシが上昇し、黒クモが地上に落ちていく


ナナシは上方から白い玉を凝視する


すると白い玉がだんだん透けて見えてくる


玉の中に入っているのはほとんどが魔物だったが、さっきの少女がいた傍にある玉には人族らしき影が見える


人族が入っていると思われる玉を地上に落とそうとした時、森の中から炎球が飛んで来て地上に落ちた黒クモを焼き払う


慌てて方向を変え、木の枝にぶら下がるナナシ


「ここ牛蜘蛛の巣だよサマンサ

ルーンがくれたダンジョン資料には載っていなかった魔物だね」

そういいながらマリアが更に炎球を放とうとする


「これ以上はお止めマリア

森が火事になったら面倒だ

それに新人パーティが糸玉に捕らえられていたら助けなきゃならない」


「サマンサ

ダンジョン中が燃えたって、()()()がいればどうとでもなるでしょ」


「そんな報酬はルーンからもらっていないよ」


サマンサは頭上の糸玉を見上げながら

「助けを求めていた少女を探すよ。マリア」


マリアが服のポケットから取り出した【折鶴】を広げ、フーと優しく息を吹き込む。すると【折鶴】は風もないのに高く舞い上がり、木々の間を飛び回る。クモ糸が【折鶴】に触れても糸はプツンと断ち切られる


「結構木の上は牛蜘蛛の糸が密集しています

あ!見つけましたよ

糸玉から頭だけ出している女の子がいます

・・・・

サマンサ

残念ながら彼女の救助は無理です

もう亡なられています」


サマンサは不機嫌な表情になり

「となると残りのパーティメンバーはこの糸玉の中ってことになるが

どうやって糸玉を地上に落とそうかねぇ」


サマンサがそう言い終わらない内に頭上から牛蜘蛛が多数落ちてくる


「あんた達はお呼びじゃないんだよ」


サマンサが左手をかざすと牛蜘蛛は一瞬で凍り付き地上に落ちて動かなくなる


サマンサは短剣を抜くと短剣の先から氷でできた鞭が伸びていく


鞭を頭上に向かって振り回すと糸玉を吊っていたクモ糸を次々に切断していく


「油断するんじゃないよ。マリア

落ちてくる糸玉にも牛蜘蛛がくっついているかもしれない」


サマンサは糸玉を落としながら移動し、一緒に落ちてくる牛蜘蛛を氷の鞭で粉砕する


その間マリアが落ちた糸玉を一つ一つナイフで解体していく


木の上からその様子を見ていたナナシ


「ルーンの人達じゃない。ハンターだ」


『なかなか手際が良いではないか

戦いになったら双剣の人族より厄介かもしれないな』


「触らぬルーンに祟りなし」と心で思い起こしたが、更にハンターまで追加されるとは思ってもいなかったナナシは、そっと気付かれないようにこの場を離れようとしていた


後方にマリアの【折鶴】が浮かんでいる事には全く気付いていない


全ての糸玉を地上に落としたサマンサがマリアの元に戻ってくる


「ママ蜘蛛が奥にいるはずだけど、どうしようかマリア」


【サンタマリア】の受けた依頼は二つ


新人パーティの捜索・保護と黒鎧の魔物の発見・報告


その為に【迷宮】最奥の神殿に向かっている


【迷宮】未確認の牛蜘蛛の討伐はオプションでさえない


マリアは糸玉の解体を続けながら


「それですけど、サマンサ

左後ろ15メイルほどの木の上に武装神官がぶら下がっています」


サマンサはマリアからの話を聞き終えるやいなや、振り向きざまに氷鞭を振るい、ナナシの掴まっている木を切り倒す


突然掴まっていた木を切り倒され落下するナナシ


「随分ルーンもつれないことしてくれるねぇ

監視をつけるなんて

そんなに私たちが信用できないってかぁ」


ナナシは楽々と地上に降り立ち、サマンサの話が理解できずポカン顔が二人を見つめる


不味い、まずい、ルーンの街で武装神官さん達に取り囲まれた時と同じパターンだ


ナナシの顔から汗が一筋流れる


お互いの緊張が徐々に高まっていく


  グゥーーーーーーー


ナナシのお腹が壮大に本日何度目かの自己主張をする


マリアが我慢できずに笑いだす


「おそらく魔族だと思ったんですが

汗かいてお腹鳴らす魔族はいないよね。サマンサ」


「何言っているんだいマリア

油断するんじゃないよ・・・ふふふ

ルーンの回し者って線は消えてないん・・・ぷぷぷぅ」


三人が一斉に森の奥へ向かって身構える

読んでいただきありがとうございます

ブックマークと評価をしていただいた読者様ありがとうございました


魔道具【折り紙】

折鶴やカエル、ねずみなどに折り、魔法力を吹き込むと自由に動かせる

主に偵察用 視界を操者と共有できるが声は聞こえない

特殊な使い方として爆弾や暗殺にも使用される


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