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08 常闇の谷 3

短編で投稿した「始まりの森 モエナの災難」の続編になります


https://ncode.syosetu.com/n4919ie/

「よかろう


ただしアレン殿には黒鎧の魔物の処理を頼みたい」


「しかし新人パーティは二つだろう

槍騎士の手が足りなくならないか」


「幸運にもコン・リンザイ師の元に3つ星ハンター【サンタマリア】が滞在していた

彼女たちにパーティ救出の緊急依頼を掛ける

アレン殿

判っていると思うが黒鎧の魔物か勇者かの選択になったら迷わず勇者を選べ

魔王軍の存在が確認された以上、勇者を失うことはできない」


アレンも立ち上りルーンの印を組む


「借りは倍にして換えさせてもらうぜ。黒鎧の魔物」


ホムラは【常闇の谷】の方角を見ながら黒鎧の魔物の事を考えていた


ルーンの大穴に落ちない魔物などルーンの歴史始まって以来存在しない


ましてルーン山中腹で意識を保てる人族なぞ、有り得ない


もし人族でも魔族でもないなら、一体何者だというのだ



ナナシは木鹿を黒龍剣でスパスパと輪切りにし、木鹿の角をこすり合わせて火をおこす。来上がったのは、なんとも不味そうな炭


『我を包丁扱いして、それか』


「すいません。神龍様」


『食事は、今は諦めよ。ただし魔石は回収しろよ

日は高いが昼間休憩しておく方が安全かもしれん

起きたら川伝いに湖を目指すぞ

食い物は川で探せ』


『安心して眠れ

近づく魔物がいれば、我が【龍尾】の餌食にしてくれる』


ナナシは木に寄りかかり、お肉の河を泳いでいる夢を見ながら深い眠りに入る


「やっと真面(まとも)に話ができる奴が現れたか」


止めてください。黒騎士さん


悪夢のお代わりを頼んだ覚えのないナナシであった



駐屯兵舎は槍騎士と武装神官で溢れていた


【空中庭園】での会議の後、1アワーも置かず聖騎士アレンが兵舎に到着する


ダンダリアンは、後1アワーは到着に掛かる


それまでに副隊長が選抜要員を選び、騎士長と共に【常闇の谷】に潜る


聖騎士アレンは【サンタマリア】のパーティメンバーと先行する


「まだ準備ができていないだと」


「当然でしょ。聖騎士さん

私たちは今朝宿屋をたたき起されて・・・

コン先生のお願いじゃなければ、ここにもいないわよ」


「ルーン総本山からの緊急依頼書は受け取っているだろう」


「もちろん 受け取ったわよ

拒否できないもの」


ハンターが三つ星以上になるには、ルーンからの緊急依頼にはすべての依頼をキャンセルしても緊急依頼を受けることが条件となる


「でも依頼を受けるのと準備ができるのは別の問題よ

こっちは聖騎士様のように何でもできる訳じゃないのよ」


【サンタマリア】のリーダーサマンサがアレンを睨む


その横で魔法使いのマリアが黙って頭をぺこぺこ上下させる


「もういい

そちらのペースで追いかけてこい」


アレンはサマンサに聖具【言霊の手鏡】を押し付ける


「使い方は判るな

新人パーティは何もなければそろそろ最終ステージにいる

ルーンの槍騎士もまっすぐ最終ステージの神殿を目指す

途中で黒鎧の魔物にあったら【言霊の手鏡】で連絡しろ

俺が駆け付けるまで死ぬなよ」


アレンは言いたい事だけ【サンタマリア】の二人に告げて、さっさと【常闇の谷】に入っていった


「すまないねぇサマンサ

面倒ごとを押し付けちゃたよ

生徒たちをよろしく頼むよ」


「コン先生

気にしないで

【常闇の谷】には一度潜ってみようと以前からマリアと話していたの

ここはルーンの直轄だから騎士見習いや使徒候補生しか入れない

今回の事はいいチャンスなのですよ

先生の生徒たちは必ず連れて帰ります」


とは言え準備もなしに【迷宮】に潜るなんて自殺行為だ


迷宮情報や回復薬の予備を求めて【サンタマリア】は準備に戻る



『龍剣を黒龍王に奪われた

アッカバッカ様から頂いた大事な剣を・・・

如何に魔王様の盟友と言えど・・・』


黒騎士の愚痴が続く


「ええ、神龍様は前魔王の盟友だったのですか」

またまた衝撃の事実発覚である


「黒龍王がという訳ではない

神龍族の長である黄龍王様とアッカバッカ様が盟約を結んだのだ」


「じゃ神龍様も元魔王軍」


「神龍共が我らの言うことなど聞くものか

盟約とは名ばかりアッカバッカ様と黄龍王様との話し合いよ」


「それよりもなんだお前の戦い方は

なぜ大地を裂かん、海を割らん」


「そんなの無理ですよ黒騎士さん

海なんて何処にもありませんでしたよ」


「言い訳は良い

貴様は龍剣を引き継ぐ者、我が後継者なり

龍剣の力を思うがままに振るえねばならん」


何を言っても話が通じないと納得するしかないナナシである


龍剣が神龍様に乗っ取られ、黒騎士さんはナナシの無意識の中に引っ越してきていた


ナナシはひたすら黒騎士のお小言を無視して安眠を貪るのであった



昼を過ぎてナナシが目覚めた時


ナナシの周囲には魔物の死骸が山積みとなっていた


『食えるものがあれば食うが良い

我のおごりじゃ』

黒龍王は自慢げにナナシに告げる


虫系の魔物ばかりなのですけど・・・


それでもナナシは自己主張するお腹に促されて魔物の死骸を掘り起こす


ウサギの魔物とネズミ・キノコ・・・なんか体液から煙出ていますけど


ナナシは無言で川を目指して歩き出す 無理、無理、無理・・



『小僧

強くなりたいか』


なりたいとは思わない


ナナシの本音である


ナナシの目的は自分が何者なのか知りたい、その為に交易船の船乗りになって世界を回る事である。今の状況を乗り越えたら、どこかの街に潜り込み船員募集に応募する


ナナシの脳裏に無表情なコティ姫の涙顔がよみがえる


死人兵と戦い、命を掛けてディラハンからシスターモエナを守ったのは・・・


「これ以上民を苦しめられない。泣かせたくない」


シスターモエナの言葉がナナシの背中を押す


「強くなりたくはありません

でも無慈悲な力に屈するのは嫌です」


『ならば自分の望む未来は自分の力で掴み取れ』


読んでいただきありがとうございます

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